変わろうとしていたときより、抗わなくなったとき、人は変わりはじめる
一度見つけると、そこばかり気になる
「前は、こんなじゃなかったんです……」
これは、私が主宰するメイク講座で受講生の方と話していると、ときどき聞く言葉です。
前は、もっと目が大きかった。フェイスラインもすっきりしていた。こんなところにシワもなかった。
わかるんですよね。私も50代になって、「あれ? これ、いつから?」と思うことがあります。
こういうのって不思議で、昨日突然できたわけじゃないのに、ある日突然、見つけるんですよね。そして一度見つけると、そこばっかり見る。
私もそうでした。シミを見つけたら隠したい。下がってきたら上げたい。目が小さく見えたら大きくしたい。しかも私はヘアメイクなので、やり方を知っている。知っているから、やるんです。で、また見る。それで「まだ足りないな」となる。
「そのままでいい」
以前、撮影である女優さんのメイクをしていたときのことです。肌を見ながら、「ここ、もう少しカバーしますか?」と聞いたことがありました。すると、「ううん。そこは、そのままでいい」って。「あ、いいんだ」。

本当に、それだけのやりとりです。そのときは「そうなんですね」くらいで、そのままその部分以外のメイクを続けたと思います。でも、なぜか覚えているんですよね。
たぶん当時の私は、「きれいにするなら、気になるところは整えたほうがいい」と、どこかで思っていたんだと思います。でも、その方は違った。そこにあるものを、別に悪いものとして見ていなかった。
勝てない勝負、していませんか?
あれからずいぶん経って、私も年齢を重ねました。そうしたら、なんとなく、あのときの「そのままでいい」がわかるようになってきました。

私たちって、今の顔を見ているようで、けっこう昔の顔を見ているんですよね。「前はなかった」「昔はもっと引き上がっていた」「このメイク、前は似合ってたのに」。私も何度思ったかわかりません。でも、あるとき思ったんです。そりゃ、負けるよねって。
だって、50代の自分が比べている相手は、30代とか40代の自分なんですから。しかも記憶の中の自分って、ちょっと都合がいい。今の私は毎日、細かいところまで見るのに、昔の私はなんとなく「よかった私」で残っている。これ、今の自分にはなかなか厳しい勝負です。
そう思ったら、ちょっと笑えてきました。それからです。「あ、ここ下がってきたな」と思っても、前みたいにすぐ「嫌だ」にならなくなったのは。下がってきたんだな。じゃあ、今はどうしよう。
考えてみたら、下がってきたのは事実だけど、「だからダメ」は私があとからつけたものなんですよね。シワが増えた。顔が変わった。そこに「老けた」「前のほうがよかった」を、せっせと自分で足していた。
あれ? 私、メイクだけじゃなく、こんなところにも足してたんだ。
変わろうとしていたときより、抗わなくなったときのほうが変わりはじめてない?
メイク講座の受講生を見ていても、ときどき面白い瞬間があります。最初は写真を見るたびに、「ここが嫌です」「前はこんなじゃなかった」と言っていた方が、ある日、「まあ、これも私なんですよね」って笑ったりする。「好きになりました!」じゃないんです。「これも私」そのくらい。
でも、そこから「じゃあ、この眉はどうしよう」「今の髪には、こっちのほうがいいかも」と、急に今の自分の話がはじまる。
それを見ていて、「あれ?」 と思ったんです。
「変わろう、変わろうとしていたときより、抗わなくなったときのほうが、変わりはじめてない?」って。
「受け入れる」っていうと、今の自分を好きにならなきゃいけないような気がするけど、そこまでしなくてもいいのかもしれません。
私だって、鏡で自分の顔を見て「あー、ここが……」と思うときはあります。ただ、昔の自分を毎朝連れてきて、その人と勝負するのは、もういいかなって。
「ああ、今はこうなんだ」
「これも、私」。そのくらいで見ていると、「じゃあ、今の私にはどうしようか」となる。
あのときの女優さんが言った、「そこは、そのままでいい」という言葉。
あの頃は「あ、いいんだ」で終わったけれど、今になって、ときどき思い出すんですよね。今なら、その言葉の受け取り方がちがったかもしれないなって。

私が書いた本、『なんとなくの自己流から抜け出す 今の自分に合うメイクの正解』でも、ヘアメイクとしての30年以上の活動からわかった「シャレる(年齢に抗わず自然体で、今を自分らしく輝いている)メイク」についてもお伝えしています。よかったら読んでみてくださいね。
これからのnoteでも、そんな「大人のための現実的なメイクや美容のヒント」をお届けしていきますね。
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