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湖に揺れる祈り

誰にも見つからないように、
小さな願いを
湖へとそっと落としました。

波紋が静かに広がり、
月の光と混ざり合って

わたしの内側にあったざわめきを
溶かしてゆきます。




この湖には、声がありません。

誰かを責める言葉も、
「こうすべきだ」と急かす声も
ひとつもないのです。

ただ、沈黙と、
水の柔らかさだけが広がっていて――

その静けさに包まれていると、
涙が勝手にこぼれました。




人は
何かを抱えて生きているものですね。

癒えきらない傷。

言えなかった「ありがとう」や「ごめんね」。

誰にも見せたことのない寂しさ。

だけど、そんな想いも
この湖は
すべて受け止めてくれるのです。




わたしは、ようやく気づきました。

癒すこととは、
忘れることでも、
強くなることでもなくて

ただ「そのままでいていいよ」と
静かに
抱きしめてもらうことなのだと。




湖面に映るわたしの姿は、
もう以前のわたしではありませんでした。

少しだけやわらかく、
少しだけ穏やかで、
少しだけ…やさしくなっていました。

だから今日もまた、
誰かのために、
静かに祈ります。

届かなくてもいい。

けれど、
誰かの心がほんのすこしだけ

あたたかくなりますようにと
願って。


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