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「ヘアメイクになりたい」と思った25歳の頃の自分に、今伝えたいこと



「ヘアメイクになりたい」

25歳の頃、そう思い、東京へ夜行バスで向かうために、枚方市駅のバスターミナルにいた自分のことを、ときどき思い出します。

※写真はイメージ(京阪電車HPより)



芸能界や業界で活躍するヘアメイクになりたい。

そう思っていました。でも、どうやったらなれるのかは、よくわかっていなかったんです(それまでもヘアメイクはしていましたが、大きな舞台で活躍するのは未知の世界でした)。

なのに、「なりたい」だけは妙にはっきりしていました。

というか、「なる」としか考えていなかった。

根拠なんて、何もないんですけどね。

あの頃の私に、「ヘアメイクって、どんな仕事だと思ってる?」と聞いたら、なんて答えるんだろう。

女優さんやモデルさんにメイクをして、雑誌や広告の撮影で、きれいなものをつくる。キラキラした世界。

たぶん、そんな感じだったと思います。

間違ってはいないんです。実際に、そういう仕事もたくさんしてきました。でも30年以上やってきた今、「実際どうだった?」と聞かれたら、なんて答えるかな。

華やかだよ、だけではないんですよね。

朝は早いし、荷物は重いし、ずっと立っている日もある。現場に着いたら挨拶をして、時間を見て、今日はどんな撮影なのか、誰が何をしようとしているのかを見る。撮影が押していたら、いつもと同じ時間をかけてメイクするわけにもいかない。

モデルさんが話したそうなら話すし、今日は静かだなと思ったら、こちらもそんなに話さない。女優さんが疲れていたら、撮影の合間にマッサージをすることもある。炎天下のロケでは日に焼けないように日傘をさす。雨の日は少しでも濡れないように傘を持って走る。雪の日は、体が冷えないようにコートを持って待っている。

25歳の私は、たぶんそんなことまで想像していなかったと思います。

あの頃は、「上手くやらなきゃ」「きれいにしなきゃ」「自分が何とかしなきゃ」と、そっちのほうが、ずっと大きかった。

そして、技術を覚えて、新しいことができるようになると、それだけでうれしいんです。昨日までできなかったことができるようになるから。そうすると、もっとやりたくなる。ここも直せる。もっとカバーできる。もっと目を大きくできる。もっときれいにできる。

できるんだから、やったほうがいい。たぶん、そう思っていました。でも、現場に出ると、そうじゃないことがあるんですよね。





ある撮影で、自分ではきれいに仕上げたつもりだったのに、求められていたものと違って、何度も直したことがあります。

へこみました。「私、下手なんだ」。すぐ、そっちにいく。

で、また練習する。今思うと、ちょっとおかしいんですよね。

人の顔をずっと見ている仕事なのに、若い頃の私は、自分のことばっかり見ていた。

私、できてるかな? 下手だと思われてないかな? 仕事ができないやつって思われてないかな?

できていないことは、自分がいちばんわかっているんです。でも、できているように見せたい。

あったなあ、そういう時期。

目の前にいる人がどう見えるかより、自分がどう見られているか。

いつから変わったんだろう。

よくわかりません。いろんな現場に行って、失敗して、いろんな人の仕事を見て、モデルさんや女優さんと話して、カメラマンやスタイリストと仕事をして。

気づいたら、メイクをしながら、メイクじゃないところを見るようになっていました。

メイクをする方の椅子に座ったときの感じ。話す速さ。今日はよく話すな。今日は静かだな。ちょっと疲れてるかな。

カメラマンは何を撮ろうとしているんだろう。スタイリストは何を見ているんだろう。あと何分あるんだろう。

25歳の私が聞いたら、「え、メイクは?」って言いそうです。

うん。メイクもするよ。いっぱいする。でも30年以上やってみたら、ヘアメイクになりたかった私が覚えたのは、メイク以外のことのほうが多かった。

これ、25歳の私に言っても、たぶん意味がわからないと思います。あの頃の私は、そんなことひとつも考えていない。

枚方市駅のバスターミナルにいて、ヘアメイクになって、芸能界でたくさん仕事をする。

「なれるかな」じゃないんですよね。「なる」

なぜか、それだけは決まっていた。今思うと、あの自信はいったいどこからきていたんでしょうね。

もし今の私が、あのときの自分の隣に座れたら、なんて言うんだろう?

「大変だよ」も違うし、「頑張って」も、なんか違う。

たぶん、「思ってるのと、けっこう違うよ」とか。

あのときの自分は、「え、どういうこと?」って、絶対に聞くと思います。

でも、そこは教えない。

だってどうせこの人、「なる」って決めてるので。




私が書いた本『なんとなくの自己流から抜け出す 今の自分に合うメイクの正解』の「おわりに」には、「ボストンバッグひとつで財布には全財産
23万円を詰め込んで、大阪・枚方市駅の夜行バス乗り場に立っていました」という一文からはじまる、ヘアメイクになりたいと上京し、メイクのノウハウや技術を磨いたときの話を書いています。よかったら、ご覧くださいね

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