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最近、思考停止してませんか?

先日、X上で「登壇者本人の写真が、よく似た別人の顔に差し替わってしまっている」という投稿がバズってました。

おそらく登壇者が提出した写真を元に、イベント資料を作って、AIが元写真を入れ替えてしまったのだと思われます。

私の組織でも下記のような資料を、最近よく見かけます。

  • 明らかにAIが作ったと思われる日本語の違和感

  • ダウンロード資料のファイル名が、内部資料もしくはAIがつけた名前のまま

  • 色合いが明らかにAIが作った素材のまま

一つひとつは小さなことです。中身はちゃんとしている。
でも、受け手はまず中身の前に「雑さ」を見ます。

新規のユーザーやお客様は、こちらへの信頼残高がゼロの状態です。
少しでも気になるところがあれば、中身がどれだけ良くても離脱に繋がります。

よく「恋愛と同じ」と表現されることがあると思いますが、初対面でどれだけ性格が良くても、着ている服がボロボロだったら、その時点でフラれます。

そしてこの「小さな綻び」がAIの進化によって増えていると思います。

「AI製だと悟られた」時点で、相手は冷める

誤解のないように先に書いておくと、私はAIを使うこと自体は完全に肯定派です。
むしろ使わない選択肢はない、マストだと思っています。

問題はその先です。

AIが出力したものを、読み返しもせず、相手の目でチェックもせず、ほぼそのまま先方に出す。
受け取った側が「あ、これ明らかにAIで作ったな」と感じた瞬間、何が起きるか。

冷めますよね。

「この人は、私のために時間を使っていない」
「この会社は、細部を見ていない」

そういうシグナルとして受け取られます。
セールスやマーケティングの文脈なら、その時点で新規獲得には繋がりません。
提案の中身を読んでもらう土俵にすら、上がれていないのです。

速くなったようで、生産性は下がっている

最近 slop(スロップ) という言葉が多く聞かれます。
元々は「残飯」「泥水」といった意味の言葉です。

AIを使ってスロップを量産し続けると、たしかに手数は速くなったように見えます。資料が10分でできる。メールが一瞬で書ける。

でも、冷静に考えてみてください。

  • 相手に刺さらず、読まれない資料

  • 信頼を毀損して、失われた商談

  • 結局作り直しになる手戻り

これらを含めてトータルで見たとき、本当に速くなっているでしょうか。

速くなっているように見えて、むしろ生産性は下がっているのではないか——私はそう思っています。

AIの前は「当たり前」だったはず

ここで立ち止まって考えたいのです。

提出する前に読み返す。相手の目線で資料を眺めてみる。ファイル名を整える。誤字がないか確認する。

これって、AIに頼る前は当たり前にやっていたことではないでしょうか。

自分の手で書いた資料なら、自然と読み返していたはずです。
自分の言葉で書いたメールなら、送信前に一呼吸置いていたはずです。

AIが「それっぽいもの」を一瞬で出してくれるようになった途端、その当たり前の工程が抜け落ちる。

つまりこれは、AIの問題ではなく、AIをきっかけに思考が停止しているという問題です。

相手に見せながら口頭でも説明するのだから、「足りないところは言葉で補足すればいいか」——そう思ったこと、ありますよね。私もありますし、実際に結構やっちゃいます。

でも、視界から入る情報は非常に重要です。
人は外部から得る情報の約80%を視覚から得ている、とも言われます。

極端な話、AIで作ったスロップを見せている時点で、80%失敗しているのです。口頭の説明が満点だったとしても。

AIは増幅器。0.5のままなら、0.5にしかならない

以前の記事で「AIはスキルの増幅器で、自分が1のままなら1にしかならない」と書きました。

AIは自分の実力を何倍にも広げてくれる一方で、掛け算の元になる「自分のスキル」が小さければ、出てくるものも決して大きくならない、という話です。

今回の話は、その裏面です。
思考停止して0.5になった自分をAIで増幅しても、出てくるのは0.5のアウトプットです。
量だけは出せるので、0.5のスロップが大量に流通する。

これが今、いろんな現場で起きていることだと思います。

AIを使いこなすために必要なのは、特別なプロンプト技術ではなく、出力を相手の目で見て、当たり前の品質チェックをかけるという、AI以前からの基本です。

明日から気をつけること

完全に自戒込めてですが、
まず、AIで作った資料を相手に送る前に、一呼吸置きましょう。

それっぽく完成したように見えても、一呼吸置いて読み返すと、ツッコミどころ満載だったりします。
アンガーマネジメントと一緒です。最低8秒、間を置きましょう。
特に忙しいときほど、これを強く意識してください。

例えば、ファイル名の修正、漏れてませんか?

AIで資料を作ったとき、よく分からないファイル名になっていること、ありますよね。
中身は注意して見るのに、ファイル名は結構見落としがちです。

でも、メールで送るにしてもSlackで送るにしても、相手が最初に目にするのは、その資料のファイル名です。

当たり前のことを、当たり前にやる

ちゃんと考えれば、わかるはずなのです。

このファイル名で相手はどう思うか。この資料を初めて見る人に伝わるか。この文章は自分の言葉になっているか。

特別なスキルは要りません。送信ボタンを押す前の、8秒の間だけです。
SNSに毎日のように流れ続ける、「AIでスピードが上がった」話に惑わされる必要はありません。

念のため線を引いておくと、すべてを丁寧に作れという話ではありません。社内の下書きやたたき台は、むしろ雑で速いほどいい。
品質を戻すべきなのは、相手の視界に入る瞬間だけです。

AIで誰もが「それっぽいもの」を出せるようになった今だからこそ、当たり前のことを当たり前にやる——この一番地味な原則が、改めて最重要になっているのではないでしょうか。


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