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経験者だからこそ。 映画「もしも脳梗塞になったなら」

先日、ラジオの聞き逃し配信を聞いていたら、
映画監督の太田隆文さんが出演していた。

太田監督は2023年に脳梗塞を発症。
映画制作の中で、監督を含めて1人で7人分の仕事をし、長年体に負担をかけてきたことが身体を蝕んでいたらしい。

しつこい咳で苦しんで病院に行ったのに、脳梗塞の症状ではなく、喘息では?と誤診されて、その薬を処方されるが、当然ながら回復することはなく、症状は悪化するばかり。

最初の症状から数ヶ月後に病院に行ったときには、すでに両目ともに半分失明。
…………
買い物にも行けない。
家事もできない。
役所に手続きにも行けない。

病気の症状で、誰かに電話をしても言葉が出てこない。
ネットスーパーを利用したくても、文字が読めない。

これだけでも大変すぎるのだが、独身で一人暮らし、近くに頼れる家族がいないとなると、生活そのものが崩壊していく。

それなのに、この監督は若干体調が落ち着いてきた頃に、
「この経験を映画にしよう!」
と思いたつ。

「これを映画にすれば、もし、誰かが脳梗塞になった時、家族や友人が脳梗塞になった時に役立つはず」
と。

「なんでだよ、まだ心臓機能が危険な状態なのに!」
と思うけれど、
「誰かの役に立つはず」
というその気持ちの強さが成し得たことなのだろう。

そうして作られたのが、映画「もしも脳梗塞になったなら」。

実はわたしの父も2回の脳梗塞に見舞われている。
1回目の時は、医師に脳梗塞の症状と持病の症状を間違われ、危うくそのまま返されるところだった。
もしそうだったら、父の命はそれから近いうちにどうかなっていたかもしれない。
それを食い止めてくれたのは、一部始終をみていて
「うちにはもう一人、医師がいます。
その医師の診察を受けて行かれませんか?」
と声をかけてくれたベテラン看護師さんだった。

結局、父は2回目の脳梗塞の後に右半身不随にはなったが、今も元気に施設で生活できている。

父は自分の症状を事細かに言葉にすることはなく、こちらは目に見える症状しかわからなかったのだが、脳梗塞にも様々な症状があり、患者本人にとってどれほど辛いことか、この映画を見て初めて知った。

脳梗塞の症状も人それぞれなのだが、わたしの父の症状と共通していたのは、なかなか言葉が出てこないことくらいで、その他は初めて聞くものが多かった。

・ひどい咳に苦しめられる(心臓喘息)。
最初は横になると咳がひどくなり、その後身体を斜めにしてもひどくなる。
・両目ともに半分失明する。
・文字を読むことができない。
・心臓に水が溜まる
・幻覚が見える
などなど。

当たり前にできていることが一気にできなくなると、こんなにも生活が崩壊していくのか。
一人でこの病気になったら、病気そのものだけでなく、生活すること自体が日増しに難しくなることに絶望しそうだ。

監督が生きてこの映画を作っているのだから、回復することはわかっているのに、
「このままだと病気が進行する前に餓死しそう」
と真剣に思ってしまった。

半分失明しているので、買い物に行くのも大変だし、仮に行けても、目の前のパンが何パンなのかもわからない。
人混みを歩くのも、真っ直ぐに歩くこともできない。
夏の暑さの中だと、外出自体ができなくなる。

助けてくれる人もいるが、出所のわからない情報や、根拠のない情報を投げかけてきて、素直に信じた病人を困らせる人もいる。
何も考えずに思ったことを口にして、病人を苦しめる人もいる。
本人たちは悪気がないのかもしれないが、病気以外のところで苦しまなくてはいけない病人にとっては迷惑でしかない。

そんな時に、監督を一番助けてくれたのは、SNSで本当に必要な情報を教えてくれたネット友達。

実は彼らも病気を経験していたからこそ、本当に必要な情報を伝えてくれたり、心から病人を思いやる言葉を送ってくれる。

監督は病気になったことで、これまでとは働き方も変えることになる。

病気になることはもちろん良いことではないけれど、人生の大きなターニングポイントになったのは間違いない。

わたし自身、こんなに重い病気ではないけれど、実は今年は体調を崩して、仕事の仕方を変えることを決めた。

残念に思う気持ちもあるけれど、年を重ねればこういうこともいつかは考えなくてはならないこともわかっていたから、前向きに捉えたいと思っている。

今回この映画を見て、脳梗塞という病気について学ぶことができたし、万一病気になっても色々な対応方法があることも学べた。

高額療養費制度はもちろん、障害者に対する行政のサービスを受けることができ、ヘルパーさんに掃除や炊事をお願いすることもできる。
週1回、決まった時間であっても、家事をしてくれる人がいるといないでは大違いだ。
そのような申請は基本的には役所に出向いて行わなければならないが、病気療養中で寝たきりの場合は、自宅に来てもらうこともできることを、初めて知った。

「病気の治療以外でも、生活をなりたたせるためにこのような方法もあるのだ」
と思うことが多かったし、もしもの時にはこんな方法もある、と非常に心強かった。

そして、病気になっても生活の仕方や働き方を変えることで自分の人生を歩き続けることができると知り、
「大丈夫、どうにかして生きていける」
と勇気づけられた。

この映画が、多くの方に届きますように。

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櫻木 由紀 Yuki Sakuragi カフェで書き物をすることが多いので、いただいたサポートはありがたく美味しいお茶代や資料の書籍代に使わせていただきます。応援していただけると大変嬉しいです。