卵が輝いて見えたよ、、
給料日まで、あと5日。
財布には1,327円。
しかも明日は、友達とランチの予定がある。
予約した店は1,800円。
もう、この時点で計算が合っていない。
財布の中身より予定のほうが強い。
口座残高は見ていない。
見なければ減らないわけではないけど、精神衛生にはいい。
現実は、確認しなければ少しだけ遠くにある。
そんな日の夜。
お腹が空いたので冷蔵庫を開けた。
卵が1個あった。
以上。
正確には、マヨネーズとポン酢と、いつ買ったか分からないチューブのわさびもある。
でも彼らを夕食と呼ぶには、少し勇気がいる。
卵を見つめながら思った。
「まだいける」
給料日前になると、人は卵1個に希望を見いだす。
普段ならただの卵。
今の私には資産。
明日のランチ代を守るための、最後の防衛線でもある。
とりあえず目玉焼きにしようと思った。
フライパンを出した。
油がなかった。
詰んだ。
25歳、一人暮らし。
卵はある。
油がない。
人生というのは、必要なものが絶妙に揃わない。
仕方なく茹でることにした。
鍋に水を入れて火にかける。
ここまでは完璧。
私はやればできる女だ。
そう思ってスマホを見ていたら、普通に茹ですぎた。
黄身が砂漠になった。
卵1個しかないのに。
唯一の資産を自分で目減りさせた。
しかも食べてみたら、普通にお腹が空いている。
卵1個では25歳女性の夜は終わらない。
冷蔵庫をもう一度開けた。
何も増えていなかった。
当たり前だけど、少し期待していた。
仕方なくコンビニへ行くか悩んだ。
財布には1,327円。
ここで使えば負けな気がする。
というか、明日のランチが消える。
予定を守るために夕食を削る。
これが大人の資金繰りなのかもしれない。
たぶん違う。
結果、家にあった食パンを見つけた。
賞味期限は昨日。
私は少し考えた。
そして焼いた。
熱を通せば、だいたい何とかなると思っている。
科学的根拠はない。
あるのは25年間の雑な経験だけ。
食パンと茹ですぎた卵。
飲み物は水。
立派な夕食が完成した。
たぶん。
SNSを開いたら、同い年の女の子が「自分へのご褒美ディナー」を載せていた。
ワイン。
おしゃれなパスタ。
夜景。
私はカチカチの卵を食べていた。
同じ25歳。
人生のコース料理に差がありすぎる。
でもまあ、お腹は満たされた。
今日の出費は0円。
勝った。
何に勝ったのかは分からない。
明日は1,800円のランチです。
今日の節約は、たぶん前払いでした。
