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精霊の物語|いぶきー気づき

いぶきは、きょとんとしました。

「……ずっと、ここにいたの?」

コスミアは、静かにうなずきます。

「うん。ずっと、ここに」

いぶきは、自分の胸に手をあてました。

知らなかった。
わからなかった。

どうして、気づかなかったんだろう。

「……」

胸の奥が、じんわりとあたたかい。

でも、それだけじゃありません。

なにかが、引っかかる。

やさしいだけじゃない、

言葉にできない違和感。

いぶきは、うつむきました。

考えれば考えるほど、

その感覚は大きくなっていきます。

「どうして……」

ぽつり、と声がこぼれました。

「どうして、わたし……」

そこまで言って、

言葉が止まります。

何を言おうとしているのか、

自分でもわかりません。

でも、確かにあります。

胸の奥で、

なにかが動いています。

コスミアは、そっと
いぶきの顔をのぞき込みました。

「いぶき」

その声は、やさしくて、

でも、どこかまっすぐで。

いぶきは、ゆっくり顔を上げました。

その表情は——

悲しそうで、

でも、静かに怒っていました。

「……なんで」

小さな声。

でも、その奥には、

はっきりとした感情がありました。

「なんで……もっと、早く……」

その言葉は、

自分でも止められませんでした。

どうして今なの?

どうして今まで、気づかなかったの?

どうして、こんなに苦しいの?

胸の奥が、

じわじわと熱くなります。

それは、

あたたかさとは
少し違うものでした。

「わたし……」

言葉にしようとした瞬間、

いぶきは、はっとします。

——この感情は。

ただの悲しみでも、

不安でもありません。

コスミアは、そっと
いぶきの手に触れました。

やわらかくて、あたたかい。

それでも——

いぶきの胸の中は、

まだ揺れたまま。

すっきりしない。

わからない。

でも、確かにあります。

この気持ちは——

いったい、なに?

いぶきは、静かに目を閉じました。

胸の奥にあるものを、

もう一度、見つめるように。

いぶきの気づきは——

まだ、はじまったばかり。

精霊の物語は、つづきます。



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