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推しに会うまであと25日。準備しすぎて、もう当日を待つしかない

推しに会うまで、あと25日。

ポムは朝、カレンダーを見た。

「まだ25日ある」

少し前までは「あと30日しかない」と思っていた。

美容をどうするか考えて、美容家電を調べ、髪もメイクも見直した。美容に使う予算を決め、推し活全体の予算まで計算した。

さらにライブ当日の荷物まで整理した。

双眼鏡は残す。メイク用品は減らす。推しグッズは持参枠を決める。帰りに荷物が増えることまで考える。

かなり準備した。

そして気づいた。

「まだ25日あるんだけど」

準備が早すぎた。

やることがなくなったわけではない

もちろん、美容計画は続く。

普段のケアもするし、歩く日も作る。メイクも何度か試すし、ライブが近づけば美容院などの予定もある。

だから、本当にやることがないわけではない。

ただ、今すぐ調べなければならないことが急激に減った。

これはかなり大きかった。

少し前まで、スマホを開けば検索していた。

美容家電。

ドライヤー。

EMS。

ヘアケア。

ライブバッグ。

気になったら調べる。比較する。さらに別の商品が出てくる。

検索が検索を呼んでいた。

今は必要なものがだいたい決まっている。

「暇だな」

仕事はある。

暇ではない。

昼休み、検索するものがない

会社の昼休み。

いつものようにスマホを開いた。

何を見る?

美容家電はだいたい見た。欲しいものも保存してある。

ライブの持ち物も整理した。

ホテルは必要ならすでに確認している。

グッズは発表された分を見た。

ポムはしばらく考えた。

そして推しの名前を検索した。

結局そこへ戻る。

「今日もいい」

何を準備していても、最終的には推しを見る。

原点回帰である。

仕事中は普通に仕事をする

午後。

ポムは仕事をしていた。

ライブがあるからといって、仕事が減るわけではない。

むしろ遠征などで休みを取るなら、それまでに仕事を片づけておきたい。

資料を作る。

メールを返す。

数字を確認する。

出張の予定も確認する。

そこへ同僚がやってきた。

「これ、移動どうするのが早いかな」

場所を聞いた。

ポムはほとんど考えずに答えた。

「そこなら新幹線でこっちまで行って、乗り換えたほうが早いですよ。時間によってはこっちのルートでもいいですけど」

「詳しいね」

「まあ」

推し活で鍛えられたとは言わなかった。

全国の会場とホテルと交通手段を調べ続けた結果、妙なところで仕事に還元されている。

さらにホテルまで聞かれた

「この辺ってホテルある?」

「ありますよ」

答えたあと、ポムは止まった。

なぜ即答できる。

「駅のこっち側のほうが移動しやすいと思います。翌朝こっちへ行くなら、駅近のほうが楽です」

「出張多かったっけ?」

「いや、そんなには」

ではなぜ詳しいのか。

理由は一つしかない。

ライブ遠征である。

推しを追いかけていたら、仕事の出張にも強くなってしまった。

会社は知らない。

ポムの高速移動計算の裏側に、何年分もの推し活データが眠っていることを。

推し活で身についたもの、多くない?

帰宅してから考えた。

交通。

ホテル。

予算管理。

荷物の軽量化。

美容。

写真。

さらに、推しが関係したものは妙に詳しくなる。

推しが歴史ものに出れば、その時代を調べる。

美術館とコラボすれば作品を見る。

紅茶が好きだと言えば紅茶を調べる。

お酒の話をすれば、今まで知らなかった種類まで気になってくる。

「私、推し活で何を目指してるんだろう」

別に何も目指していない。

推しが好きなだけである。

なのに、知識だけが横へ横へと広がっていく。

もし推しが資格を取ったら

ふと思った。

もし推しが、

「宅建取りました」

と言ったらどうするだろう。

ポムは少し考えた。

「……取るかも」

危険である。

推しが勉強して取った資格。

どんな内容なのか気になる。

同じ問題を解いてみたくなる。

参考書を見る。

勉強を始める。

受験する。

あり得る。

「いや、そこまでは」

自分で否定した。

でも完全には否定できなかった。

推し活は、趣味の範囲を勝手に広げる

最初は推しを見るだけだった。

ライブへ行く。

曲を聴く。

出演作品を見る。

それだけだったはずなのに、遠征するようになれば交通に詳しくなり、ホテルを調べるようになる。

美容を頑張ろうと思えば美容家電まで調べる。

作品の題材が気になれば歴史や文化まで調べる。

推し本人が何か始めれば、それまで興味のなかった分野まで覗きに行く。

結果として、日常の変なところで役に立つ。

仕事で出張ルートを聞かれて即答するとは思わなかった。

そして翌日の予定を見る

明日は仕事。

特別な予定はない。

美容計画も、決めたことを続けるだけ。

ライブ準備も急ぐ必要はない。

推しに会うまで、あと25日。

ポムはようやく、普通の日常へ戻った。

スマホを置こうとしたところで、推しの新しい投稿が出た。

当然見る。

そこに、知らないお菓子が写っていた。

「これどこの?」

検索した。

普通の日常へ戻るのは、もう少し先になりそうだった。

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