“こっち”ってどっち?視覚障害の夫と期日前投票へ
2025年 東京都議会議員選挙の期日前投票に行ってきた。
網膜色素変性症で視野が大きく欠けているオットは、ランダムな人の動きを察知できない。だから、できるだけ空いている時間帯を狙って行くようにしている。
最寄りのショッピングモールの一角が投票所になっているので、お買い物にも便利。「まずは投票してから買い物して……」と、事前にコンセンサスを得てからおでかけした(思いつきの行動も、彼には負担らしい)。
投票所に近づくにつれ、お年寄りの姿が多くなる。平日の昼前だから当然だけど、お年寄りの行動ほど先が読めないモノはない。
歩行がゆっくりなのはもちろん、突然立ち止まったり、突然引き返してくるのは日常茶飯事。周囲を観察し、瞬時に状況判断する前頭葉の働きが鈍くなっているのだから仕方ない。
……とはいえ、視覚障害者にとってはこの動きが致命的!
オットは、歩行のリズムを乱されると固まって動けなくなる。そして不機嫌になる。
そうなるとこっちも面倒なので、状況をできるだけ細かく説明しておく。
「ここはお年寄りが多いから、ゆっくり行こうね」
「前のおじいちゃん、身体がゆらゆらしてるから、右に大回りして歩こう」
ついでに言うと、夜盲の症状もある彼にとって建物の中はほぼ闇だ。目の見える人にとっては十分な明かりでも、彼の網膜はその明かりをキャッチできない。
困ったことに、なぜか「見える」ときもある。今、この明かりだと見えるのかどうか?そんなの、私にわかるわけがない。
だから周りの動きを見ながらオットの反応を観察しつつ、補足説明を加えたり。
……なかなか疲れる。
投票所の前に到着。
「こちらへどうぞー」「入口はこちらですー」
……だから、指示代名詞はわからないっての。
私たちが会場に入ろうとしたら、「私がアテンドします」と後ろから係の男性がやってきて、オットの腕を掴もうとした。
わー! 頼むから、それ、やめてー!
慌てて「大丈夫です。私がアテンドするので!」とガード。
とにかくこの人を不機嫌にする要素から守らなきゃ、私があとで大変なんだから。
まずは、自治体から送られてきた「投票所入場整理券」を提出する。裏の氏名と生年月日欄は、私がオットの分も記入しておいた。
受付の女性がオドオドしながら、「あの、お一人ずつの確認になるのですが……」と。
別にオドオドしなくていいじゃん。そういうの、伝わるよ?
「こちらを一緒に確認してください。ご本人様で大丈夫ですか?」
だーかーらー、見えないのにどうやって確認するの!
本人確認にと、オットが障害者手帳を差し出したのに、「あ、それは結構です」って言われた。
手帳を見てくれたら本人のだってすぐ確認できるのに、なんで?
また次のテーブルに移動して、整理券のバーコードを読み取り、内容を確認。それが終わったら、やっと隣のテーブルで投票券を受け取る。
でも、そこでもやっぱり「はい、こちらが……」「ここに候補者の名前を……」と指示代名詞。
うーむ。
小学校や中学校で、障害者擬似体験とかやってくれないかなぁ。
目隠し状態で「こっちです」とか「あっち行って」とか言われてどう思うか、一度くらい体験してもいいんじゃない?
もちろん耳をふさいでみるとか、車椅子移動とかも含めて。
みんな、いつ、病気や事故で障害を負うかわからないんだからさ。
投票ブースに連れて行き、オットに鉛筆を渡すところまでやって、私は離れたブースで記入。
本来は係員が対応しなきゃいけないのだけど、自分たちもどうしていいのかわからないのだろう、誰も手を出してこなかった。
その代わり、会場の立会人たちからの視線の怖いこと、怖いこと!
不正のないようチェックするのが仕事だから当然だけど、だからってそんなに睨まないでー!
文字を書くのも遅いオットの記入が済むまで、まるで針のむしろのような居心地の悪さ。
やっと終わって、一緒に投票箱の前へ。無事、投票を終えた。
外に出ると、「投票、お疲れ様でした。こちらが投票済証です」と、小さな紙を渡された。
「こんなもん、いらんって」と思ったけれど、このチケットを提示することで、いろんな割引やらお土産があるらしい。
このショッピングモールでも、いくつかのお店が参加していて、ランチにちょっとしたデザートが付いたり、おまけがもらえたりするとのこと。
ちょうどノジマで電池を買う予定だったので、試しに投票済証を出してみたら、冷たいミネラルウォーターを2本もらえた。ここ数日猛暑なので、こういうのが一番うれしい。
冷たいお水を飲みながら、ホッとひと息。
毎度のことながら、投票よりも“たどり着くまで”がハードだ。
それでも、行かないという選択肢はない。
だって、選挙は私たちの暮らしに直結してるのだから。
💡総務省の「障害のある⽅に対する投票所での対応例について」には、ちゃんと視覚障害者への対応が書いてあるのになぁ。
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