【掌編】水中の星空
水たまり大嫌い!
だって、この前雨が降ったとき転んでびしょ濡れになっちゃったから。
ママが買ってくれた服も汚れちゃったし……。
幼稚園でもうすぐプールが始まるって先生が言ってたけど、入りたくない!お風呂も嫌い!
仮面ライダーのプールバッグ、買ってもらったときは嬉しかったけど、今は全然嬉しくない。
「泳げるようになったらかっこいいよ!」
ってママも先生も言うけど、嫌だなぁ。
「はるくんおはよー!プール楽しみだね!」
幼稚園に着いたらいおりちゃんに会った。
いおりちゃんのママは僕のママとお話してる。
「僕、プール入りたくない。怖い」
いおりちゃんはびっくりしてたけど、僕の手を引っ張って幼稚園にずんずん入っていく。
「いおりも最初は怖かったけど、プール楽しいよ!一緒に遊べば怖くないよ!」
いおりちゃんはいつも笑ってて、ちょっと「ごーいん」だ。
でも優しくて、好きだなぁって思う。
プールの時間になった。みんな楽しそうに遊んでいるけど、僕はやっぱり怖くてプールの近くの椅子に座ってた。
「はるくんっ」
ほっぺたが冷たくなったと思ったら、いおりちゃんが濡れた手で僕の顔を触ってた。
「プール行こ、入らなくてもお水遊びできるよ!」
そっか、体全部を水に入れなくても遊べるんだって気付いたから、いおりちゃんに手を引かれるまま僕はプールへと向かった。
水にそっと手を入れる。冷たくて気持ちいい。きらきら輝いてきれい。
「ほら、怖くないでしょ!」
本当だ、怖くない。不思議。いおりちゃんが怖くないって言ったら全然怖くなくなった。
「お水ってきらきらしてるよね。お星さまみたいできれい! お水に潜ったらもっときれいに見えるんだよー!」
僕も、水の中の星を見てみたい。
めいっぱい息を吸い込んで、僕はザブンッと水の中に顔を入れた。
目を開けると、プールの中に小さな星がたくさん浮かんでいた。
空気の粒が光に当たって、きらきら輝いている。
息が苦しくなって顔を上げると、いおりちゃんや先生たちが拍手をしてくれた。
「ね、きれいだったでしょ?」
「……うん、すごくきれい」
「天音! ちゃんと拭かないと風邪ひくよー!」
お風呂からあがった途端パジャマも着ないまま飛び出していってしまった娘を追いかける。
「よーし、捕まえたー!」
妻が、リビングで真っ白なバスタオルに捕獲された娘と大笑いしている。
「伊織ごめんね、あとは僕がやるよ」
「いいよー、ちょうど皿洗い終わったし。お風呂入れてくれてありがとね。そんなことより……」
伊織が僕の頬を両手で包む。
「髪乾かしてちゃんとパジャマ着てきてね、晴彦くん」
なんだか堪えきれなくなって、2人で声をあげて笑ってしまった。
あの日見た水の中の星のように、今日の夜空には満天の星が輝いている。
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