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最初も最期も、お寿司だった


兄が亡くなった。


それは7月のことで、

そろそろ四十九日になる。


兄は親戚の中でも中心人物で、

何かあると、いつもみんなを仕切っていた。


だから、葬儀の式場に入ったとき、

兄がいつものように仕切っているような気がして、

私はつい兄を探してしまった。


「あ……」


兄の葬儀だった。


兄は今、棺の中だった。



兄に最後に会ったのは、2月。


通院の付き添いだった。


帰宅が少し遅くなったので、

何か食べるものを買って帰ろうと、スーパーに寄った。


「何かお弁当買ってきて。

自分の分も買っていいよ」


そう言って、兄は私にお金を渡した。


私は一人でスーパーに入り、

握り寿司のセットを2パック買った。


兄に一人分のお寿司とお茶を渡し、

お釣りを返した。


それが、最後だった。


また会うだろうと思っていた。


でも、それきりだった。



昨日、夕飯の支度をしていたとき、

ふと思い出した。


そういえば……


年の離れた兄が就職して、

初めてのお給料をもらったとき。


まだ小学生だった私を、


「みんなにはナイショだぞ」


そう言いながら、

お寿司屋さんに連れて行ってくれた。


それが、私の握り寿司初体験だった。


夕飯の支度をする手が止まった。


そっか……


兄に奢ってもらったのは、

最初も最期も、お寿司だったんだ。


葬儀のときは、

まだ実感がなくて、泣けなかった。


けれど、


何十年という長い月日を超えて、

ひとつの記憶が蘇ったとき、


やっと涙が溢れた。



裏庭で、鈴虫が鳴きだした。


秋が近い。


忘れられない夏が、

そろそろ終わる。


つい、この曲が聴きたくなった

ありがとう
さようなら

お兄ちゃん





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