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精霊の物語|いぶき— みえない やさしさ


見えないやさしさと、
いきることのはじまりの物語。

まだ、とても静かな世界で、
ひとつの存在が息づいていました。


むかしむかし、

まだ、だれも
「いきる」ということを
しらなかったころ。

そこには、

ひとつの精霊がいました。

なまえは、いぶき。


いぶきは、
すがたをもたず、

こえもなく、

ただ、そこに
“ある”だけの存在でした。


とても静かで、

とても小さな、

けれど――

たしかに、そこにあるもの。

いぶきが、そっと通ると、

なにもなかった世界に、

かすかな変化が生まれました。


風が、ふわりと動き、

水が、ゆらりと揺れて、

小さな光が、
ぽっと灯る。

その光は、

すぐに消えてしまいそうで、

でも、

消えずに、そこにありました。


やがてそれは、

“いのち”へと変わっていきます。


花がひらき、

鳥がうたい、

人が、はじめて息をする。


そのすべてに、

いぶきは、そっと
寄り添っていました。

でも――

だれも、いぶきに
気づきません。

「ありがとう」も、

「ここにいるよ」も、

届くことはありませんでした。


それでも、いぶきは、

なにも言いません。


ただ、

今日も、

だれかの胸の奥で、

やさしく、静かに、

息を満たしていきます。


悲しいときも、

苦しいときも、

ことばにならないときも。

いぶきは、

そこにいます。

あなたが、

気づかなくても。

それでも、ずっと、

変わらずに。

――そして。

この世界は、

まだ、はじまったばかりでした。

いぶきが灯した小さな光は、

ゆっくりと、

すこしずつ、

広がっていきます。

それが、

なにを生み、

なにへと変わっていくのか――

いぶきは、まだ、

知りません。

🌿

見えないやさしさは、

いまも、どこかで
息づいています。


🌙 精霊の物語は、つづきます。


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