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30%OFFの女

目が覚めると、目の前に、冴えない中年の男が映っていた。
ディスプレイにはNEWのラベル。
顎がしゃくれている、低身長の男。
私のことをジロジロ見ている。気持ち悪い。
根掘り葉掘り、つまらないことを聞いてくる。
私は愛想笑いをしながら、テキトーに相槌を打ち、テキトーな答えを返す。
シャクレはどんどん口数が少なくなり、沈黙が続く。

—ザザザザザ

目の前が急に暗くなる

目が覚めると、目の前に、さっきとは違う、冴えない中年の男が映っていた。
ディスプレイにはNEWのラベル。
筋肉質、テカった鼻先、透けたTシャツ、趣味の悪い腕時計。
さっきの男よりは少し若い。
シャクレよりは喋りが達者だけど、生理的に無理。
ハナテカのマッスル講義に閉口しつつ、私はそっと目を閉じた。

—ザザザザザ

また、目の前が暗くなった

目が覚めると、目の前に、二回りは年上であろう、初老の男が映っていた。
ディスプレイにはNEWのラベル。
綺麗に整えられたロマンスグレー、振る舞いもいたって紳士的。
でも、たまに覗かせる白い鼻毛を愛せるほど、私はまだ大人になれていない。

—ザザザザザ

これでもかと、目の前に、ろくでもない男ばかり、現れては暗転する。
ディスプレイにはNEWのラベル。
かれこれ30人は相手しただろうか。
秒で終わるときもあれば、なかなか切れないこともある。
それでもつれない態度を続ければ、自然と幕は下りる。

私は背を向けては目を閉じることを繰り返した。

わかったことがいくつかある。

ディスプレイ越しに覗き込む彼らは、私以外の女も覗きまくっているということ。
確証はない、でもそれはわかる。
そして、幕が下りるときは突然だということ。

—ザザザザザ

目が覚めると、目の前に、1人の男が映っていた。
ディスプレイのNEWのラベルは消えていた。
顔は中の上、ほどほどの清潔感、身なりから、暮らしぶりはよさそう。
私よりは少し若いだろうか。
今まで見た中では、1番まともな男だ。

暗転に飽き飽きしていた私は、いつになく、背を向けず、向き合ってみた。
他の男同様、私に興味を持っていることはわかったが、欲しがらない感じが少し新鮮だった。
私が好きなことを喋っているあいだ、ずっと笑顔で話を聞いてくれていた。
悪い気がしなかった。
気がつけば、時間はどんどん過ぎ、私ばかり喋っていた。

そろそろ時間かな、また話してもいいかなと思ったとき、
幕は急に下りた。

—ザザザザザ

目が覚めると、ディスプレイの向こう側に彼が映っていた。
NEWのラベルの女に優しく微笑みかけている。
昨日の私にしたように。
その女もまんざらではない様子。
しばらくすると、案内役のような女が現れ、何やら彼と話している。
案内役の女が頭を下げると、彼はその場から立ち去った。

そして、案内役の女は、その女のディスプレイに『SOLD』と書かれたラベルを貼った。

—ザザザザザ

目が覚めると、ディスプレイの向こう側にたくさんの女が映っていた。
女のディスプレイには、ゴールドのNEWラベル、黄色の〇〇%OFFラベル、赤色の一回り大きい半額ラベル。
NEWのラベルに群がっている男たちが見える。
過去、私を覗いていった男たちもいる、あの執事まで来ている。
あんなに品の良さそうな顔をしていたくせに。
見覚えのある顔ばかりで、私はその喧騒に背を向けた。

—ザザザザザ

目が覚めると、目の前に、ハナテカが映っていた。
案内役の女を呼んで、何やら話をしている。視線の先には黄色いラベル。
このラベルが貼られてから、私を覗き込む人が増えた。
男のレベルがワンランク下がった。

なぜ、もう一度来る?
烙印は何度こすっても消えないのに。

案内役の女が私の素振りから、ハナテカに事情を説明しているようだ。
ハナテカはあっさりと諦めて、その場を去った。

—ザザザザザ

目が覚めると、ディスプレイの向こう側に、ハナテカと女が映っていた。
私より少し高いところにいる、黄色いラベルの女。
どう見ても不釣り合いだった。
女は覚悟の笑顔で、ハナテカの話をずっと聞いている。
しばらくして、案内役の女がやって来て、ハナテカに事情を説明している。

説明を終えると、案内役の女がディスプレイに『SOLD』のラベルを貼った。

えっ、嘘でしょ。

女は一瞬、安堵の表情を浮かべた後、ハナテカを笑顔で見送った。

あんなふうには笑えない。
人それぞれだけど、私には無理。

上なんか見ない。
どこにいたって、私は私。
目の前に映った男だけ見れば十分。

—ザザザザザ

目が覚めると、ディスプレイの向こう側に、案内役の女が映っていた。
私より低いところにいる女に、赤いラベルを貼った。
突然の出来事に、驚きと戸惑いを隠せないお局様。

—ザザザザザ

目が覚めると、ディスプレイの向こう側に、お局様の場所はなくなっていた。

—ザザザザザ

目が覚めると、目の前に、冴えない中年の男が映っていた。
ディスプレイには赤いラベル。
男は愛想笑いをしながら、テキトーに相槌を打ち、テキトーな答えを返してきた。
私が次に何を話そうか困っていたら、幕は急に下りた。

—ザザザザザ

目が覚めると、ディスプレイの向こう側に、冴えない中年の男たちが映っていた。
男のディスプレイには、ゴールドのNEWラベル、黄色の〇〇%OFFラベル、赤色の一回り大きい半額ラベル。

シャクレと執事がいた。
赤いラベルがついている。
どうせ節操もなく、あちこちに顔を出しては、断られたんだろう。
あんな連中と一緒にされたくない。

どれだけ目を閉じても、ラベルはもう変わらない。
私は、強く、強く、強く、目を閉じた。

—ジジジジジ

目が覚めると、目の前に、顎がしゃくれている、低身長の男が映っていた。
ディスプレイにはNEWのラベル。
私は背を向けず、笑顔で話しかけた。

「はじめまして」
 
 
 


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