Fantástico(ファンタスティコ)
リスボンに来た。
カイロからアテネ経由でリスボン。合計十二時間。
アテネでは、乗り継ぎに九十分しかなかった。
早足で移動し、セキュリティチェックを先に通してもらい、何とか間に合った。
汗だくだ。
エジプトポンドをユーロに両替する。
二千五百円が千五百円になる。
さらにATMで、二万円ほど現金を引き出した。
バスでホテルまで移動。
クレジットカードで乗れる。
Fadoを聴きに行く。
調べていたレストランは潰れていた。
ぶらぶらと、レストランを探しながら歩く。
客引きの女が、
「今日はFadoもやってるよ」と言うので入った。
女は、端のテーブルで老眼鏡を掛けて金勘定をしだした。
タコのガーリック炒めを食べる。
「何でこんなに、やわらかい?」
ワインも頼む。
メニューにはGreenと書いてある。
来たワインは、赤だった。
女が、少しラメの入った黒いストールを羽織り、歌手になる。
客は、全員が海外観光客。
「どこからきた?」コールで、ひと組ごとに答え、皆が拍手。
アジア人は、僕だけだった。
孫らしき子供がウロウロしている。
手で少し制止しながら、しゃがれた声で歌い出す。
悲しげな歌ばかりだと思っていたが、
笑っていい曲もあった。
一曲終わるごとに、歌手の掛け声のあと、
Fantástico(ファンタスティコ)と、皆が叫ぶ。
お約束のようだ。
僕も合わせて、少しだけ叫ぶ。
店を出る。
坂道を歩いているうちに、
雨が本降りになってきた。
寒さで、足が攣る。
本命のFadoに向かうつもりだったが、
途中で、やめた。
他の店からも歌が聞こえる。
知らない歌の声が、
一瞬だけ日本語に聞こえた。
流しが来るスナックは、
日本にまだあるのか。

