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8座目|登山ツアー同行レポート

登山ガイドとして、1泊2日の南アルプス鳳凰三山と、前夜発1泊2日の八ヶ岳赤岳〜横岳〜硫黄岳の登山ツアーに同行しました。

実は、登山ガイドでありながら、登山ツアーに参加するのは今回が初めて。実際に同行してみて、知ることができた「参加者の傾向」や「参加するメリット」「可能性があるデメリット」などを簡潔にまとめました。

登山ツアーへの参加を検討している人にとって、この記事が少しでも参考になれば幸いです。

参加者の傾向

年齢層

ガイドで参加したツアーのパーティメンバーは、50歳以上の参加者が多かったです。20代の人もひとりいましたが、メインガイドの口ぶりから、かなり稀なケースみたい。40代でも若く見られます。でも、参加する人は大半が健脚です。体力のありなしは、年齢に関係ないと感じました。

男女比

1回目は男性6人、女性7人。2回目は男性4名、女性6名。普段は女性の割合が多いそうですが、男女比はツアーによってマチマチみたい。これは当日にならないとわからないので、事前に気にしても完全に無駄足になります。特に男性は、参加者のなかで男が一人だけだったら、ラッキー! くらいの気持ちでいるほうがいいでしょう。

雰囲気

どちらのツアーも、パーティの雰囲気は良好に感じました。ひとりで参加している人が大多数を占めていたのも、そう感じた要因のひとつかもしれません。特定のメンバーで固まることなく、参加者同士、まんべんなく会話を楽しんでいる様子でした。

参加するメリット

移動手段と泊まる場所の手配を省ける

運転免許証を持っていない人、自家用車を所持していない人、運転に自信がない人にとって、移動手段を手配してくれるメリットは絶大です。集合場所に向かって、あとは手配済みの電車やタクシーやバスに乗り込むだけ。下山後にお酒で乾杯できるメリットも、個人的には魅力に感じました。

人気の山小屋に泊まれるメリットも大きいでしょう。特に最近は、最盛期に北アルプスの山小屋の予約を取ることが難しいと言われているので、宿泊が確約されている登山ツアーへの参加は価値があると思います。

なるべく安全に行動できる

歩くペース、休憩を取るタイミング、レイヤリングの調整、ルート上の注意箇所など、安全に行動するためのポイントをガイドが細かく管理や指示をしてくれるので、それが安全登山につながります。100%危険を回避できるわけではないですが、それでも右も左もわからない状態でひとりで山に登るより、はるかに安全性は高まります。

今回のガイド業をとおして、登山ツアーに参加する人は、自分の力量を過信していない人が多いように思いました。客観的に見ると、充分ひとりでも登れる体力も技量もあると感じるのですが、それでも安全のために登山ツアーに参加する。そういう安全意識の高い人のニーズの上に登山ツアーは成り立っているのかなと、今は考えています。

会話を楽しみながら山に登れる

これは人によりますが、おしゃべりが好きな人は、山行中の会話に困ることはありません。少なからず、お客さまに話かけてもらったら、ガイドは喜んで受け答えします。逆に、会話が苦手でひとりでいる時間のほうが好きな人にとっては、ツアー登山は苦痛に感じるかもしれません……。

可能性があるデメリット

歩くペースが遅くなる

パーティメンバーの足並みが揃う確証はありません。歩くスピードが速くなることはありませんが、基本、ガイドはいちばんゆっくりな人にペースを合わせるので、遅くなることは充分にありえます。なかには「この難易度のツアーに足の遅い人が参加するなんておかしい」と思う人もいるそうですが、思い通りに行かない状況に巻き込まれる可能性があることは、不特定多数が参加するツアーの特性といえるでしょう。ご自身のペースで歩きたい人は、自力かプライベートガイドで山に登ることをおすすめします。

元気なのに登頂できない

パーティメンバーのなかで体調の悪い人がいたら、山頂は目前で天気が良好だったとしても、登頂を断念する可能性があります。体調の悪い人を放置して、元気なメンバーだけで山に登ることは基本ありません。なかには添乗員といっしょに、その人だけ下山させて、ツアーを続行させる会社もあるそうですが、それは安全管理上、問題がありそう。見ず知らずのメンバーの体調に振り回されたくない人は、やはり自力で山に登るかプライベートガイドをお願いしたほうがいいでしょう。

気の合わない人と行動を共にする

かなり稀なケースだと思いますが、不特定多数が参加する以上、ありえることだと思います。ただ、そのわずかな可能性を真剣に気にしていたら、登山ツアーだけでなく、新しいコミュニティと接点をもつことは、難しくなる一方でしょう。確かめようのない未来の懸念事項に気を病むより、新しい出会いを楽しむ心持ちでいるほうが、なにごともうまくいくように思います。

こんな勘違いにご用心

参加すれば100%山に登れる

メンバーのなかにペースの上がらない人がいる、体調の悪い人がいる場合、目的の山の登れないことは充分にありえます。登山ツアーは、100%の登頂を約束するものではないと覚えておきましょう。

体力がなくても登らせてもらえる

登山ツアーに同行するガイドは、ポーター(荷物運び)ではないので、ツアーに参加しても自力で計画しても、必要な荷物を背負って自分の筋力と体力で山に登ることには変わりありません。ガイドは参加者が疲れないようにペースを管理しますが、それでも歩けなくなってしまったら、行動を継続することは不可能です。その人の荷物をガイドが背負って、下山するしかありません。

登山のノウハウを細かく教われる

たまたま自分が参加した行程に余裕がなかったからかもしれませんが、ツアー中に靴紐の結び方やザックの背負い方、荷物のパッキング方法、岩場の登り方などを細かく教える時間はありませんでした。たまたまザックの背負い方をお伝えした人は、これまで登山ツアーに参加したことがあっても「普段、道具の使い方を教わることはない」と言っていたので、ほかのツアーでも状況は同じなのだろうと思います。

同行スタッフは全員が安全管理のプロじゃない

登山ツアーに同行するスタッフは、基本、ガイドと添乗員に分かれます(なかには添乗員がつかず、ガイドが添乗員の仕事を兼務するツアーもあります)。ここで覚えておいたほうがいいのは、それぞれの役割の違いです。

ガイドのいちばんの仕事は、参加者の安全管理です。少なからず、わたしが所持している日本山岳ガイド協会が認定する登山ガイドの資格は、検定の内容から、安全管理を重視しているように感じています。そして、その能力が充分に備わっていると認められたからこそ、資格試験に合格できたと思っています。

一方、添乗員の仕事は、ツアーの円滑な進行をサポートすること。ツアーが出発するまでの参加者とのやり取りや、移動手段や泊まる場所への事前連絡など、実際の登山とは関係のない部分の業務を主に請け負っています。

登山ツアーのなかには、参加者の安全管理を添乗員に任せるケースが少なからずあるそうです。体調の悪い人を添乗員といっしょに下山させる例が、まさにそれ。なかには、ガイド並みの体力と経験と知識を持っている添乗員さんもいるでしょう。しかし、それを見分けるのは至難の業。添乗員がいっしょだから安心と思うのは、少々危ういかもしれません。

楽しく登山ツアーに参加するコツ

登りたい山があるけど、トラブルなく下山できるか不安。そんな気持ちを抱えたまま一歩を踏み出せないでいる人がいたら、登山ツアーに参加してみるといいでしょう。目標としている山に、安全に登れる確率が飛躍的に高まります。

ただし、なにも準備もトレーニングもせず、丸腰での参加はおすすめしません。登山教室や講習会といった類を除く一般的な登山ツアーに参加するときは、それが本番と考えて、前もって山に登る練習をしておきましょう。スムーズに身支度を整えられるようにして、参加するツアーの行程を歩き切る筋力と体力を普段のトレーニングで身につけておくことが理想です。「ツアー当日に基礎的なノウハウをすべて教えてもらおう」「体力が不安だけどきっと大丈夫だろう」。そのような気持ちで参加すると「思っていたのと違った」と残念な結果になる可能性が高いです。

それと、ツアー当日は、人との出会いを大切にして、なるべく多くの人と会話するといいと思います。性別も年齢も関係なく、同じ目標をもつ仲間と知り合えて行動を共にできるのは、登山ならではの魅力です。話題は山のことでも仕事のことでもいいでしょう。人との出会いは世界が広がるきっかけになります。参加者同士の出会いを大切にすることをおすすめします。

最後に

このほかにも聞いてみたいことがあったら、コメントでぜひお知らせください。なるべく答えるようにしたいと思います。


【筆者プロフィール】
山岳ライター、登山ガイドとして活動中。山にまつわるコンテンツの編集、ライティング。登山についての質問や相談、ガイドツアーの依頼を受け付けています。詳しくは公式HPをご覧ください↓
www.yoshizawa-mountain.com

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