メイクを教えていたつもりが自分のほうが教わっていた。「やり方」よりもっと大切なこと 〜なぜ、「オンラインのメイク講座」をはじめようと思ったのか?⑥〜
メイクができないのは
「やり方」を知らないからではなかった
「ちゃんと伝えているつもりなのに、どうしてだろう……」
私は30年以上、ヘアメイクの仕事をしてきました。。たくさんの方の顔を見てきました。
でも、オンラインのメイク講座をはじめた頃の私は、顔は見ていても、その人が自分自身をどう見ているのかまでは見えていなかったんです。
あの頃の私は、「メイクができないのは、やり方を知らないから」。本気でそう思っていたんです。
実際、講座の最初の頃は、今よりずっとメイクのテクニックが中心でした。眉の描き方、チークの入れ方、アイシャドウの選び方などなど。「これで変わるはず」。そう思っていました。

だから、とにかく教えようとしていました。もっとわかりやすく。もっと丁寧に。もっと細かく。そうすれば、きっと変われる。そんなふうに思っていました。
でも、不思議なくらい思ったように変わらない。
講座が終わったあとにはじまる1人反省会
「なんで、伝わらないんだろう……」
講座が終わるたびに、1人で録画を見返していました。講座の時間は終わっても、私の中では終わっていなかったからです。
そこから1人反省会がはじまります。資料も毎回直していました。受講生のみなさんの反応を見ながら、「あ、ここで止まるんだ」「この言葉は伝わるんだ」。そんなことを繰り返していました。
「私の伝え方が悪いんじゃないか……」。だから資料を増やしました。説明も増やしました。「もっと伝えれば、きっと変わる」。本気でそう思っていたんです。
でも、思うようにはいきませんでした。

同じ講座を受けても、大きく変わる方もいれば、なかなか動き出せない方もいる。その違いが、私にはわかりませんでした。
「あ……そういうことだったのか!」
ようやくわかったその答え
受講生が提出した自撮りの写真を何度も見返しました。受講生からいただいた感想も、何度も読み返しました。
「何が違うんだろう?」。そればかり考えていました。
そんなある日、1人の受講生が言ったんです。
「今日、鏡を見るのが嫌じゃありませんでした」
その言葉を聞いた瞬間、私は少し黙ってしまいました。
私が見ていたのは、眉のかたちやチークの位置、メイクが上手になったかどうかでした。でも、その方に起きていた変化は、そこじゃなかったんです。
鏡を見ることを避けていた人が、自分の顔を見られるようになった。それが、一番大きな変化だった。「あ……そういうことだったのか!」。あの瞬間のことは、今でも覚えています。
私はメイクを教えているつもりでした。でも、本当に届けたかったのは、メイクじゃなかったのかもしれない。
自分の顔をちゃんと見られるようになること。「どうせ私なんて……」ではなく、「ちょっとやってみようかな」と思えるようになること。そこから人は変わっていく。

このことを、あの1人の受講生が教えてくれたのです。
本当に変わるために必要なこと
「どうせ私なんて……」という言葉で思い出したことがあります。
オンラインのメイク講座をはじめるにあたって、何人かの方にモニターとして参加していただき、みなさんと1人ずつZoomでお話ししたときのことです。
画面に映った顔を見て、最初に浮かんだのは、「え? どうして、この講座に申し込まれたんだろう?」という言葉でした。
というのも。みなさん、とても素敵だったから。年齢を重ねた魅力もあるし、その人らしい雰囲気もある。だから私は、「そんなに悩むことあるのかな?」と思っていました。
ところが、お話を聞きはじめると、その印象はガラッと変わりました。
「私なんて」
「どうせ似合わないから」
「昔からメイクが苦手で」
そんな言葉が、本当にたくさん出てきたんです。画面の向こうにいるご本人は、とても素敵なのに。口から出てくるのは、自分を小さくしてしまうような言葉ばかりでした。
自分の中で、全部つながりました。

今ならわかります。足りなかったのは、メイクの知識ではありません。本当に変わるために必要だったのは、これだったんです。
・自分をちゃんと見ること。自分を知ろうとすること
・「できない理由」を探すのではなく、「どうしたらできるだろう」と考えること
そのことに気づいてから、講座は少しずつ変わっていきました。
まず、テクニックを増やすことより、自分と向き合う時間を大切にするようになりました。答えを教えることより、自分で気づける時間を増やすようになりました。自分の顔を客観的に見ること。良いところも、気になるところも、自分で見つけること。
今では講座で当たり前になっていますが、全部、受講生のみなさんが教えてくれたことです。そうやって、受講生のみなさんと一緒に、少しずつ育ってきたのが今の講座なんです。
メイクを教えていたつもりだったけれど、
じつは自分が教えてもらっていた
振り返ると、私は受講生にメイクを教えていたつもりでした。でも、本当は私のほうが教えてもらっていたのかもしれません。
人は、知識が増えたから変わるわけじゃない。自分を見つめ、自分で「やってみよう」と思えたときに、少しずつ変わりはじめる。
そして、私は講座を続けてきたというより、「人は、どうしたら自分で一歩を踏み出せるんだろう」。その答えを探し続けてきたのかもしれません。その問いは今も終わっていません。
だから講座は、今も変わり続けています。でも、1つだけ変わらないものがあります。
誰かにきれいにしてもらうことではなく、自分で鏡を見て「なんか今日の私、いいかも」。そう思える人を、1人でも増やしたい。
私は、きっとそのために、このオンラインのメイク講座を続けているんだと思います。

なぜ、プロのヘアメイクである自分の手を加えることのない「オンラインのメイク講座」をはじめたのか。noteで、はじめるきっかけから、今に至るまで、そのストーリーを集中連載で綴っていきます。
・はじめるきっかけ
・なぜ、はじめようと思ったのか?
・最初からオンラインありきだったのか?
・周囲の反対は? それに対する自分の気持ちは?
・はじめるにあたっての準備、試行錯誤、壁、トラブル等は?
・どんなふうに続けていったか?
・どんなときがたいへんか? どんなときがうれしいか?
・続けてみて今思うこと、感じること
そして、「今の自分に合うメイクが、自分でできるチカラ」を伝えているのが、私が書いた本『なんとなく自己流から抜け出す 今の自分に合うメイクの正解』です。よかったら、読んでみてくださいね
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