精霊の物語 | いぶきー気づいたぬくもり
ある夜。
いぶきは、
ひとりで空を見上げていました。
さみしい。
その気持ちは、
まだ言葉にならなくて。
ただ、
胸の奥が、
きゅっとなるだけでした。
そのとき——
ぽとり、と。
なにかが、
頬をつたいました。
「……なに、これ?」
それは、
はじめて流れた涙でした。
いぶきはまだ、
それが何なのか知りません。
もう一粒、
ぽとり、と落ちたとき。
ふわりと、
やさしい風が吹きました。
そして——
そっと、
ぬくもりが触れました。
頭に、
やわらかなぬくもりが
降りました。
それは、触れているのに、
触れられていないような、
ふしぎな感覚でした。
いぶきの前に、
ひとつの存在がありました。
あたたかくて、
やさしくて、
どこか、なつかしい。
その存在は——
「わたしは、宇宙そのもの」
「コスミア」
「ずっと、ここにいたよ」
その声は、
さみしさを包むように、
静かに響きました。
いぶきは、
なにも言えません。
でも——
胸の奥にあった
冷たさが、
ほんの少しだけ、
やわらかく溶けていきました。
だれかに、
気づいてもらえること。
そばにいてもらえること。
それは、
こんなにも
あたたかいものだったのです。
いぶきは、
そっと目を閉じます。
頭に残る、
そのぬくもりを感じながら。
そして——
はじめて、
“ひとりじゃない”
という気持ちを知りました。
いぶきの成長は——
まだ、
はじまったばかりでした。
精霊の物語は、つづきます
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