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夜にひらく、肌の記憶

空音(そらね)のソラより。


わたしの心には
触れられていないはずの場所に

誰かの指が
ふれていた記憶がある。

それは、肌の温度よりも深く
まなざしの奥に
ひそやかに宿るもの。

言葉ではない。

呼吸の間に
すれちがった何か。

なにげない会話
そっとすれちがった肩
ふとした沈黙の中に

わたしはずっと
抱きしめてほしい自分
隠していたのかもしれない。

夜、身体をととのえ
白いシーツに身をしずめたとき

もう誰にも触れられないはずの記憶
ふいに
肌の奥で目を覚ます。

それは悲しみではない。
でも愛とも言いきれない。

ただ、確かに
わたしの中で
熱を持って残っているもの。

忘れたふりをしていた「渇き」
そっと手をのばすことで

魂は、少しだけやわらかくなる。

さびしさと色香のあいだ
今日もわたしは
生きている。

それで、いい。

誰にも見せないまま
ひらいていく記憶が
わたしを、わたしに戻してくれるのだから。

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