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『僕らの先にある道』—1番好きだった人と、結ばれるとは限らない


監督 レネ・リウ
主演 ジン・ボーラン、チョウ・ドンユイ
製作年 2018年
上映時間 120分
ジャンル ドラマ


視聴方法

Netflixにて配信中(2026年8月時点)。見放題・レンタルの区分や最新配信状況は各サービスで要確認。

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あらすじ

故郷を離れ、北京へと上京した若者たちの恋と別れを描く物語。同じ春節の帰省電車で出会ったリン(チョウ・ドンユイ)とジエンチン(ジン・ボーラン)は、共に夢を抱えながら都会の厳しさに揉まれていく。ともに生きることを選んだ2人だったが、やがてすれ違いが生じ、それぞれの道を歩み始める。そして10年後、再会した2人の間には、消えることのない記憶と、取り戻せない時間が静かに横たわっている。




見どころ

過去と現在を往還する時制構成

モノクロとカラーで過去と現在を描き分ける構成が採用されている。若き日の北京での日々と、10年後の再会とが交互に語られることで、失われた時間の重みが少しずつ積み重なっていく。単純な回想ではなく、2つの時間軸が互いを照らし合うような構造になっている。

リー・ピンビンによる映像美

撮影監督には台湾出身の名手リー・ピンビンを起用。光と色彩の扱いが絵画的と称され、ノスタルジックな映像が物語の余韻を豊かにしている(※1)。都会の雑踏も、雪の積もる故郷の風景も、どこか詩的な質感で切り取られている。

チョウ・ドンユイの幅広い表現力

ヒロインのリンを演じるチョウ・ドンユイは、無邪気さと大人の色気を一人の役の中で自然に行き来する。夢を追う若さの輝きと、時間に削られていく現実の重さ——その両方を体に宿したような存在感が、物語全体の説得力を支えている。


制作背景

本作は、台湾出身の女優・歌手であるレネ・リウが自ら執筆したエッセイを原作・脚本とし、初めて監督に挑んだ作品。自分の言葉を映像に変えるという選択は、演じ手としての経験を持つからこそ生まれた志向でもある。

撮影監督には、台湾映画界を代表する名手リー・ピンビンを起用。繊細な光の扱いと絵画的な構図で知られる彼の映像が、過去と現在を往還するこの物語に独特の質感を与えている(※1)。

中国での劇場公開は大きな反響を呼び、女性監督による中国語映画として記録的な興行収入を収めたと伝えられている。その後Netflixによる国際配信が行われ、アジア圏を超えて広く観られるようになった(※2)。

第55回金馬奨(台北金馬影展)では新人監督賞を含む5部門にノミネートされており、レネ・リウの監督デビューが同賞の選考でも注目を集めたことがわかる(※3)。


感想

上京する若者たちを描いた物語は、世界中にあふれている。それでもこの映画が刺さるのは、夢や希望より先に「疲弊」を丁寧に描いているからだと思います。

北京という都市は、田舎から出てきた2人を簡単には受け入れない。安アパートで肩を寄せ合い、それでもどこか笑っていられた時間——あの質感が、この映画の核心にある。互いに意識しながらも、しばらくは距離を保っている。それが、ある日自然に縮まっていく。その過程がうるさくなく、説明的でもなく、日常の積み重ねとして描かれているのが良かった。

ただ、ともに生きることを選んだからといって、すれ違いは防げない。都会の厳しさは2人を鍛える前に、まず少しずつすり減らしていく。どちらが悪いわけでもなく、なのに心の距離は開いていってしまう。その描き方に、こちらを責める視点がないのが救いでもあり、いっそう切なかった。家族にも愛されるような女性だったのに、という思いが残った。

10年後の再会シーンは、もどかしさと安堵が同時に来る。それぞれの人生がすでに動いていて、彼女にはすでに夫がいる。一定の距離が保たれているのに、2人の間に確かに何かが通じ合っているのが伝わってくる。あの奇妙な温度——「完全には終わっていない」けれど「もう戻れない」という感覚——が、この映画のいちばん正直な場所だと感じます。過去は過去として美しく、現在は現在として肯定されている。その両立が、不思議と温かかった。

チョウ・ドンユイ(中国出身の女優)は、本当に幅が広い。若い頃の無邪気さと、時間を経た大人の表情と、どちらも作り物に見えない。特に、感情がはじけそうになる瞬間を手前でぐっと抑えるような芝居が記憶に残っている。あの抑制があるから、言葉にならない感情がかえって重く伝わってくる。ジン・ボーラン(中国出身の俳優)との掛け合いも、過不足がなかった。

エンドロールで、静かに崩れた。流れていく言葉がエッセイの原文から来ているのかどうかは確かめていないけれど、「あの頃の君へ」という感触の言葉が、物語全体の余韻にぴたりと重なった。映像が終わってから、もう一度始まるような感覚があった。

1番好きだった人と結ばれるとは限らない。それはわかっていても、何度でも胸に刺さる事実です。この映画はその事実を糾弾もせず美化もせず、ただそのまま差し出してくる。大人になるほど、その差し出し方の正直さが響いてくる気がします。


他の人の見方

映画メディアBANGER!!!は「ベタなのに涙があふれ心も暖まる恋物語」と評しており、台湾出身の女優が初監督を務めた作品として撮影の映像美とともに取り上げている(※1)。

撮影監督リー・ピンビンの仕事に着目したレビューでは「本作のDPリー・ピンビンの撮影に心を奪われっぱなしの2時間だった」との声がある(※4)。

Filmarksでは3000件を超えるレビューが投稿されており、平均スコアは4.0と高い支持を集めている。韓国リメイク版との比較レビューも多く、原作ファンからの言及が目立つ。


こんな人に

・上京・地元を離れた経験がある人。都市の孤独と連帯を描く温度感が刺さりやすい
・すれ違いで終わった恋を持つ人。糾弾も美化もしない描き方が、静かに響く
・アジア映画の映像美に興味がある人。リー・ピンビンの撮影は1つの見どころとして楽しめる
・女性監督のデビュー作を追いたい人。自身のエッセイを映像化したという出発点が、作品の誠実さに出ている
・恋愛映画にあまり馴染みのない人でも、「都会で生きる若者の話」として入りやすく、台詞より感情の流れで見せる構成が観やすい

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出典・参考

※1 BANGER!!!
※2 allcinema
※3 MIHOシネマ
※4 個人ブログ


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映画が終わり、館内に光が戻っても、スクリーンに映っていた像はしばらく目の奥に残りつづける。—「残像」。ZANZOは、その消えてなお残る何かを手がかりに、一本の映画をじっくりと読み解いていく映画紹介メディアです。


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