『蛇のウソ、鹿のウソ』【童話】
早朝に起きて書き上げました…
執念の6200字です・・・(笑)
第3回 角野栄子あたらしい童話大賞に参加予定なので、修正したほうが良いとこなどあれば、どしどしコメントで教えてください!
一応、8歳児向けに書いております。
今日は、朝から妻子とプール。
気を付けて行ってきます🍉
蛇のウソ、鹿のウソ
むかし むかし あるところに、
正直者の狩人が、深い森の入り口にある山小屋で暮らしていました。
狩人は、お金持ちではありませんでしたが、
森の恵みに感謝しながら、静かに暮らしていました。
狩人の仕事は、森を守り、人に悪さをしそうな動物を鉄砲で仕留めることです。
そして、その肉や皮を王国まで売りにいって、生活をしていました。
「ズドンッ」
今日は王様の命令で、いつも旅人を襲う凶暴な熊を仕留めました。
その帰り道、熊の命に感謝し、山の神様がいるお社に手を合わせます。
狩人がお供え物を置いて帰ろうとしたその時です。
「シュルシュルシュル」
祠の奥の木陰から物音がします。
おそるおそる、木の後ろを見た狩人はびっくりしました。
そこには、今まで見たことのないような大きな蛇が、たった今、子鹿を丸呑みにしようとしているところでした。
狩人はとっさに鉄砲を構えて、蛇の尻尾を撃ちました。
「ズドンッ」
「シャァァァ」
「シュルシュルシュルー」
ヘビは子鹿を吐き出し、急いで森の中へ逃げて行きました。
吐き出された子鹿を見ると、足首にキバでできた傷がありました。
「おお、かわいそうに」
狩人は、持っていた薬草を手でもみ、ちぎったシャツの袖で傷の手当てをしました。
しばらくすると、パチっと子鹿の目が開き、狩人に気づいた途端、起き上がり、森の中にピョンピョンと逃げていきました。
「どうやら自分で動けるようだ、良かった良かった」
狩人は一安心して、山小屋に戻りました。
その夜のことです。
狩人は、悪夢にうなされていました。
そこは、霧が立ち込める暗い森の中。
目の前に、壁のように大きな蛇が立ちはだかり、狩人を見下ろしています。
「よくもおれ様の食事を邪魔したな」
蛇は先が二つに分かれた舌をヒュルっと出しながら、しゅるりしゅるりと近づいてきます。
「おれさまは魔法が使えるんだ」
怖くて、足が震えます。
「そうだ、お前をウソつきにしてやろう」
そういうと、蛇は大きな口を開け、狩人に近づいてきました。
「うわー!」
大きな声をだして、飛び起きると、そこはベッドのなかでした。
「夢か……」
狩人はふっと胸を撫でおろし、朝の準備を始めます。
ベッドから降りようとした時です。
ズキンとした鋭い痛みが足首に走ります。
ズボンをめくってみると、子鹿にあったようなキバの跡があります。
狩人は、恐ろしくなって、薬草と包帯で足首をぐるぐる巻きにしました。
しばらくすると、痛みは少しずつ治まり、動けるようになりました。
「恐ろしい、蛇の呪いだろうか」
それでも狩人は、今日はお城に行かなくてはいけません。
昨日、熊を退治した褒美のお金をもらうためです。
狩人は朝早く出発して、昼前には城下町に着きました。
街では、狩人が凶暴な熊を倒したことが話題になっていました。道を歩くたびに、『ありがとう』『おかげで助かったよ』と声をかけられました。
お城に着くとお役人が待っていました。
「熊退治ご苦労様です。銀貨を10枚差しあげましょう」
役人は脚の包帯に気がつきます。
「その足はどうしましたか?」
「ああ、これは…」
そこまで言おうとした時、足首に突然強烈な痛みが走り、合わせるように口が勝手に動きだします。
「実は、熊を狩る時に怪我をしてしまって、大事な猟犬の相棒も失ったんです」
それを聞いた役人は
「おお、それはかわいそうに。褒美はもう少し増やしましょう。」
そういうと、銀貨は20枚に増えました。
(・・・とっさに嘘をついてしまった)
驚いた狩人は、銀貨を断ろうとしました。
ですが、また傷がズキンと痛み、思いとは別の言葉が口から出てしまいます。
「猟犬の墓を作ってあげたいんです。もっと銀貨をもらえないでしょうか」
「そうですね。それならお墓の分の銀貨も渡しましょう」
結局狩人は、いつもの褒美よりもずっと多い銀貨を手に入れました。
本当は猟犬など飼っていません。
少し心は痛みましたが、銀貨をたくさんもらえたので、悪い気はしませんでした。
それに、この国に住む人たちは、みんな正直者でした。
なので、狩人の言葉を疑う人など、ほとんどいません。
帰りに市場に寄り、熊の皮を売ることにしました。
皮を買ってくれる職人のところに行き、昨日鉄砲で撃った熊の皮を見せました。
「これは、立派な皮だ。少し高く買い取ろう」
すると、足首の傷がまたチクリと痛みます。
狩人は言います。
「この皮は、私が仕留めた熊の中で、一番大きい熊から採ったものだ」
「記念に残してもいいくらいだから、そう簡単には売れないよ」
職人は少し、考えました。
そしてしばらくして言いました。
「そんなに良いものなら、もっと高く買い取るよ」
結局、狩人は、いつもより高く熊の皮を売ることができました。
手元にはたくさんの銀貨。
そしていつもより豪華な夕飯の食材を持って、狩人は山小屋に帰ります。
狩人は、新鮮な鶏肉がたくさん入ったスープを作りました。
そのスープはとても良い匂いがして、いつもの薄いスープとは比べものにならないほど美味しく感じました。
「ズズズッ」
狩人はスープを全て平らげました。
「あー、美味しかった」
そこで、また、傷が痛みました。
「そうだ、鶏肉の骨を使って、猟犬の墓を作っておこう」
狩人は庭に出て穴を掘り、そこに鶏肉の骨を入れました。
そして、大きな石を運んできて、それに名前を掘りました。
『愛犬、ジューダス、ここに眠る』
その時、後ろから視線を感じました。
振り返ると、子鹿がこちらを見ていました。
狩人と目が合うと、子鹿は森の中に跳ねて消えていきました。
次の日の朝、また少し、足首の傷が痛みました。
ですが、昨日よりは随分と痛みが小さくなっています。
ただ、昨日まで噛み跡のようだった傷は横に広がり、不気味なトゲのような模様が浮き出ていました。
狩人はもう一度薬草をしっかりと塗り込み、包帯をして外に出ました。
今夜は、王国中の狩人を集めた集会があります。
そこでは、年に一度、狩人の実力を讃える表彰式があります。
そこには王様やお妃様もやってきます。
表彰されるということは狩人にとっては大変名誉なことです。
ですが、狩人は今まで、その集会に参加したことがありませんでした。
「今年は王国からもらった仕事もたくさんしたし、集会に参加してみようか」
王国から頼まれた仕事を無事に終えると、メダルがもらえます。
その年のメダルを、一番多く集めた狩人が優勝し、賞金をもらえます。
狩人の傷がまたチクッと痛みます。
そうだ、この森の近くの狩人はみんな集会には参加しない。
その人たちのメダルを買い取ろう。
狩人は丘の近くの山小屋の扉をノックし、出てきた主に言いました。
「王国のメダルをもらえないかな?」
主は不思議そうに尋ねます。
「こんなものいったい何に使うんだい?」
そう聞かれた狩人は答えます。
「甥っ子が狩人に憧れていて、その子にあげたいんだよ」
主は笑顔で答えます。
「ああ、そういうことなら、全部持って行ってくれ」
狩人のことを信じている主は、疑うことなく、全てのメダルを渡しました。
次は湖の近くにある山小屋に着きました。
そこで、薪を割っていた青年に声をかけます。
「王国のメダルをもらえないかな?」
青年は薪を割る手を止め、尋ねます。
「何に使うんだい?」
そう聞かれた狩人は答えます。
「ケガで寝込んでいる妹にお守りとしてあげたいんだ」
青年は気の毒そうな顔をして答えます。
「それは大変だ。好きなだけ持って行ってくれ」
狩人はすまなそうな顔をして答えます。
「ありがとう、妹も喜ぶよ」
昼までには、たくさんのメダルが集まりました。
まだ、傷は少し痛みます。
ですが、それほど痛みは気にならなくなっていました。
狩人は、メダルを手に取ると、加工を始めます。
器用な手つきで、メダルに彫られた名前を消し、自分の名前を彫り直しました。
そして、それを持って、集会に向けて山小屋を後にします。
夕方の空は灰色で、背の高い杉の木々がギザギザした影を作り、まるで怪物のように見えます。
城下町に着き、集会の手続きを終わらせた狩人は、きれいな服に着替えるため、洋服店に行きます。
新品の狩猟用の服やブーツを買い、試着室を借りて着替えました。
狩人は、新しく買った服に小さなほつれを見つけて、小さくニヤリと笑いました。
そして、試着しているブーツのかかとに、もっていたナイフで少しだけ傷をつけ、店主を呼びました。
「服にはほつれがあるし、ブーツには傷がある。すまないが、これではお金は払えないよ」
店主は困った顔をして言います。
「サイズはそれしかないんだよ。悪いが3割引きにするから、そのまま買ってもらえないかい」
狩人は困ったふりをして言います。
「半額にしてもらえるなら買わなくもないが…」
店主は少し考えたあと言います。
「いつもひいきにしてもらっているし、半額で大丈夫だよ。すまなかったね。」
「ああ、ありがとう。じゃあよろしく頼むよ」
お店をでた狩人は少し気になって足首の傷を確認してみます。
すると、傷は足首に円を描くように、広がっており、まるで、薔薇のトゲが足首に巻き付いているようです。
ですが、あまり怖いとは思いませんでした。
痛みもないし、何より、この傷ができてからというもの、良いことが続いているからです。
表彰式の時間になり、狩人は、新しい身なりで、得意げに会場に向かいます。
会場では、持ち込まれたメダルが数えられ表彰者が決められます。
結果は、なんと優勝でした。
それも、他の狩人に大きく差をつけての優勝です。
狩人は、銀貨の沢山入った袋が渡され、王様から勲章が渡されます。
狩人は、表彰台に立ってひと言いました。
「私は、優れた狩人です。どんな獲物でも、狩って見せます」
そういうと、会場がワーっと沸き、拍手に包まれました。
ただ、狩人の中には不思議がる人もいました。
「アイツは初めてみる顔だよな?」
「突然、あんなに王国から仕事をもらえることなんてあるのか?」
また、見ていた街の人たちも言いました。
「あんなにお金をもらえて羨ましいな」
「どうやってやったら、王様に褒めてもらえるのだろう」
集会が終わった後、狩人は酒場にいました。
酒を飲み、お店のマスターと話をしています。
狩人は上機嫌です。
「マスター、上等な酒をくれ。今日は祝い酒なんだ」
マスターはジョッキに酒を注ぎながら、聞きます。
「それにしても、突然優勝しちまうなんて、アンタすごいな」
狩人はご機嫌で答えます。
「すごいだろう。ちょいとコツがあるんだ。それにオレには実力があるからな」
そういうとガハハと大笑いしました。
そこに、お城の衛兵がやってきました。
「そこの狩人。お前に聞きたいことがある」
狩人はジョッキを机に置き、その衛兵を見ました。
「私になんの用でしょう」
衛兵は、ここでは話ができないと言うと、店の外を指差して、外に出ていきました。
あたりに人がいないのを確認した衛兵はいいました。
「私は衛兵長をしているものだ」
狩人はびっくりして聞き返します。
「失礼しました。でもそんな偉い人が何で私に?」
衛兵長は小さな声でいいます。
「腕のいいお前にしか頼めないことがある」
狩人の足首がまたジリリと痛みます。
「どういったことでしょう」
衛兵長は、狩人のほうをじっと見ながらメダルを取り出します。
「あっ…」
狩人はギョッとして、衛兵長を見返します。
「これに見覚えがあるな?」
頭の中では必死に嘘を考えています。
「安心しろ。捕まえにきたのではない」
衛兵長はあたりをキョロキョロと見渡し、誰もいないのを確認して言います。
「私は、今の王様ではこの国を守れないと思っている。」
狩人はびっくりして聞き返します。
「それはどういうことでしょう」
衛兵長は堪忍したように、言います。
「私は王様を倒し、新しい王様になりたいのだ」
狩人の傷がズキンズキンと痛くなっていきます。
「私は何をすれば?」
おそるおそる狩人は尋ねます。
「明日、王様がお前の山小屋の近くを通る。私と数人、盾を持った衛兵がいるので、それ以外の衛兵を遠くから撃ってほしい」
さらに痛みが強くなり、狩人の額には汗が浮かびます。
「わかりました…任せてください」
衛兵長は安心したような顔を見せ言います。
「頼む。詳しい作戦はこれをみてくれ。メダルの件は誰にも言わない。褒美もたくさん用意しておこう。」
衛兵長は、街の人込みに消えていきました。
その時、酒場の壁の近くで物音が聞こえました。
急いで狩人が追いかけると、何か小さな動物が林の中に逃げていくのが見えました。
「なんだ、鹿か」
狩人は酒場に戻り、しばらく酒を飲んだ後、山小屋に帰りました。
その日の夜、再び狩人は夢を見ました。
今度は、大きな角を持ち、全身がうっすら輝いている大きな鹿が立っています。
大鹿は狩人をじっと見つめたまま、動きません。
狩人も動けずに、じっと大鹿を眺めています。
そのうち大鹿が近づいてきて、狩人の足首に息を吹きかけます。
すると、突然足首が焼けるように痛み、狩人はベッドから飛び起きます。
「また夢か」
気がつくと朝になっています。
狩人が急いで足首を見ると、薔薇のトゲのようになっていた傷跡が消えていました。
狩人は衛兵長からもらった紙を見ました。
王様が森を通るのは、今日の昼すぎです。
昨日起きたことを思い出し、狩人はいろいろなことを考えます――
ついに約束の時間になりました。
狩人は支度をして、山小屋を出ます。
暗い森を抜け、小川にかかった橋を渡り、藪の中に身を隠しました。
しばらくすると、王様の馬車と昨日会った衛兵長の姿が小道の奥から現れました。
王様の一行が狩人の近くを通りかかったその時。
「カンカンカン」
金属を打ちつけるような音が響き、衛兵のひとりが小道に倒れます。
衛兵長たちは、王様の馬車を守る兵士たちに斬りかかり、目の前で戦いが始まります。
「かかれー。王様を捕まえろー!」
衛兵長の大声が響き渡り、王様を守る兵士たちは何が起きたかわからず、散り散りになっています。
その時です。
「ズドンッ」
狩人の撃った鉄砲の音が響き渡ります。
倒れたのは衛兵長でした。
盾を持った衛兵たちは、びっくりして顔を見合わせ、次々と取り押さえられていきます。
狩人は、王様を守ろうとして引き金を引きました。
けれど、なぜ真っ先に衛兵長を狙ったのかは、自分でもわかりませんでした。
狩人は、怖くなって、戦いの結末を見ることなく、自分の山小屋に逃げ帰りました。
お昼をすぎた頃でした。
誰かが山小屋の扉を叩きました。
「コンコン、誰かいるか」
狩人が、のぞき穴から外をみると、王国の兵士が数人、扉の前に立っています。
「何か御用でしょうか」
狩人はおそるおそる答えます。
「先ほど、王様を鉄砲で助けたものを探しているのだが、何か知らないか」
少しだけ、扉を開けて顔を出します。
「私はずっとここにいたのでわかりません」
兵士たちは顔を見合わせます。
「見かけたり、聞いたりしたら王国に知らせるように」
兵士たちはそう告げると、足早に去っていきました。
衛兵長が、もう何も話せないことだけは、狩人にもわかっていました。
それでも狩人は少し怖くなりました。
もしかしたら、兵士たちは嘘をついていて、本当は衛兵長たちの仲間を探しているんじゃないか。
そう思えたのです。
その日、狩人は荷物をまとめて、山小屋を後にしました。
どこか遠く、自分のことを知らない場所に行こうと思ったのです。
その時、森の奥から、誰かに見られているような気がしました。
狩人は振り返りました。
ですが、そこには誰もいません。
狩人は、そのままリヤカーを引いて、森の奥に消えていき、二度とこの森に戻ることはありませんでした。
おしまい
