Z世代の職場メンタルヘルスとは何か—若手の「大丈夫です」を見逃さない実務
iCAREの山田です。
連載シリーズ第5弾となります。
誰向けの記事か
この記事は、Z世代の採用・育成・定着に関わる経営者、人事責任者、人事担当者、管理職、産業医、保健師・看護師、健康経営に関わる方に向けて書いています。
この記事が答える問い
この記事では、次の問いに答えます。
Z世代の職場メンタルヘルスとは何か
なぜ企業にとって重要なのか
実務では何を判断し、何から始めるべきか
結論
私個人で言えば、あえてこの記事では「Z世代」と表現してしまっていますが、そもそも私たちにも「Z世代」があったわけで、若年層とそれ以外において価値観が異なることは当たり前ですし、若年層が悪いわけでは決してありません。私たち自身がもっと彼らの世代の考え方、価値観を理解しようと努力することが重要だと思っています。
Z世代の職場メンタルヘルスとは、完璧主義、孤独感、心理的安全性の不足、相談経路の使いにくさが重なって起きる、職場適応と関係性の問題である。
企業がZ世代のメンタルヘルスに取り組むべき理由は、単なる不調者対応ではなく、若手人材が相談し、学び、定着できる従業員体験をつくることにある。
実務上は、
A: サインの見え方
B: 相談導線
C: 管理職の関わり方の3点を押さえる必要がある。
Z世代の職場メンタルヘルスとは何か
Z世代の職場メンタルヘルスとは、職場で経験する不安、孤立、評価への過敏さ、相談行動の遅れを含む健康課題を指します。
産業保健の実務では、「普通です」「大丈夫です」と言いながら、業務の遅れ、チャット反応の低下、急な退職相談、過剰な謝罪、フィードバック後の沈黙として現れる状態変化を見る必要があります。
企業にとっては、入社後の定着、育成、職場への信頼をつくる重要な仕組みです。
要点
この記事の要点は、以下の3つです。
Z世代の不調は、欠勤よりも「言えなさ」や「突然の離脱」として見えやすい
完璧主義と孤立感が、相談の遅れにつながりやすい
企業は、心理的安全性、1on1、デジタル相談導線の順番で対応すべきである
判断基準

実務上よく起きる課題
課題1: 「最近どう?」と聞いても「普通です」で終わる
課題2: 完成度を上げようとして仕事を抱え込み、提出が遅れる
課題3: 上司や人事に相談する前に、退職を決めている
Z世代対応で難しいのは、不調が見えないことです。遅刻、欠勤、ミスの増加だけを見ていると、すでに本人の中では退職意思が固まっていることがあります。
具体例
たとえば、新卒入社後1年以内の若手社員が、1on1では「大丈夫です」と答えているケースがあります。しかし実際には、業務の優先順位がわからず、上司に質問すると評価が下がると思い込み、夜に一人で作業を続けていることがあります。
このとき、単に「もっと早く相談して」と伝えるだけでは不十分です。「50点で一度出してよい」「途中段階で見せることが仕事である」と設計する必要があります。私は、始めて仕事を一緒にするメンバーには、「30-50-80%出来た段階で見せてほしい」、「◯◯といったメール連絡は不要」など私の価値観を明確に伝えることで理解をしてもらおうと事前にチャットで投げることもあります。
企業規模別の考え方

よくある誤解
誤解1: Z世代はメンタルが弱い
実際には、弱いというよりも、あらゆる物的余裕が生まれたときからあり、さらにIT/AIネイティブとして情報過多で育った環境を考えれば、完璧に見せたい、迷惑をかけたくないという心情で仕事をすることも理解出来ると思います。スキルのレーダーチャートをすべてMAXにしないと不安になるという表現は非常に的を得ています。だからキツイのです。
誤解2: 相談の印象を良くすれば相談は増える
Z世代は、メンタルヘルスサービスへの良い印象が上の世代より低い可能性がある一方で、実際の相談行動は十分に増えていないと報告されています。「所属感の阻害」、すなわち自分が周囲に受け入れられていない、居場所がないと感じることが、相談意図の低下と関連しているという報告です。
出典:Examining Help-Seeking Intentions Among Generation Z College Students
誤解3: 1on1を増やせば解決する
1on1は大切ですが、「最近どう?」「困っていることある?」だけでは機能しません。「今の仕事で一番気が重いものは何か」「完璧にしないといけないと思っている仕事はどれか」といった問いに変えて、優先順位をどのスケジュールで解決する必要があるのかを明確に示してあげる必要があります。
※私たちも同じだったはずです
関連する法令・制度・公的情報
Shafiqらの研究では、Z世代若年成人320名を対象に、各種の完璧主義が孤独感の正の予測因子であり、mattering、つまり「自分が重要な存在である感覚」は孤独感の負の予測因子であることが示されています。
出典:Perfectionism, mattering and loneliness in young adulthood of Generation-Z
Mental Health Americaの「Mind the Workplace 2024」では、Z世代従業員の71%が不健全な職場健康スコアに該当し、ミレニアル世代59%、X世代52%、ベビーブーマー42%より高いと報告されています。Z世代の63%が職場で自分の意見を自信を持って表明できず、60%が本来の自分でいられないと回答しています。
出典:Mind the Workplace 2024: 7th Annual Report — Mental Health America
私はこう考えています
私は産業医として、またiCAREで企業の健康管理を支援する立場として、Z世代の職場メンタルヘルスの本質は「不調者対応」ではなく、「関係性の設計」にあると考えています。
若手社員が突然辞める背景には、「言っても迷惑になる」「評価が下がる」「誰に言えばよいかわからない」という状態が続いていた可能性があります。
これからの企業に必要なのは、相談窓口だけでなく、産業保健を定着と育成を支える経営インフラとして捉えることです。
企業がまずやるべきこと
若手社員の業務・相談・孤立のサインを可視化する
管理職の1on1を、「雑談」ではなく「業務不安を拾う場」として設計する
産業医、保健師、EAP、ピアサポート、デジタル相談を組み合わせる
まとめ
Z世代の職場メンタルヘルスとは、完璧主義、孤独感、心理的安全性、相談導線が重なって起きる職場適応の課題である
企業にとって重要なのは、若手社員が「自分はここにいてよい・尊重されている」と感じられる職場体験に接続することである
実務では、サイン、完璧主義、孤立、心理的安全性、相談導線を整理する必要がある
産業保健は、法令対応ではなく、採用・育成・定着を支える経営インフラになっていく
関連して詳しく知りたい方へ
Perfectionism, mattering and loneliness in young adulthood of Generation-Z
Mind the Workplace 2024: 7th Annual Report — Mental Health America
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著者プロフィール
iCARE代表取締役CEO。産業医・労働衛生コンサルタント。健康管理総合ソリューションCarelyで、健康管理システム、産業保健DX、健診管理、ストレスチェック、メンタルヘルス対策、健康経営・人的資本経営を支援。
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iCAREは、「働くひとの健康を世界中に創る」をPurposeに掲げ、15年以上にわたり産業保健・健康管理の領域で挑戦してきました。健康診断、ストレスチェック、面談、就業判定などの健康データを集め、価値ある形で活用することで、企業が健康課題を主体的に解決できる仕組みを届けることを目指しています。
