650円の弁当を食べながら13兆円を動かす男の話|「ガイアの夜明け」オルカンの運用現場より
この記事を読めばわかること
オルカンの運用が「機械まかせ」ではなく、人間が手作業で動かしている理由
「下がったときにやめてしまう人」と「続けられる人」の違い
自分の積立が本当に正しいかを確かめるための3つの問い
先日、テレビの前で思わず前のめりになりました。
「ガイアの夜明け」でオルカンの運用現場が映し出されたとき、私の頭に浮かんだのは番組の映像ではなく、ある相談者の顔でした。
40代のMさんです。3年前、相談に来たときにこう言っていました。
「オルカンを積んでいるんですが、これって結局AIが自動でやってるんですよね。なんか、信用していいのかよくわからなくて」
番組を見ながら、「Mさんに見せてあげたかった」と思いました。
3人が1380億円を動かしている
村松祐介さん、42歳。三菱UFJアセットマネジメントのエグゼクティブファンドマネジャーです。
彼が統括するのは、純資産総額13兆円を超えるオルカン(eMAXIS Slim 全世界株式)です。日本を含む47カ国・地域、約2400銘柄に分散投資する、今や国民的なインデックスファンドです。
この日の村松さんのスタートは朝8時。最初の仕事は為替取引でした。13の国・地域の通貨を、総額約1351億円分調達する。それを終えたら、時差を追いながら世界の市場が閉まるタイミングで個別の外国株を売買していく。
この巨大な仕事を担うのが、わずか3人程度のチームです。
お昼になると、村松さんは近所でお弁当を買ってきました。650円。画面に映るのは、ごく普通のプラスチックケースに入った、どこにでもある昼食です。
「指数が上がったら上がる。下がったときには下がっている。世界全体の成長を享受できるよう、外しに行かない運用をしている」
13兆円を動かす男の言葉が、650円の弁当と並んで画面に映っていました。
Mさんが信用できなかった理由
話をMさんに戻します。
Mさんは毎月2万円、オルカンをNISA口座で積み立てていました。始めて8ヶ月が経ったころ、相場が一時的に下落し、評価額がマイナスになりました。
「やっぱり怖くなって、一回止めちゃったんです」
止めた理由を聞くと、こう言いました。
「何に投資しているのかよくわからないし、誰かがちゃんと管理しているのかも知らなかったから」
私はそのとき、もう少し早く「仕組み」を伝えるべきだったと思いました。
インデックスファンドは「市場全体に乗る」という設計です。誰か特定の天才が銘柄を選ぶのではなく、指数に忠実に連動させる。ただそれだけに見えて、その「ただそれだけ」を徹底するために、村松さんのようなプロが毎朝8時から為替を動かし、世界中の市場の終わりを待ちながら株を買い続けている。
Mさんが「信用できない」と感じたのは、オルカンが怪しかったからではなく、その仕組みを知らなかっただけでした。
お金の相談も、勉強と同じで、どこでつまずいているかを見つけることが先になります。Mさんのつまずきは運用の失敗ではなく、「何が起きているかわからない」という不安でした。
リーマン・ショックの年に入社した男が見てきたもの
村松さんは2007年に証券会社へ入社し、翌2008年にリーマン・ショックを経験しています。
番組の中で、彼はこう言いました。
「友人たちが流行りで資産運用を始めたが、下落でやめてしまった。本当にやってほしい資産運用はそうじゃない。下がったときに買い下がっていく。そういうメンタルを持つことが大事」
私は以前、教員をしていました。14年間、子どもたちに算数を教えていました。
算数でつまずいた子どもに「正解を教える」だけでは、次の問題は解けません。どこで止まっているかを一緒に探すことが先です。
お金の相談も、構造は同じだと思っています。Mさんに必要だったのは「オルカンは大丈夫ですよ」という言葉ではなく、「なぜ下がっても続けられるのか」という理屈でした。
村松さんの言う「メンタル」とは、気合いのことではありません。仕組みを知っているから、揺れても動じないということです。
あなたの積立は、今どんな状態ですか
ここで少し立ち止まって考えてみてください。
今、NISA口座で積み立てをしているとして、以下の3つに答えられますか。
自分が何に投資しているか、人に説明できますか
評価額がマイナスになったとき、どう判断しますか
積立を止めた場合、その分のお金はどこへ行きますか
3つ全部に即答できなくても、焦る必要はありません。ただ、この3問は「続けられる人」が自然に考えていることです。
Mさんは、相談のあとに積立を再開しました。毎月2万円、今も続けています。
「止めた8ヶ月が少し惜しかったですが、仕組みがわかったら怖くなくなりました」
8ヶ月分の積立金額は16万円です。それ以上に、「下がっても続ける」という判断力を手に入れた価値の方が、長い目で見ると大きいと私は思っています。
運用のプロが食べる650円の弁当
番組を見終えて、一つ印象に残ったことがあります。
村松さんは、13兆円を動かしながら650円のお弁当を食べていました。特別な場所でもなく、豪華な食事でもなく、ごく普通の昼休みです。
「お金の悩みや苦しみを和らげることができると思う。資産形成は人生を安心して過ごすための道具」
この言葉を言ったのが、派手な演出の中ではなく、弁当箱を前にしたランチタイムだったことが、なぜか一番説得力がありました。
道具は使う人の目的によって価値が決まります。投資も同じです。「いくら増えるか」より「何のために積むか」が先にある人の方が、相場が揺れたときに続けられる。
私が850名超の相談を受けてきた中で感じる、これが一番の共通点です。
自分の積立が「何のための道具か」を言葉にできる人は、下落のたびに迷いません。
今の積立額、一度確認してみませんか
村松さんが「下がっても買い下がる」と言える背景には、指数連動という揺るぎない設計があります。
あなたの場合はどうでしょうか。積立金額・積立期間・目標金額が、自分の家計に合っているかどうかを一度確かめてみてください。
Mさんが止めた8ヶ月は、評価額のマイナスが理由ではありませんでした。「自分がどこにいるかわからない」という感覚が理由でした。
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