雰囲気はつくるものじゃなく、整えてきたものがにじみ出るもの
ヘアメイクの現場で撮影の仕事をしていると、まだ何もしていないのに、「あ、この人、素敵だな」と思うことがあります。

メイク前です。髪もまだ。現場に入ってきて、「おはようございます」と挨拶をして、椅子に座る。それだけなのに、なんかいい。
若い頃の私は、そういう人を見ると、「そりゃそうだよね。もともと素敵なんだから」と思っていました。顔立ちがきれいだから。スタイルがいいから。女優さんだから。まあ、そう思いますよね。
でも、長くこの仕事をしていると、「あれ? それだけじゃないな」と思うことが増えてきました。

普通にしているけれど「なんか素敵」
以前、撮影でご一緒した女優さんで、現場に入ってきたときから、なんとなく空気がやわらかい方がいました。
スタッフに「おはようございます。」と声をかける。椅子に座る。誰かが話していたら、その人のほうを見て聞いている。本当に、普通なんです。でも、なんか素敵。
ヘアメイクをしながら見ていて、ふと思ったんです。
この人、ひとつひとつが雑じゃないんだなって。
人への接し方もそうだし、物の扱い方もそう。話すときも、聞くときも、なんか丁寧なんです。でも「丁寧にしよう」と頑張っている感じは全然ない。
たぶん、撮影だからそうしているわけじゃないんですよね。昨日も、その前の日も、こんな感じなんだろうなって。
そのとき、「雰囲気って、今日つくろうと思ってつくれるものじゃないのかもしれない」と思いました。

雰囲気はつくるというより、出てしまうもの
素敵な人を見ると、私たちはつい、わかりやすいところに理由を探します。顔がきれいだから。服がおしゃれだから。センスがあるから。
私もそうでした。そのほうが、話が早いんですよね。
でも、人の話をどんな顔で聞いているかとか、物をどう置くかとか、誰も見ていないときにどんな表情をしているかとか。そういうところって、あまり見ません。
だから「あんな雰囲気になりたい」と思ったら、服を変えよう、髪型を変えよう、メイクを変えよう、となる。
もちろん、それもいいんです。私、ヘアメイクですから。そこは大好きです。
でも、髪もメイクもちゃんとしているのに、なんとなくしっくりこないことがある。反対に、白いTシャツ一枚なのに、なんか目で追ってしまう人もいる。
あれ、なんなんでしょうね。
30年以上、人の顔のすぐそばで仕事をしてきて、最近は、雰囲気って「つくる」というより、出ちゃうものなんじゃないかと思っています。
話し方も、人の話を聞いているときの顔も、物を置くときの手つきも。毎日やっていることだから、自分ではもう気づいていない。
顔だってそうです。考えごとをすると眉間に力が入る。何かを我慢すると口元をぎゅっと結ぶ。集中すると奥歯を噛みしめる。
「よし、この顔をしよう」。なんて誰も思っていません。でも、いつもやっている。それが少しずつ、その人のいつもの表情になっていく。
だったら、反対もあるんじゃないかなと思うんです。人の話を聞くときに自然と顔を向ける。何かを渡されたら相手を見る。物をそっと置く。
そんなことも、何度も繰り返していたら、そのうち「やっている」ことすら忘れてしまう。
あの女優さんも、きっとそうだったんでしょうね。「私は人の話をちゃんと聞いています」なんて、もちろん言わないし、「物を丁寧に扱っています」とも言わない。でも、なんとなく伝わってくる。
それを私は「雰囲気」と感じていたのかもしれません。
そう考えると、「雰囲気を変えたい」と思ったとき、何を足すかより、自分が毎日どんなことを無意識にやっているのかを見てみるのもいいかもしれないと思います。
あの日の女優さんも、特別なことは何もしていませんでした。普通に挨拶をして、普通に話して、人の話を聞いていた。本人にとっては、たぶん全部いつものこと。
でも私は、「なんか素敵だな」って思ったんですよね。
私が書いた本、『なんとなくの自己流から抜け出す 今の自分に合うメイクの正解』でも、ヘアメイクとしての30年以上の活動からわかった「シャレる(年齢に抗わず自然体で、今を自分らしく輝いている)メイク」についてもお伝えしています。よかったら読んでみてくださいね。
これからのnoteでも、そんな「大人のための現実的なメイクや美容のヒント」をお届けしていきますね。
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