喫茶「青い椅子」の恋愛 第3章 第3話「小夜子の写真〜ひまわり・かき氷」
小夜子は花屋の前を通って
そこに優希ちゃんがいるのに気づいた。
優希ちゃんは、ひまわりの花束を持っている。
小夜子は優希ちゃんに話しかけた。
「優希ちゃん、これ、お部屋用に?」
「いえ、マスターが買ってきてって言ってて。
一輪挿しにするみたいです」
「あのさ、花束持ってるところ
写真に撮ってもいい?」
「え?あ、どうぞ」
そう言って優希ちゃんの写真を
パチリと撮る。
カメラのファインダーを覗きながら
また小夜子の妄想が始まった。
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青い椅子に座ってスマホの優希ちゃんを眺める小夜子。
青い椅子のテーブルには
向日葵の一輪挿しが飾ってある。
「何見てるんですか?ニヤニヤして」
小夜子が振り返ると智晴が立って話しかけてきた。
「これ、優希ちゃん」
「ほんとだ」
「可愛いでしょ」
「優希ちゃんは向日葵が似合うね」
「ほんとそう」
「小夜子さんは何が似合うかな」
「え?わたし?」
「向日葵はちがうな」
「太陽を向いて咲く花はやっぱり優希ちゃんよね」
智晴は、スマホで調べながら
「これなんかどうだろう。
チューリップ。オレンジなんかいいね」
優希ちゃんが側に来て
「あ、小夜子さんはチューリップ似合いそうです」
「チューリップかあ、下を向いて咲くからかな」
「小夜子さん、花言葉見てください」
そう言って、優希ちゃんがスマホを見せる。
そこには
チューリップ(オレンジ)照れた愛、魅惑
と書かれていた。
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翌日。
坂道の一番高いところまで自転車で走って
小夜子はヘルメットを脱いだ。
暑い。
真夏の陽炎がアスファルトの上を立ち上ってくる。
ふと横を見ると「氷」の幟が見える。
ああ、かき氷か。
小夜子は吸い寄せられるように
幟の立ってる店のドアを開けた。
ところが中はクーラーが
あまり効いてない。
ええ〜。
と思ったが引き返すこともできず
中に入る。
メニューを見せてもらう。
そこには
いちご、メロン、宇治金時などに並んで
梅シロップのかき氷がある。
「あの、この梅シロップのかき氷ください」
「少々お時間いただきますが」
「大丈夫です」
待ってる間、小夜子は妄想を始める。
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喫茶「青い椅子」
智晴の向かい側の青い椅子に座りながら、
小夜子は言った。
「この間、クーラーのついてない
お店で梅シロップのかき氷食べました」
「クーラーのついてない店?」
「ムーッと暑いんです。
それでね、ふと思ったんですけど」
「はい」
「かき氷の幟ってあるでしょう」
「ああ、ありますね」
「あれ、海の波の絵の上に氷って描いてあるんです」
「ああ、そうですね」
「氷山ですね」
「え?ああ、海の上の氷だからか」
「タイタニックもかき氷にぶつかってたら
無事だったでしょうか?」
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すると、梅シロップのかき氷が運ばれてきた。
一口食べてみる。
甘酸っぱい梅の香りが鼻からスッと抜けていく。
「美味しい」
そうしてシャリシャリと食べていく。
そのうち身体が涼んできて
「クーラー効いてなくて正解」
そう呟いた後、また妄想し始めた。
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「小夜子さん。タイタニックがかき氷に
ぶつかってたら、船は沈まなかったかもしれません」
「そうですよね」
「でも、私たちはその時、タイタニックという
船があったことさへ知らなかったかもしれない」
「……」
「もちろん映画にもならない」
「それは、それで寂しいですね」
「でも、たくさんの人が救われる」
「はい」
「あなたの妄想、嫌いじゃないですよ」
「今度かき氷食べに行きませんか?」
「クーラー効いてないんでしょう」
「それがいいんですよ」
