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月夜の森の梟
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作家夫婦は病と死に向きあい、どのように過ごしたのか。残された著者は過去の記憶の不意うちに苦しみ、その後を生き抜く。心の底から生きることを励ます喪失エッセイの傑作、52編。
◯本文より
あと何日生きられるんだろう、と夫がふいに沈黙を破って言った。/「……もう手だてがなくなっちゃったな」/私は黙っていた。黙ったまま、目をふせて、湯気のたつカップラーメンをすすり続けた。/この人はもうじき死ぬんだ、もう助からないんだ、と思うと、気が狂いそうだった。(「あの日のカップラーメン」)
*
余命を意識し始めた夫は、毎日、惜しむように外の風景を眺め、愛でていた。野鳥の鳴き声に耳をすませ、庭に咲く季節の山野草をスマートフォンのカメラで撮影し続けた。/彼は言った。こういうものとの別れが、一番つらい、と。(「バーチャルな死、現実の死」)
*
たかがパンツのゴム一本、どうしてすぐにつけ替えてやれなかったのだろう、と思う。どれほど煩わしくても、どんな忙しい時でも、三十分もあればできたはずだった。/家族や伴侶を失った世界中の誰もが、様々な小さなことで、例外なく悔やんでいる。同様に私も悔やむ。(「悔やむ」)
*
昨年の年明け、衰弱が始まった夫を前にした主治医から「残念ですが」と言われた。「桜の花の咲くころまで、でしょう」と。/以来、私は桜の花が嫌いになった。見るのが怖かった。(「桜の咲くころまで」)
元気だったころ、派手な喧嘩を繰り返した。別れよう、と本気で口にしたことは数知れない。でも別れなかった。たぶん、互いに別れられなかったのだ。/夫婦愛、相性の善し悪し、といったこととは無関係である。私たちは互いが互いの「かたわれ」だった。(「かたわれ」)
●近年、稀にみる圧倒的共感を得た朝日新聞連載の書籍化
- 本の長さ176ページ
- 言語日本語
- 出版社朝日新聞出版
- 発売日2021/11/5
- 寸法18.8 x 13 x 2 cm
- ISBN-104022518006
- ISBN-13978-4022518002
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出版社より
商品の説明
出版社からのコメント
作家夫婦は病と死に向きあい、どのように過ごしたのか。残された著者は過去の記憶の不意うちに苦しみ、その後を生き抜く。心の底から生きることを励ます喪失エッセイの傑作、52編。
◯本文より
あと何日生きられるんだろう、と夫がふいに沈黙を破って言った。/「……もう手だてがなくなっちゃったな」/私は黙っていた。黙ったまま、目をふせて、湯気のたつカップラーメンをすすり続けた。/この人はもうじき死ぬんだ、もう助からないんだ、と思うと、気が狂いそうだった。(「あの日のカップラーメン」)
*
余命を意識し始めた夫は、毎日、惜しむように外の風景を眺め、愛でていた。野鳥の鳴き声に耳をすませ、庭に咲く季節の山野草をスマートフォンのカメラで撮影し続けた。/彼は言った。こういうものとの別れが、一番つらい、と。(「バーチャルな死、現実の死」)
*
たかがパンツのゴム一本、どうしてすぐにつけ替えてやれなかったのだろう、と思う。どれほど煩わしくても、どんな忙しい時でも、三十分もあればできたはずだった。/家族や伴侶を失った世界中の誰もが、様々な小さなことで、例外なく悔やんでいる。同様に私も悔やむ。(「悔やむ」)
*
昨年の年明け、衰弱が始まった夫を前にした主治医から「残念ですが」と言われた。「桜の花の咲くころまで、でしょう」と。/以来、私は桜の花が嫌いになった。見るのが怖かった。(「桜の咲くころまで」)
元気だったころ、派手な喧嘩を繰り返した。別れよう、と本気で口にしたことは数知れない。でも別れなかった。たぶん、互いに別れられなかったのだ。/夫婦愛、相性の善し悪し、といったこととは無関係である。私たちは互いが互いの「かたわれ」だった。(「かたわれ」)
●近年、稀にみる圧倒的共感を得た朝日新聞連載の書籍化
登録情報
- 出版社 : 朝日新聞出版
- 発売日 : 2021/11/5
- 言語 : 日本語
- 本の長さ : 176ページ
- ISBN-10 : 4022518006
- ISBN-13 : 978-4022518002
- 商品の重量 : 1 g
- 寸法 : 18.8 x 13 x 2 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: 本 - 46,548位 (本の売れ筋ランキングを見る)
- 近現代日本のエッセー・随筆 - 304位
- カスタマーレビュー:
著者について

1952(昭和27)年、東京生れ。成蹊大学文学部卒業。
1996(平成8)年に『恋』で直木賞、1998年に『欲望』で島清恋愛文学賞、2006年に『虹の彼方』で柴田錬三郎賞を受賞した。代表的な長編作品に『狂王の庭』『虚無のオペラ』『瑠璃の海』『望みは何と訊かれたら』『ストロベリー・フィールズ』がある一方、短編の名手としても知られ、『水無月の墓』『夜の寝覚め』『雪ひらく』『玉虫と十一の掌篇小説』といった短編集も多数発表している。また、エッセイ集に『闇夜の国から二人で舟を出す』などがある。
カスタマーレビュー
お客様のご意見
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日本からのトップレビュー
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感動しました
2026年8月9日に日本でレビュー済み時間をかけてゆっくり読みました。
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解説が感動を引き立てる
2026年4月4日に日本でレビュー済み林真理子が解説の中で書き留めている夫妻の姿がとてもよかった。
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優しい気持ちになる本
2026年5月23日に日本でレビュー済みとても良い本です。
綺麗な表現で、私の気持ちにすーっと入ってきて、落ち着きました。
夫が入院して家から居なくなり、とても寂しい気持ちはに寄り添ってくれる本に出会えました。
1人のお客様がこれが役に立ったと考えていますフィードバックを送信中...フィードバックを送信中...参考になったフィードバックをお寄せいただきありがとうございます。申し訳ありませんが、投票の記録に失敗しました。 もう一度お試しくださいありがとうございます。数日中に調査いたします。申し訳ありません。このレビューを報告できませんでした。 もう一度お試しくださいコミュニティガイドライン新しいタブで開きますに照らしてこのレビューが適切かどうか確認します。 そうでない場合は削除されます。
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何度も読みたい
2025年4月29日に日本でレビュー済み心に抱えていた思いと共感する描写が多数あり、買って良かった。
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伴侶を喪った哀しみ
2021年11月15日に日本でレビュー済み私は昨年の秋に35年余り連れ添った夫を喪い、ついこの本を手に取りました。
37年間連れ添った夫の作家藤田宜永氏を肺がんで喪った作者の、
軽井沢で過ごす日々の想い、追憶が綴られたエッセーです。
共に過ごした日々も同じくらい、子供のいない点も同じ、自分とは共通点があるのですが、
夫婦生活の濃密さ、という点ではお二人は特別ですよね。
森の中の家にこもって執筆してきたのですから、仕事中は各々の書斎にいたとはいえ、
普通の夫婦に比べて共に過ごした時間は圧倒的に多いはずです。
しかも同業者ですから会話も日常から小説のことまで、幅広い。
喪失感は計り知れないとお察し申し上げます。
あ、この気持ち分かる、分かる、と思わず共感して涙ぐむ部分と、
伴侶の死といっても人によって千差万別なのだなと感じてしまう部分がありました。
私の場合は後悔する気持ちが大きく、ずいぶん自分を責めましたし、
なにより、霊的体験が幾度もありました。
羨ましいのは、亡くなる直前まで藤田氏が自宅で過ごせたこと。
病院なら、コロナで面会ができないところが多かったはずです。
私は危篤になるまで会えませんでした。
哀しみや淋しさが時とともに癒えるとは今はとても思えませんが、
悲しんだり淋しく思ったりということに、慣れていく、といいますか、
上手に悲しむ、というのは時間とともに学んでいけるかな、と感じています。
「喪の仕事」(mourning work)というやつですね。
ひとつひとつのエッセーの最後数行が、軽井沢の森の描写になっていて美しいです。
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人生には別れがつきもの。ただただ悲しい。
2026年4月24日に日本でレビュー済み泣けます
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魂のこもったエッセイ
2022年3月5日に日本でレビュー済み作者の文章は美しい、私が初めて読んだ作品は「無伴奏」だった、仙台市のバロック音楽を聴かせる喫茶店で作者と同じ時代通いつめたものです、このエッセイは伴侶を亡くした喪失感を卓越した筆舌で表現しており素晴らしい、そして「それにしても、さびしい、ただ、さびしくて言葉がみつからない」この言葉こそ作者の心中を表しており心に響くものがある。
10人のユーザーが役に立ったと感じていますフィードバックを送信中...フィードバックを送信中...参考になったフィードバックをお寄せいただきありがとうございます。申し訳ありませんが、投票の記録に失敗しました。 もう一度お試しくださいありがとうございます。数日中に調査いたします。申し訳ありません。このレビューを報告できませんでした。 もう一度お試しくださいコミュニティガイドライン新しいタブで開きますに照らしてこのレビューが適切かどうか確認します。 そうでない場合は削除されます。
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凄い…
2024年12月8日に日本でレビュー済み色々な本を読んできましたがこんなにも
気持ちが伝わってくるような作品に出会った事が初めてで1話読むごとに涙が止まらず
入り込み過ぎると気持ちが落ちますが
沢山の感情に溢れてとても素晴らしい作家さんでした
命の大切さ生きる事沢山考えさせて頂きありがとうございました
6人のユーザーが役に立ったと感じていますフィードバックを送信中...フィードバックを送信中...参考になったフィードバックをお寄せいただきありがとうございます。申し訳ありませんが、投票の記録に失敗しました。 もう一度お試しくださいありがとうございます。数日中に調査いたします。申し訳ありません。このレビューを報告できませんでした。 もう一度お試しくださいコミュニティガイドライン新しいタブで開きますに照らしてこのレビューが適切かどうか確認します。 そうでない場合は削除されます。
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