会議の文字起こしは出ているのに、議事録にならない
会議の録画を開くと、話した内容が全部、文字になっています。
それを開いたまま、結局あとで自分で書き直しています。
道具は動いています。出力が、使える形になっていないだけです。
私は製造業で12年、100人規模の会社の代表を務めました。当時、いまのような道具はありません。
先に、その文字起こしをどう渡すかから片づけます。
文字起こしがあるのに、議事録にならないのはなぜですか
精度が足りないからではありません。文字起こしは、話した順に並んでいるからです。
会議は、話した順に決まりません。途中で決まったことが後から蒸し返され、最後は別の話をして終わる。それでも文字起こしは、全部を同じ重さで、出てきた順に並べます。決まったことも、雑談も、言い間違いも、行の長さが同じです。
だから読み返すのに、会議と同じくらいの時間がかかります。一時間の会議の文字起こしを開いて、どこに何があるかを探すところから始めるので、読み終わる頃には自分で書いたほうが速かったという結論になります。
「議事録を作って」とだけ頼むと、要約は返ってきます。ただ、要約は「短くしたもの」であって、「使える形にしたもの」ではありません。短くする過程で、何を残すかの判断が必要になりますが、その判断の基準を渡していません。だから、当たりさわりのない要約が返ってきます。
先週の会議で決まったことが、いくつ思い浮かびますか?
このまま何も変えなければ、会議の記録はどうなりますか
溜まっていきます。開かれないまま。
困るのは、容量ではありません。記録があることで、その場でメモを取らなくなることです。全部録れているという安心があるので、会議中に書き留める人が減ります。そして後から開かないので、結果として、以前より記録が残らない状態になります。
半年後に経緯を確かめたい場面が来ます。あのとき、どういう理由でこの条件にしたのか。文字起こしは残っています。開いても、一時間ぶんの話し言葉が並んでいるだけです。探すのに時間がかかると分かっているので、開く前に「たしかこうだったはず」で進めることになります。
自社ではどこが先に詰まっているか。いくつかの質問に答えると見当がつきます。
有料のツールを入れれば解決しませんか
精度は上がります。取り出す順番は変わりません。
有料のサービスを比べた記事はたくさんあります。読むと、上がるのは音声認識の精度と、要約が付いてくるかどうかです。どちらも役に立ちますが、要約が付くことと、使える議事録になることは別です。先ほどと同じで、何を残すかの基準を渡していない限り、短い文章が一つ増えるだけになります。
実際、機能を比べた記事の多くは、その機能をオンにする手順まで書いて終わっています。オンにした後、出てきた文字起こしをどうするかは、別の場所に書かれています。読者はその二つを自分でつながなければなりません。
道具を決める前に何を頼みたいのかを決める話は、中小企業のAI導入、誰に相談すればいいのかに書きました。
何を使えばいいですか。新しい道具は要りますか
新しく買うものはありません。
文字起こしは、いま使っているオンライン会議の道具に、たいてい付いています。有効にするだけで、会議のたびに勝手に出ます。誰の時間も取りません。書き留める人も要りません。
生成AIの置き場所は、文字起こしを作る側ではありません。すでに出ている文字起こしを読んで、必要なところだけ取り出す側です。
どの製品を使うかは、この段階では決まりません。会議の道具に付いている機能で出たものでも、別に取った録音でも、読ませる先は後から選べます。
録音を外に渡すときに何を見ておくかは、AIを使うと情報は本当に漏れるのかに書きました。
文字起こしを、どう渡すと議事録になりますか
そのまま渡さないところから始めます。
順番は四つです。
一つ目。何に使う議事録かを、先に言います。
渡すときに一緒に伝えるのは、会議の種類と、この議事録を何に使うかです。社内で回すのか、相手先にも送るのか。次の打ち合わせの前に読み返すのか、半年後に経緯を確かめるためのものか。
これを言わずに「議事録を作って」とだけ頼むと、全部入りの長いものが返ってきます。長いものは読み返さないので、結局また自分で書くことになります。
二つ目。一度に全部出させません。
決まったこと、持ち帰り、そこに至った経緯。この三つを順番に、分けて出してもらいます。まとめて頼むと、どれも中途半端になります。いちばん知りたい決まったことが短く、経緯ばかりが長い、という配分で返ってきます。
分けて頼むと、出てくる順番がそのまま優先順位になります。最初に出る「決まったこと」だけ見て終わりにしてよい会議も、実際には多いはずです。
三つ目。人が見るのは、名前と数字だけです。
AIが間違えるのはそこです。社名、人名、型番、金額、日付。話し言葉から拾うので、似た音に引きずられます。
逆に、全文を読み直す必要はありません。読み直すなら、最初から自分で書いたほうが速い。確かめるのは、間違えると困るところだけです。
四つ目。うまくいった出し方を、次の会議でも使います。
一度形が決まれば、次からは同じ頼み方で同じものが出ます。会議ごとに考え直す必要はありません。
配られている文面を探すより、自分の会議で一度通った形を残すほうが速いです。会議の名前も、出る人も、決めることも、会社ごとに違います。よそで作られた文面は、そこが合っていません。
この四つで変わるのは、文字起こしの精度ではありません。取り出す順番のほうです。
断っておくと、これを自分の会社で確かめたわけではありません。私が経営していた頃に、この道具はありませんでした。録音していない会議は、この形では出てきません。
この方法でも出てこないものは何ですか
三つあります。先に知っておくと、出てきた議事録の読み方を間違えません。
一つ目は、録音していない会議です。廊下で立ち話のまま決まったこと、電話で片づいた確認、朝礼で口頭のまま伝えたこと。ここは文字起こしが無いので、何も出てきません。
二つ目は、固有名詞と数字を間違えることです。社名、人名、型番、金額、日付。音が似ていると入れ替わります。しかも、間違ったまま自然な文章になるので、読んでも気づきにくいのが厄介です。だから三つ目の手順で、そこだけを見ます。
三つ目は、出てくるのが話された内容であって、決まった内容ではないことです。会議で言われていないことは出てきません。曖昧なまま終わった議題は、曖昧なまま出てきます。議事録がはっきりしないときは、AIの問題ではなく、会議で決まっていなかったということです。商談で話した内容をどう残すかは、商談の進め方に「型」はあるが、それだけでは成約は増えないに書きました。
会社で使う方へ。どの会議から始めるか、出てきた議事録のどこを見るかは資料にまとめてあります。会社で会議の記録を残す方はこちら。
ひとりで仕事をしている方は、相手との打ち合わせが中心になるので、録音の断り方から変わります。ひとりで仕事をしている方はこちら。
結局、何をAIに任せて、何を人が決めるのですか
AIに任せるのは、文字起こしの読み取りと、決まったことと持ち帰りを分けて取り出すところまでです。何に使う議事録かを決めるのは人です。
任せられるのは、一時間ぶんの話し言葉を通しで読み、必要な項目だけを書類の形に並べ直す作業です。ここは人がやると、読むだけで会議と同じ時間がかかります。
人が決めるのは、この議事録を誰が何に使うか、どこを確かめるか、出てきたものが会議の実態と合っているかです。合っているかどうかは、その場にいた人にしか分かりません。
大変なのは、会議で決めきることのほうです。曖昧なまま終わった議題は、どんな道具を使っても曖昧なまま残ります。難しくないのは、出ている文字起こしから必要なところを取り出すことで、そこは次の会議から始められます。別のことを言っているので、矛盾はしていません。
一時間の文字起こしを開いて、閉じる。そこから始めなくて構いません。見るのは、次の会議でその文字起こしが出る設定になっているかどうかだけです。
よくある疑問
Q. 議事録用のプロンプトは、どこかにまとまっていますか
コピーして使える文面を集めた記事はあります。ただ、会議の名前も、出る人も、決めることも会社ごとに違うので、そのままでは合いません。自分の会議で一度通った形を残すほうが、探すより速くなります。
Q. 固有名詞がよく間違っています
音が似ていると入れ替わります。よく出る社名・人名・型番を先に渡しておくと減りますが、ゼロにはなりません。間違ったまま自然な文章になるので、そこだけは人が見てください。
Q. 録音していない会議はどうすればいいですか
この形では出てきません。まず一つの定例だけ、録音が残る設定にしてください。全部の会議を対象にする必要はありません。
Q. 有料のAI議事録ツールは要りますか
音声認識の精度は上がります。ただ、取り出す順番は道具では決まりません。まず手元の機能で出るもので試して、精度が足りないと分かってから選んでください。
この記事は、製造業で12年間・100人規模の会社を経営した実体験をもとに書いています。AI導入の実績を報告するものではありません。

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