『ナユタ』のこと
これまで、本の紹介をするときは、文学フリマや何かのイベントの前だったりすることが多かった。それでつい、イベント関連のことや、その時の自分の近況などを取り混ぜてしまって、『ナユタ』について純粋な紹介文を書いていない、ということに気がついた。
そのため今回は、『ナユタ』単体の紹介をしたいと思う。
『ナユタ』について誰かに説明するときに、開口一番に伝えるのは、”「吉穂みらいの本を読むなら最初は『ナユタ』がいい」とサトちゃんが言っている”ということだ。
サトちゃんというのは、私の幼馴染で、中学時代からの読者であり、私の活動を支えてきてくれている力強い親友だ。我々は、『青音色』の相棒である海人さんから「アンとダイアナ」認定をいただいている。
この本の第一刷は、本づくりを始めた最初期に制作した。
まだ「ロマンサー」を愛用していたころだ。
「自作文庫本」としてかなり粗削りで、その後、第二刷を作り、それがトップ画像にも掲載した書影のものになる。こちらはWordで組版した。だいぶマシになったが、それでもまだ直したいところが満載で、情けない。もしかしたらいずれ、第三刷を作るかもしれない。なかなか、満足のいくものができない。
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さて、こちらは「アルデバランシリーズ」である。
アルデバランシリーズというのは、人々が地球から「アルデバラン」と呼ばれる惑星に移住した後の、世代をまたぐ繋がりを楽しむサーガ。
この物語は、その第五世代にあたる。
第一世代は、現在鋭意執筆中。
中学時代に書いた妄想をいじくりまわしてリライトしているため、かれこれ何年か、いや何十年か掛かっているけれども、いっこうに終わらない。本格的に「これを最終にしよう」と思っている原稿が、今執筆中のものである。
第二世代は、『花と嵐』のまりも、『ミルミル』の坂本千里、『探偵と弟と常世の実』の火野水海。
その子供世代である第三世代は、『春告鳥シリーズ』の朔、『他人のそら似』のバドル、『飛鳥』の飛鳥。
『ナユタ』の主人公ナユタは、第二世代にとってはひ孫にあたり、第三世代にとっては孫の世代だ。
『ナユタ』と上記の『春告鳥』の間には「谷川冬」という、幻の第四世代がいて、この物語は、その「冬」が娘のナユタに秘密を告白するところから始まる。
そう聞いて、歴史や大河は苦手だと怯んだ人もいると思うが、大丈夫。わからなくても読めるようになっている。
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二十歳のナユタは、自分に自信がなくてコミュ障。海辺の町で、誰にも見つからないようひっそり生きていきたいと思っていたのに、ある日パン屋の父親から聞いたひと言が、彼女を全く違う世界に連れていく。
「実の父親が病気だが、親子の名乗りが出来ないので行ってきて欲しい」
そう父に頼まれ、馴染みのないお寺を訪ねるナユタ。そこで彼女は、舞台女優をしているという、奔放で派手なクムナという女性と知り合う。彼女は「冬」の父親である朔を叔父と呼び、さらに「冬」とも因縁浅からぬ間柄だと言うので、ナユタは驚く。
彼女に出会って少しずつ変わっていくナユタ。クムナもまた、ナユタと出会って変化していく。なにもかも初めて尽くしの恋と友情に翻弄されながら、たった一人で生まれて生きているような気がしていた自分が、大きな時の流れの中を連綿と連なる命のひとつなのでは、と気づくナユタ。その後、思いもかけない出来事や人に出会うことで成長し、辛い体験をも乗り越えていくのだった——。
分厚い。522ページある。
SFのようでもあり、ファンタジーのようでもある物語。世代をまたぐ物語というので壮大なイメージを与えてしまうのだが、ライトな文体なので読みやすいはずだ。
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文庫本を作り始めたばかりの頃、『ナユタ』を手に取った方から、「この本は、何ページあるんですか。何万字くらいなんですか」とか、「フォントは何を使ってますか。何ポイントですか」と聞かれることが多かった。
本づくりそのものに魅力を感じて文庫本を作ったのだ、と思われたのだと思う。でも、私はただ自分の作品を「本」と言う形にしたかっただけで、何もわかっていなかった。相手が何を言っているのかちんぷんかんぷんで、おおいに戸惑ったことを覚えている。
三年以上経った今では、「本文522ページで、16万字程度です」「フォントはMS明朝で、Wordで10.5ポイントです」と即答できるのだが、当時はロマンサーで自動組版していたので、とりあえずCanvaでカバーを作り、入稿して印刷する、という流れに乗り、本づくりっぽいことはほとんどしていなかった。なかなかに、隔世の感がある。そのため、第二刷になっても「カバー」のみで、「表紙」はただの白茶の厚口用紙。なんとか工夫したのは「帯」のみだった。
ちなみに「帯」には、こう書いてある。
「時を越えて受け継がれる”人生を愛する”ということ——私はひとりじゃないのかもしれない」
なんだかわかったようなわからないようなキャッチコピーではあるが、「読んだら何のことかわかった」とおっしゃっていただくことが多いので、まあまあ成功だったのかもしれない。
現在も、吉穂堂の棚から、ごくたまにではあるが途切れずに売れていく。
吉穂堂で一番の売れ筋の本でもある。
