人の心を一つの言葉で定義しようとすること自体が傲慢だった|LEVEL48
みかづき堂、社長室。
僕は社長の思考の核心を示す
「誇り」というキーワードを、
見つけ出した。
これこそが、彼の意思決定の
すべてを司る「黄金の言葉」だ。
僕はそう信じて疑わなかった。
そして、ヒアリングの終盤、
僕はそのキーワードを切り札に、
こう問いかけた。
「社長。このプロジェクトは、
御社の“誇り”を取り戻すための
戦いですね」
完璧な問いだ。
社長も深く頷いてくれるはずだ。
しかし。
社長は、少し、困ったような顔で、
こう言ったのだ。
「…うむ。そうなんだが。
一言で、誇り、と言ってもな…。
先代が守ってきた
味への“誇り”もあれば、
社員の生活を守る、
経営者としての“誇り”もある。
時に、その二つは
ぶつかるんだよ…」
——まずい。
僕は社長の価値観を、
あまりにも単純に捉えすぎていた。
社長の心の中には、
複数の、そして、時に矛盾する
「誇り」が存在していたんだ。
ーーー【GAME OVER】ーーー
「お客様の
“黄金の言葉”を見つけました。
でも、その言葉の意味が、
一つじゃなかったんです…」
喫茶店《アルカナ》に戻された僕に、
和田は言った。
「当たり前だ。
人間は、そんなに単純じゃない。
誰の心の中にも、
複数の“正義”が、せめぎ合っている」
その週末、僕は会社の先輩の
結婚式に出席していた。
スピーチに立った新婦の上司が、
感動的な話をしていた。
「…彼女は、
誰よりも仕事に“情熱”を燃やす、
素晴らしい部下です。
ですが、同時に、
誰よりも家族を愛する
“優しさ”を持っています」
「これから彼女は、
その二つの価値観の間で、
悩むこともあるでしょう。
だが、それこそが彼女が、
人間として豊かであることの
証明なのです」
そうなんだ。
複数の価値観を持つことは、
弱さじゃない。
豊かさなんだ。
社長の心の中にあった、
「伝統を守る誇り」と、
「社員を守る誇り」。
その葛藤こそが、
社長の人間的な魅力だったんだ。
なるほど——。
それが、あの人の苦しみの
正体だったんだな。
僕は、少しだけ笑って、
深く、うなずいた。
To Be Continued・・・
⇧⇧本日のレベルアップ ⇧⇧
▶︎洞察スキル《価値観の多様性》を理解した!
人の心は一枚岩ではない。矛盾する複数の「正義」を丸ごと受け止める。
つづきを読む ▶感動のヒアリングが思い出話で終わりそう。助けて、係長! |LEVEL49

