【マジックにおけるブラフのお話】カギは"ローリスクハイリターン"
皆さん、ブラフしてますか?
ポーカーでは基本テクニックの1つになっているブラフ。ハッタリや虚勢という意味で、自分の手が弱い時に強く見せて、相手の強い手をフォールド(降り)させる技術です。
このブラフという技術、マジックにも存在しています。というか気づかずにに既に使っている人も多いのではないでしょうか?
たとえばリミテッドで9枚目の土地を引いてしまった時、その土地は使い物にならない場合がほとんど。セットランドしてしまうと相手にはコンバットトリックを持っていないことがバレてしまいますが、手札に持って構えていれば、相手は多少警戒してくれます。これは普段から多くのプレイヤーがよくやるブラフテクニックです。
今日は知っているとちょっと得をするかもしれない、そんなブラフに関するお話をしていきます。
■ブラフの基本のキ
マジックにおけるブラフは、その名の通り、嘘をつくことです。これは三味線や虚偽の申告をするという意味ではありません!あくまでゲーム中に相手に嘘をつくプレイをすることです。
代表的なのはブラフアタックでしょう。
4/4のクリーチャーに2/2が殴っていく、一見不利なアタック。攻撃された側の視点としては、ブロックされたらただ2/2を失う行為で、そんな理に反することをするはずがない。つまり何かを持っているに違いない。だから4/4で2/2をブロックせずにスルー。

実際には攻撃側の手札には特に状況を解決するカードはなく、ブロックされたら2/2はただ犬死するだけでした。これは、手札に何かしらのカードを持っていると嘘をついてアタックしていることになります。
読んでわかる通り、このブラフアタックは非常にリスクが高いです。相手がブロックしてくる可能性も十分にありますし、そうなってしまったらただ損なだけ。そしてこのブラフによって得られるのはたった2点のダメージです。
ブラフはあくまで虚。相手に見破られることも考慮しなければならないので、リスクとリターンが見合っているか考える必要があります。
上記の例なら、少しリスクが高すぎてリターンが低すぎるように感じますね。
しかし、リターンが高い場合は、相手がブラフを疑いつつも、正着の一手を取ってくる可能性もあります。たとえばダメージが通ったら1ドローする2/2」だった場合、相手は100%ブロックしてきますよね。

リターンが高すぎてもダメなのです。
リスクリターンだけがブラフの成功率に関わるわけでもありません。
ブラフは相手に嘘をつく行為。幻を見せる行為です。相手にとっての自分のイメージが肥大化すればするほど、ブラフは成功しやすくなります。
「相手が何か持っているに違いない」そう思わせればブラフは成功しやすくなります。高橋 優太さんが少し考えた後に2マナを立ててエンドしてきたら、絶対に打ち消し呪文を構えていると思いますよね?

高橋 優太さんの場合は実績がイメージを肥大化させますが、実際には誰にでもブラフはできます。
■ハンドリーディングとブラフは表裏一体
先日のハンドリーディングでよく登場したシチュエーションを覚えていますか?
2ターン目にジェスカイコントロールが《聖なる鋳造所》をアンタップインしてきて2マナを立ててエンド。これです。

ここでは、相手があえて2点払ってショックランドをアンタップしてきたことを読みの起点として、相手が何を持っているかについて考えました。
相手がハンドリーディングの材料にしてきた…ということは、それはブラフの余地があるのです。
たとえば先手2ターン目に打ち消しがないにも関わらずショックランドをアンタップインしてターンを返せば、相手は打ち消しを警戒することになります。ないカードを相手の脳に植え付けられるのです。

…今、有効なブラフだと思いましたか?明日から常に2ターン目のショックランドはアンタップインしようと決めましたか?だとしたらそれは誤りです。典型的なブラフの失敗例です。
自分が対戦する側に立って考えてみてください。ジェスカイコントロールの2ターン目が《聖なる鋳造所》アンタップインでエンドしてきました。これで警戒すべきカードは打ち消しだけでしょうか?
違いますよね。実際には除去の可能性もありますし、《星間航路の助言》を2マナで打つだけかもしれません。仮に相手が除去か打ち消しを持っているなら、それを全部腐らせるなんて不可能です。どの道クリーチャーは焼かれ、呪文は打ち消されます。それなら順番に突っ込んでいった方が勝機があります。

つまり、何もないのに2マナを構えて打ち消しや除去を相手に匂わせる行為は無駄に終わります。ただ2点を失うだけの可能性が非常に高い。このブラフは無意味です。
逆にどんなブラフがこの場合有効かというと、逆に《喝破》を持っているにも関わらず《聖なる鋳造所》をタップインした場合です。

相手視点では、タップインするということは2マナのインスタントが手札にあるはずがありません。それならこの次のターンに打ち消しや除去を引かれる確率も低い。相手にとって致命的な虎の子の1枚を次のターンに切る択が生まれます。
そしてそこに対して温存していた《喝破》を当てられるようになるのです。
これは実際に僕がジェスカイコントロールを使っていてイゼット講義戦であったケースでした。僕は《忍耐の記念碑》を絶対に打ち消したく、相手の2マナのアクションのカードには興味がありませんでした。《美術家の才能》を処理する《失せろ》もありましたし、クリーチャーは《ばあば》ぐらいでしたからね。なのであえてタップインし、《喝破》の臭いを消しました。

結果、相手は2ターン目《美術家の才能》から3ターン目に《忍耐の記念碑》を置いてきて、その《忍耐の記念碑》を打ち消すことに成功しました。

これは相手のハンドリーディングを逆手にとったブラフです。ブラフをかけるには、ハンドリーディングへの理解を深めることが先決なのです。
■代表的な"持っているフリ"「ブラフアタック」
先ほどは《喝破》を持っていないフリをするブラフについて説明しました。これはいわば応用で、一般的なブラフはやはり持っているフリです。
コンバットトリックを持っているフリをするブラフは、ブラフの代表例としてあがりやすいですが、実際にはそこまで有効ではありません。理由は既に説明した通り、リスクとリターンが見合っていないからです。
3/3のクリーチャーに、コンバットトリックを持っているフリをして2/2でアタック。相手はコンバットトリックを警戒して3/3を差し出さないでしょうか?
僕が防御側ならこう考えます。
「この3/3が仮にコンバットトリックで打ち取られたとしても、コンバットトリックと3/3の交換になり、しかも相手はこのターン使えるマナが1マナ減るから、あまり大きなクリーチャーは出てこない。それならむしろここでコンバットトリックを打ってほしいからブロックしよう」

おそらく大半のプレイヤーは僕と同じ考えに至るでしょう。つまりこのブラフアタックは成立しません。
どういう時にブラフアタックはできるのか?この3/3がコンバットトリックと交換されてもいいと思っているから、ブロック一択なのです。それなら3/3がもっと大事なカードで、コンバットトリックなんかと交換されたくないならどうでしょうか。
たとえば強力なレア、《エレジーの見習い》です。『久遠の終端』最強レアの1枚であるこの《エレジーの見習い》は生き残るだけで勝ってしまうとんでもないヤツ。このクリーチャーを、たかがコンバットトリックと交換は絶対にしないでしょう。

それなら2/2も3/3も殴れます。まず《エレジーの見習い》はブロックに参加することはありません。
相手が強いレアやもしくはアンコモンで、コモンのコンバットトリックでそれを突破できる状態であれば、ブラフアタックは通りやすいのです。
もちろんクリーチャー回収などを持っている場合は、どうせ回収できるからとコンバットトリックを使わせに来る可能性はあります。相手の手札やデッキ次第になるので、このシチュエーションもブラフアタックが通る保証はありません。

更に注意点としては、相手のライフがあまりない状態では、ブロックされてしまう可能性もあります。ブラフアタックを覚えると、とりあえずコンバットトリックを持っているフリをして殴り勝ちですが、相手の立場になってしっかり考えましょう。ライフ7の状態で3/3をスルーするのは勇気がいりますからね。
そしてコンバット関連のブラフで最も重要なのは、必要以上に時間をかけないことです。
相手の場に致命的な4/4のレアがいて、こちらの場には2体の3/3。相手のライフは17。もし自分が手札に+2/+2のコンバットトリックを持っていたら、戦闘前に悩むことはあるでしょうか?まず最初にノータイムで戦闘に入りませんか?
もし悩んで相手が戦闘に入った場合、「もしかしたらこれはブラフアタックで、相手は4/4で3/3を打ち取られるかビビって戦闘まで時間がかかったのでは?」と読まれる可能性があります。
ブラフアタック見破られ死は即投了レベルです!
■僕が愛用する"持っていないフリ"「全体除去のブラフ」
僕がよく使うブラフの1つが、全体除去を持っていないフリをするブラフです。
《審判の日》などの全体除去は1枚で複数枚交換が取れるカードですが、最近はクリーチャーが強すぎて、2体ほどのクリーチャーに打たなければなりません。そのため手札に強いクリーチャーを温存されがちです。

そこで僕は全体除去でなるべく美味しい思いをしたいと常日頃から思っており、そこで最も有効な手段が全体除去を持っていないフリをすることだったのです。
具体的にはどうやるのか?手法はハンドリーディングから逆算すればわかってきます。
まず全体除去を持っていないプレイヤーはどうするか?そこから考えてみれば良いのです。
パイオニアを例にあげましょう。あなたはアゾリウスコントロール。相手はラクドスミッドレンジです。後手2ターン目の《税血の収穫者》は通りました。相手は3ターン目に《墓地の侵入者》を出そうとします。

ここで《至高の評決》を持っている場合、この《墓地の侵入者》を通して返しのターンでまとめて流すのが一見良さそうです。
ですが、《喝破》で《墓地の侵入者》を打ち消してみましょう。すると相手は「《至高の評決》ががあるならわざわざ《墓地の侵入者》にカウンターは使わない!ここは攻め時だ!」と考え、次のターンに《黙示録、シェオルドレッド》を出してきます。
そこに狙いすました《至高の評決》を当てれば勝利間近というわけです。

ただ全体除去まで引っ張るだけでは相手は絶対に乗ってきません。相手に展開する理由をこちらから与えてあげれば良いのです。これが打ち消しでなくて除去でも同じことです。あえて2対1交換が取れる状況で単体除去から打っていき、相手に好機と思わせて追加で2体を展開させ、1対3交換を取りましょう。
持っていないフリは、持っているフリより効果的なブラフです。特定のカードをクリティカルな場面で撃てるように立ち回るブラフですからね。
■打ち消しを引き出させる"土地を持っていないフリ"
これはかなり昔の話で、僕自身の話ではありませんが、友人の行ったブラフです。
こちらは打ち消しが入ったデッキ。相手は緑のランプです。先手3ターン目に相手は3枚目の土地が置けませんでした。
そして次のターン、《不屈の自然》をプレイしてきました。あなたはここに《マナ漏出》を撃ちますか?

本来なら土地サーチにまず撃たないこの打ち消し呪文。土地が止まった相手には効果的に見えますよね。かなり撃ちたくなるはずです。
しかし、実際には相手は3ターン目に置ける土地を持っていました。あえて1ターン土地を置かなかったことで、本来なんでもない土地サーチに《マナ漏出》を使わせたのです。

このように、実際に土地を止めて見せることで、相手にブラフをかけることもできます。この例は少し極端ですが、青いコントロールデッキとの戦いにおいては、再序盤の遅れより、1枚の打ち消しを引き出させる方が重要なケースもあります。
これが《マナ漏出》なら後半役に立ちにくいので成果に見えにくいですが、たとえば《否認》を引き出したなら、土地を1ターンわざと止めた価値はあったと言えるでしょう。

ブラフは虚を実に見せることで成功確率が上がります。土地が欲しいという嘘のために本当に土地を止めてしまえば、相手はかなりの確率で信じてくれます。
■偽りの自分を見せるブラフ
これも実際に僕が過去やっていたブラフです。
1ゲーム目で僕は土地を引き続けていました。本来置く必要のない土地も引いた瞬間に常に置き、手札には残しませんでした。
これを見て相手は「この人は土地を手札に溜めてブラフをしない人なんだ」と認識しました。
次のゲームでも、僕は土地を引きましたが、今度は置きませんでした。時々土地を置きながら、手札には2枚ほどカードを残すようにしました。
すると相手は1ゲーム目のイメージが先行し、こちらの手札がすべてスペルだと思い込みました。さっきのゲームでは常に土地を置いていましたからね。そんなプレイヤーが手札にカードを溜めているなら、それはスペルに決まっています。

このように、嘘の自分を相手に見せておくことで、イメージを肥大化させることも可能です。
ちなみに、このブラフ方法は去年ぐらいにXで少し話題になっていましたが、僕は6~7年以上前に遊々亭でライターをやっていた時にこのブラフ方法について記事を書いており、パクりでないことだけ断っておきます。
■ブラフはやり得ではない
既に何度かブラフのリスクについて説明していますが、当然ブラフはやり得ではありません!
失敗した時のリスクが高い場合も多いですし、そもそもブラフに重きを置いたがゆえに、ミスプレイになることもあります。
最も陥りやすいのが土地を手札に持っておくブラフです。たとえばリミテッドでデッキの一番重いカードが5マナだからといって、6枚目以上の土地を置かないで手札に溜めこむなんてのは、最悪です。
もしデッキにドロースペルが入っているなら、ドローから5マナのクリーチャーに繋がるかもしれませんし、クリーチャーを出した後の2マナを相手が警戒するかもしれません。

実際、手札をいくら持っていても、「もしコンバットトリックを持っていたら使ってるよな」という戦闘は度々起こります。そこで何も発生しないと、相手はコンバットトリックを持っていないと読んできます。
ハンドリーディングによってブラフは簡単に看破されます。そのため、土地は手札に持っておくのではなく、基本は置きましょう。
僕は手札と場の土地が多くなった場合は、手札で唯一の土地なら残し、2枚目が来たら置いていく。そんな方針にしています。トップデッキが土地だったらそのまま持っておき、次のドローが土地なら置く、といった感じです。
もちろん4マナのドロー呪文などが入っている場合は。常に土地を置いていった方が、トップデッキした時の動きが増えます。最近のリミテッドはマナフラッド解消手段が多いので、土地は割と置くことを推奨されています。
ブラフが有効な場面はさほど多くありません。相手に効くかわからないブラフのせいで自分の動きが悪くなったら意味がありません。
■認知限界とブラフ
ハンドリーディングの際にお話しした認知限界の話は、ブラフにもそのまま言えます。もう1度認知限界についておさらいしながら例を出しましょう。
人間には認知限界というものがあります。人の認知行動は以下の4つをループしており。この考え方で認知限界が見えてきます。
自分の認知
自分の行動
相手の認知
相手の行動
この中で見えにくいものが2つあります。
1つ目は「相手の認知」です。
相手がどんな行動を取っているかは一目瞭然ですが、何を認知しているかはわかりません。4/4のレアに対して殴ってきた3/3を単にラッキーだと感じてブロックしてくる可能性もあれば、相手は手札に更に強いレアを持っていたり、そのレアを墓地から回収する手段があり、コンバットトリックで死んでも良いと思っているかもしれません。

相手の認知していることがわからない以上、ブラフは決まるとは限らないのです。
そしてもう1つは「自分の行動」です。
自分は自分のことを認知しています。どんなカードを持っていて、何を考えてプレイしているのか自分ではわかっています。しかし、対戦相手にどんな見え方をしているかはわかりません。自分が普段どんな顔で過ごしているかを自分では認識していません。
あなたの攻撃が、対戦相手から見ると不審に見える可能性があります。攻撃が少し遅かった。攻撃前にちょっと考えていた。さっきのゲームより積極的に殴ってきた。自分の行動を相手は見て、ブラフを見抜いてくるかもしれません。

根本的にブラフは成功率が高そうなものだったとしても、認知限界がある以上、相手が引っかかるかはわからないのです。
つまり実践的なブラフであればあるほど、ローリスクなのです。成功したら勝ち、失敗したら負け。そんなノるかソるかのブラフはマジックではご法度です。
どの道負けるならブラフに賭けてみても良いですが。
■ローリスクハイリターンなブラフを!
ブラフは成功しづらいように見えますよね。実際にそうです。
だからこそ、ブラフをかける際には、リスクをしっかり考えなければなりません。ローリスクハイリターンのブラフが理想で、僕が紹介したブラフの多くは、リスクが低いため、実践向きとなっています。(土地をわざと止めるのは少しリスクが高いです)
全体除去を持っていないフリをするブラフも、土地を置き続けるブラフも、ブラフとバレた時にすべてを失うようなリスクはありません。しかし、成功した時にはしっかりリターンを得られるブラフです。
《喝破》を持っていないフリをするブラフは、構えられる打ち消しを構えないことで、リスクが発生しますが、2ターン目までのアクションは後でどうとでもなるので、打ち消せないことがローリスクだと僕は判断しています。
ハンドリーディングと同じく、ブラフにも日ごろのマジックの知識や経験が必要ということです。《喝破》を構えないことで発生するリスクをリターンと天秤にかけ、問題ないと感じ、そこで初めてブラフを打つわけですからね。
常に使う技術ではありませんが、ブラフは覚えておいて損はありませんよ!虚と実を織り交ぜてマジックをもっと楽しみましょう!

それではまた!
