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ボヴァリー夫人 (新潮文庫)
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サブタイトルは「地方風俗」。村の不倫話を芸術にまで昇華させた仏文学の金字塔、待望の新訳!
1857年、「公衆の道徳および宗教に対する侮辱」の罪で、パリで裁判となった作品(判決は無罪)。
娘時代に恋愛小説を読み耽った美しいエンマは、田舎医者シャルルとの退屈な新婚生活に倦んでいた。やがてエンマは夫の目を盗んで、色男のロドルフや青年書記レオンとの情事にのめりこみ莫大な借金を残して服毒自殺を遂げる。そして――。
一地方のありふれた姦通事件を、芸術に昇華させたフランス近代小説の金字塔。徹底した推敲を施した原文の息づかいそのままに、日本語に再現した決定版新訳。
本文より
エンマは寝室で化粧をしているところで、忍び足で近づいて背中に接吻すると、彼女はあっと声を上げた。(略)
彼女は結婚するまで、自分が恋をしているものと信じ切っていたが、その恋から生じたはずの歓びが訪れてこないので、自分が思い違いをしたのに違いない、と思った。そしてエンマは、本のなかで読むとあんなにも美しく思われた至福とか情熱とか陶酔といった言葉が人生ではじつのところ何を意味しているのか、知ろうと努めた。(第一部第五章)
フローベール Flaubert, Gustave(1821-1880)
北フランス・ルーアン生れ。13歳頃から創作を開始し、パリ大学法学部に進学するが神経症の発作を機に文学に専念。4年半の苦行の後『ボヴァリー夫人』(1857)によって当代最高の小説家として不動の地位を得た。「パリ評論」誌に『ボヴァリー夫人』連載中、良俗侮辱のかどで告発された。著者が残したともいわれる「ボヴァリー夫人は私だ」という言葉はあまりにも有名。他の作品に、『感情教育』(1869)、『ブヴァールとペキュシェ』(1881)など。
芳川泰久
1951年、埼玉県生まれ。早稲田大学大学院後期博士課程修了。早稲田大学文学学術院教授(フランス文学、文芸評論)。ヌーヴェル・クリティツク、テクスト論と呼ばれる批評ジャンルの第一人者。著書に『闘う小説家バルザック』『金井美恵子の想像的世界』『村上春樹とハルキムラカミ―精神分析する作家―』、小説集『歓待』、翻訳にクロード・シモン『農耕詩』、バルザック『サラジーヌ他三篇』、マルセル・プルースト『失われた時を求めて全一冊』(角田光代氏と共編訳)など多数。
- 本の長さ672ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2015/5/28
- 寸法14.8 x 10.5 x 2 cm
- ISBN-104102085025
- ISBN-13978-4102085028
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登録情報
- 出版社 : 新潮社
- 発売日 : 2015/5/28
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- ISBN-10 : 4102085025
- ISBN-13 : 978-4102085028
- 商品の重量 : 1 g
- 寸法 : 14.8 x 10.5 x 2 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: 本 - 54,877位 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について

著者の本をもっと見つけたり、似たような著者を調べたり、おすすめの本を読んだりできます。

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カスタマーレビュー
名訳です。精読したい人向けです。
日本からのトップレビュー
- 星5つ中5つ
憧れと現実の間に橋を架けられなかった女性の話
2026年8月10日に日本でレビュー済み夢見がちな田舎の平凡な主婦だったエンマは、あるとき華やかな舞踏会に参加します。そこで垣間見たきらびやかな世界に強く惹かれ、それまでの退屈な生活を次第に嫌悪し、「もっと華やかな人生を送りたい」と願うようになります。
しかし、その憧れを追いかけるうちに、不倫、借金、裏切りと次第に身を持ち崩し、最後には自死を選んでしまいます。
この物語、現代に置き換えると、Instagramで華やかな女性たちの生活を見て、「私も起業して月100万円!」などと憧れ、よく分からない情報商材に手を出したり、さらに不倫までして人生が崩壊してしまう主婦……みたいな話にも見えてしまいます。
もちろん時代も事情もまったく違いますが、人間の「今よりもっと素敵な人生を送りたい」「自分もあちら側に行きたい」という欲望そのものは、いつの時代にもあるのだなと思いました。
そして、その欲望を実現するためには、適切な形で行動に移すことや、誰を信頼するのかを見極めることがとても大切なのだと思います。ただ、それがなかなかできなかったり、欲望と現実の間で判断を誤ってしまったりする人もいる。そこが人間の難しいところなのかもしれません。
エンマは愚かなところもありますが、単純に「自業自得」と切り捨てられない、純粋さや脆さも持っているように感じました。だからこそ、読んでいて余計に心が痛みます。
19世紀のフランスを舞台にした作品なのに、SNS時代の現代人にも妙に身につまされるところがあって、意外なほど古さを感じない作品でした。
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通俗の極み
2021年6月4日に日本でレビュー済み現実によくある破滅を描いているようだ。表紙は魅力的だが、登場人物や台詞が混在していて、なんだか読みづらい小説だった。
シャルルは子供時代にいたぶられ、親の庇護で医者になり、結婚も親や農夫にあてがってもらった。いうなればボンボン育ちといっても良いだろう。2人目の妻エンマは浮気性かつ浪費家で、夫にしてみればこんなはずではなかったのが、知らぬ間に巻き込まれてしまった悲劇ともいえるだろう。原因は夫の妻に対する無頓着さともいえ、身から出た錆ともいえる。シャルルは名声のために執刀した手術も失敗し、薬剤師は勲章と権力になびく。浮気、借金、名声、自殺となにをとっても模範となるようなものはなく、その通俗的で非道徳的な内容を、当時はわいせつを表向きにして批判したのではないだろうか。実際に読んでみても、卑猥な表現は見当たらない。作者フローベールは「ボヴァリー夫人は私だ」と言った噂もあるらしいが、それはボヴァリー夫人の奔放さに憧れを抱いた証か。どう読んでも夫(シャルル)がフローベールだと思う。名作とは思えなかったが、しいていえばこの小説は現実がこんなに猥雑なものに溢れていることを気づかせてくれた。
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素晴らしい
2025年12月10日に日本でレビュー済みストーリーは,不倫,借金,自殺と,非常にきな臭い物語です。しかし世界文学の名著と言われるだけあって,人物描写や話の展開には惹きつけられるものがあります。主人公の愚かさが強調されて終わりますが,人の内面を深く掘り下げた小説です。とくにエンマが,追い詰められていく過程の表現は見事です。読破したあとの余韻もいつまでも続いており,もう一度読みたくなる衝動にかられます。翻訳は,最初は日本語としてある種の不自然さを強く感じていましたが,読み進むにつれ,次第に慣れました。訳者も言っているとおり,原文がそのような表現になっており,その独特な言い回しが,読者の感情移入に役立っているのだと思いました。
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なかなかのレアリズム文学
2024年6月19日に日本でレビュー済み内容はよくある平凡な不倫からの破滅というストーリーだった。自由間接話法から成る人物描写と、豊穣な風景描写は秀逸なレベルだと思う。優しい夫と子どもがいるにもかかわらず、現状の幸福に満足できないエンマはわがままなような気がするが、別の見方をすると死ぬまで我を貫く自立性の高い、強い近現代的な女性だとも解釈できると思う。人間は常に現状に満足できないで、一生その答えを探求する宿命なのかなと感じた。訳者の詳しい解説も満足した。
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名訳
2025年7月8日に日本でレビュー済みとてもいい訳です。
原書で何度も読過していますが原文のタッチを的確に伝えています。
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訳語の問題
2024年3月15日に日本でレビュー済みこの芳川氏の翻訳では、フランス語原文に現れる"félicité" と "béatitude"が、ともに「至福」と同じ日本語で翻訳されている。これは、『ボヴァリー夫人』の作品解釈上、致命的な問題である。というのも、原文のこの2つの異なる単語は、エンマの意識・思考・感情・行動の本質に関わるキーワードであるからである。"félicité" と "béatitude"をともに「至福」と訳してしまうと、主人公エンマが抱く感情や思考の違い、そこから生まれる彼女の行動の意味が全く理解できなくなる。その結果、読者は、フローベールがこの2つの単語をあえて使い分けている創作上の意図や工夫を捉えられなくなるだろう。そのあたりの訳語の問題を考慮したうえで、改訳していただきたいと思う。
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とてもいい翻訳でした
2024年9月20日に日本でレビュー済みボヴァリー夫人を読んだのはこれがはじめてですが、本書の見事な翻訳からフローベールの達筆ぐあいがうかがわれます。150年も前のフランスが舞台なので、文章から想像できないシーンも多々あったのですが、おそらく、原文からして、そもそもわかりにくいのだろうと推察しています。翻訳を担当された芳川氏は解説で次のように書かれています。「『¬ボヴァリー夫人』の文章に小説家がどれほど心血を注いだものか実感するにつけ、私はできるかぎり原文を忠実に訳そうと思いました。少なくとも、フローベールが打った文のピリオドの位置を変えない、と心に誓ったのです。翻訳でも、句点を同じ位置に打つ、原文を勝手に切ったり、つなげたりしない、と決めたのです。ですから、ここに訳出されているのはフローベールの文の長さだとご理解ください」。たしかに、原文に忠実に訳されている気配を感じながら、読み進めましたが、読みにくということはありませんでした。ただ、当時の作風なのでしょうか、主語になる人が目まぐるしく変わるので、誰の行為なのか、ときおり、わからなくなりました。おそらく、これも味なのでしょう。
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Maughamが選んだ世界十大小説のひとつ、強烈なエンディング
2019年6月4日に日本でレビュー済みフロ-ベール(Gustave Flaubert 1821~1860)については、名前だけ知っていて、けれども「ボヴァリー夫人」や「感情教育」の名前を聞いたことがあるだけだった。Maughamは、『世界の十大小説』に「ボヴァリー夫人」を選んでいる。
あらすじはとっても簡単で、地方の医者の夫人となったエンマが浮気を繰り返し、その上借金を積み重ね、そして砒素による服毒自殺を遂げる、という内容である。
シャルル・ボヴァリーは地方の医者の息子で、父の跡を継いで医者となり、年上の女性を妻に迎える。ところがこの最初の妻は、やがて亡くなってしまう。シャルルは往診に訪れた富農ルオーの家の娘エンマに思いを寄せ、エンマの父の了解を得て再婚する。この頃のエンマの描写は、魅力に溢れている。ところがやがて地方での医者の夫人の地位にエンマは飽き足らなくなり、それは出席したある舞踏会で決定的となる。そしてエンマは、シャルルの深い愛情があるにもかかわらず、徐々に複数の男に近づいていくようになる。エンマはシャルルとの間にベルトと言う女の子をもうけたのだが、それもエンマを家庭へ引き戻すには十分な力を持たなかった。やがてエンマは借金を重ね、それは容易に返済できない額に膨らんでいく。或る日、薬剤師から砒素という強力な毒があることを偶然に知らされる。そして夫以外の男性との恋愛、差し押さえまで行われるほどに膨れ上がった借金を苦にして、砒素による服毒自殺を遂げる。
結論を申し上げると、非常に面白い、と言う訳ではない。エンマの死、特に断末魔、の描写が強烈で、もし小説の内容をそのまま映画にしたら、忠実に再現することが憚られるほど大変な水準であろう、と想像する。地方の医者の姦通事件を芸術に昇華した、と背表紙には書かれているけれども……。
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