旅先で買った1,000円の布。「思い出を着る」が、私の小さな贅沢です
旅先で出会った一枚の布が、今も私の夏を彩っています。
マレーシア・クアラルンプールで見つけた生地から仕立てた、アオザイです。
それは、「思い出を着る」という、私だけの贅沢です。
昔、クアラルンプールのル・メリディアンに、二週間滞在したことがあります。
ホテルの前から市内の無料バスに乗り、ジャラン・トゥアンク・アブドゥル・ラーマン付近へ行きました。
ゆっくり見たかったので、主人はホテルに置いて、一人で出かけました。
そこには、たくさんの生地店が立ち並んでいました。
その頃は、洋服を作ることにも慣れてきていました。
生地を見るだけで楽しくて、ウキウキが止まりません。
一軒のお店でゆっくり見て回ったあと、ふと目に留まったものがありました。
ワゴンに山積みにされた、値引き品です。
その中に、淡いブルーに花柄が散った生地がありました。

値段は当時、1,000円~1,500円ほど。
安いのに艶があり、山積みの生地の中でも、ブルーがひときわ目を引きました。
私は普段、ブルーの服をほとんど着ません。
でも、この生地にはなぜか惹かれました。
迷わず買って帰りました。
日本に帰ってから、この生地をどう生かそうか、しばらく考えました。
せっかくなら、柄の流れをそのまま見せたい。
薄い生地なので、夏に似合う形がいい。
そう考えていたとき、ふと「アオザイ」が浮かびました。
体の線に沿うシルエット。
深いスリット。
風が通り抜けるようなデザイン。
「この生地にぴったり」
そう思い、アオザイに仕立てることにしました。

できあがった一枚は、私が作った服の中でも、特に気に入っているものになりました。
夏になると、自然に手が伸びます。
淡いブルーに重なる花柄が陽の光に映えて、心まで軽くなるようです。
そして着るたびに、クアラルンプールの街並みを思い出します。
あの生地屋さん。
ワゴンの前で、ふと足を止めた瞬間。
旅先での記憶が、次々によみがえってきます。
旅の思い出をまとって過ごす時間は、何度着ても新鮮です。
ちょっと気恥ずかしいのですが、私はこんなふうに着ています。

下に着ている白いブラウスも、ズボンも、私が作ったものです。
旅で出会ったものを、暮らしの中で生かす。
思い出をただ「記憶」の中にしまっておくのではなく、今の暮らしの中に織り込んでいく。
このアオザイは、そんな私の小さな楽しみです。
今年の夏もまた、この一枚と一緒に過ごしています。
皆さんにも、旅先で出会って、今も暮らしの中に残っているものはありますか?
