美容予算を決めたのに、推しの新グッズが発表された
推しに会うまで、あと27日。
ポムは美容の欲しいものリストを整理し、ついに予算まで決めた。
欲しいものを全部買うのではなく、毎日使うものを優先する。ライブが終わってからでもいいものは後回し。高くても長く使うなら候補に残す。
かなり冷静である。
以前なら「欲しい」で終わっていたところを、「本当に今いる?」まで考えられるようになった。
美容計画を始めて、ポムは確実に成長していた。
その日の昼休みまでは。
推しの新グッズが発表された
スマホに通知が来た。
何となく開いた。
新グッズ。
「え?」
ポムは画像を拡大した。
今回のビジュアル、かなりいい。
アクスタがある。写真もある。使うかどうか分からない小物まである。
そしてランダム商品もある。
「ランダム……」
危険な文字を見つけた。
美容家電を選ぶときには、あれだけ価格と使用頻度と将来性を考えた女が、推しのグッズを前にすると急に判断能力を失う。
とりあえず全部見る。
一個ずつ見る。
欲しい。
これも欲しい。
こっちは二個あってもいい。
「待って」
昨日と同じ展開になっている。
美容には予算がある
ポムは思い出した。
美容予算を決めたばかりだった。
ライブまでの30日間で美容に使う金額を決め、何を優先するかまで整理した。
つまり、これ以上好き勝手に買うわけにはいかない。
そこでグッズ代を計算した。
「……これは美容予算じゃないな」
当然である。
美容ではない。
だったら問題ないのでは?
一瞬で結論が出そうになった。
「いや、待って」
美容予算とグッズ予算が別なのは正しい。
しかし財布まで別世界に存在しているわけではない。
どちらも自分のお金である。
危なかった。
推し活費という巨大な財布
美容に3万円。
グッズに2万円。
遠征費。
ライブ当日の食事。
交通費。
服も欲しくなるかもしれない。
一つずつ予算を分けると、なぜか全部使っていいような気がしてくる。
ポムは電卓を出した。
美容家電のときと同じである。
足す。
さらに足す。
「……」
今回は途中で閉じなかった。
最後まで見た。
そして、しばらく数字を眺めた。
「ライブってチケット代だけじゃないんだよな」
今さらである。
何度もライブへ行っているのだから知っている。
でも、こうして美容まで本気になったことで、ライブ一回に関連して動いているお金が急に大きく見えてきた。
じゃあ美容を削る?
最初に思いついた。
新グッズが欲しいなら、美容予算を少し減らす。
ところが、そこで例のドライヤーが頭をよぎる。
毎日使う。
ライブ後も使う。
長く使う。
一方、アクスタ。
「……毎日見る」
強い。
写真。
「見る」
強い。
ランダム商品。
「これは……」
少し弱い。
ポムはランダム商品の個数を減らした。
美容計画を始めてから、一番大きな成長かもしれない。
優先順位をつければいい
美容でやったことと同じだった。
全部欲しいと思っても、全部を同じ優先順位にしなくていい。
絶対に欲しいグッズ。
できれば欲しいグッズ。
余裕があれば欲しいグッズ。
今回は見送ってもいいグッズ。
分けてみる。
「できるじゃん」
美容の欲しいものリストで散々やったので、今回は早かった。
問題は、「絶対に欲しい」が多いことだった。
そこは美容計画では解決できない。
結局、何に一番お金を使いたい?
仕事が終わってから、ポムはもう一度予算を見直した。
美容を全部削ってグッズへ回すつもりはない。今回、美容を本気でやってみたいと思ったのも自分だからだ。
逆に、美容家電を買うために欲しいグッズを全部諦めるのも違う。
だったら、両方の中から優先順位を決めればいい。
美容で絶対に欲しいもの。
グッズで絶対に欲しいもの。
遠征やライブに必要なお金。
それを先に確保する。
残ったところで、二番手を考える。
「これならいける」
ようやく落ち着いた。
そして夜
ポムは新グッズの画像をもう一度見た。
やっぱり欲しい。
でも、昼休みに見たときよりは冷静だった。
カートへ入れるものを決める。
ランダム商品は予定どおり減らした。
美容予算も守る。
「完璧」
かなり満足した。
その直後、別の通知が来た。
推しが雑誌に出るらしい。
ポムはスマホを見た。
「……これは別予算でいい?」
誰に聞いているのか。
推しに会うまで、あと27日。
美容予算を管理できるようになったポムは、次に推し活全体の予算という、さらに大きな敵と戦い始めていた。
