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淫行条例

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

淫行条例(いんこうじょうれい)は、日本の地方公共団体が定める青少年保護育成条例等において、青少年との性的行為のうち、「淫行」「みだらな性交又は性交類似行為」「わいせつ」などを禁止し、処罰の対象とする規定の通称である[1][2]

条例上の規定は自治体により異なるが、最高裁は、条例上の「淫行」について、青少年に対する性行為一般ではなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと判示している[2]

概説

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「淫行」の定義等

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福岡県青少年保護育成条例事件最高裁判所判例によると「淫行」とは以下のことである。

…本条例(福岡県青少年保護育成条例)一〇条一項(当時)の規定にいう『「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきでなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為』をいうものと解するのが相当である。

けだし、右の「淫行」を広く青少年に対する性行為一般を指すものと解するときは、「淫らな」性行為を指す「淫行」の用語自体の意義に添わないばかりでなく、例えば婚約中の青少年又はこれに準ずる真摯な交際関係にある青少年との間で行われる性行為等、社会通念上およそ処罰の対象として考え難いものを含むこととなつて、その解釈は広きに失することが明らかであり、また、前記「淫行」を目にして単に反倫理的あるいは不純な性行為と解するのでは、犯罪の構成要件として不明確であるとの批判を免れないのであつて、前記の規定の文理から合理的に導き出され得る解釈の範囲内で、前叙のように限定して解するのを相当とする。…1985年(昭和60年)10月23日、最高裁大法廷

「広く青少年に対する性行為一般」を処罰対象とするわけではなく、「淫行」を対象にその解釈を限定することで、本規制を合憲とした。都道府県により限定にばらつきがあるが、この定義をもとに規定、運用がなされている[3]。最高裁が性行為を「淫らな性行為」とそれ以外に区別し、後者の例として、婚約中またはこれに準ずる真摯な交際関係にある青少年との性行為を挙げた点を特徴的であるという指摘がある[4]。「わいせつ」に関しても同様に「淫行」の限定解釈が及ぶことになるという見解がある[5]

最高裁は淫行に当たるかどうかについては、年齢差、出会いから性関係をもつまでの期間、その間の交際状況などを総合的に判断する必要があると示した。元裁判官の解説によると当事者間の年齢差が大きい場合ほど「淫行」該当性が肯定されやすく、歳の差の乏しい少年少女間の行為は、道徳的なものとは言えないとしても、自由恋愛の範疇と解されやすい。また初対面での行為や不自然・唐突な経過を辿る場合、「淫行」と判定されやすい。その他婚姻年齢や、真摯な交際関係の有無が重視され、保護者の了承や行為後の交際状況といった客観的事実が考慮される[6]

警視庁は、東京都青少年の健全な育成に関する条例18条の6について、「婚約中の青少年又はこれに準ずる真摯な交際関係」にある場合は除かれると説明している[7]

2023年の刑法改正(不同意わいせつ不同意性交等)により、いわゆる性的同意年齢は16歳に引き上げられた。刑法上の年齢要件に該当しない場合であっても、18歳未満の者との行為が青少年保護育成条例上の「淫行」に該当するときは、処罰され得る[8]。また、性的同意年齢はすべての性的行為から若年者を守ることから、絶対的同意年齢と呼ばれているのに対し、淫行条例など絶対的同意年齢ではないが、加えて若年者との性交の一部を規制、保護しているものは相対的保護年齢と呼ばれることがある[9]

罰則等

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違反行為について親告罪としている淫行条例は2006年現在存在しない。2005年の時点では、兵庫県青少年愛護条例のみがこれを親告罪としていた。

4県を除いた条例では、青少年を保護・育成の対象とし、その健全育成の責任は成人にあるとの考えから、未成年者による淫行行為を処罰の対象外としている。長野県では処罰ではなく教育やカウンセリング等で対応するとされている[10]。東京都青少年の健全な育成に関する条例30条は、「この条例に違反した者が青少年であるときは、この条例の罰則は、当該青少年の違反行為については、これを適用しない」と規定している[11]

都道府県により、刑6か月以上2年以下、罰金50万円以上100万円以下と幅がある[12]

主に処罰されているのは、(1)比較的短期間(数か月から2年程度の間)に複数の者に対して性犯罪を行っている。(2)性交・性交類似行為をするとともに、スマートフォン・デジタルカメラ等で撮影する等、児童ポルノ製造罪を行っている。(3)家出願望や自殺願望などがある子どもに対して、「誘惑し」て誘拐し、自己の支配下に置いて性的行為を行っている。(4)一定の地位・関係性において、性的行為を行っている。の4つのいずれかや、その他の事情が認められるという分析がある[13]

統計

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みだらな性交等[14]
検挙件数 検挙人数
2021 1,589 1,053
2022 1,486 1,061
2023 1,359 943
2024 773 528
2025 641 445

法的性質

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「淫行」の処罰を条例に委任する法令の規定がないため、自主条例の位置づけとなる。また、法令は淫行条例制定の主体を都道府県に限定していないため、市町村が淫行条例を制定することも可能である。

児童福祉法34条1項6号「児童に淫行を“させる”行為」禁止規定や少年法との関連

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淫行条例と、児童福祉法第34条1項6号「何人も、次に掲げる行為をしてはならない。…児童に淫行をさせる行為」との規定との線引きが曖昧になっており、「児童に淫行をさせる行為」は「児童をして自分自身と淫行させる行為」つまり「児童と淫行する行為」を含むことがある。なお、児童福祉法に言う児童も青少年と同じ18歳未満の男女を意味する。

東京高等裁判所の裁判例によると児童福祉法による「淫行をさせる行為」とは以下のことである。

…「児童に淫行をさせる行為」は、文理上は、淫行をさせる行為をした者(以下「行為者」という。)が児童をして行為者以外の第三者と淫行をさせる行為と行為者が児童をして行為者自身と淫行をさせる行為の両者を含むと読むことができる。…
…児童福祉法34条1項6号にいう淫行を「させる行為」とは、児童に淫行を強制する行為のみならず、児童に対し、直接であると間接であると物的であると精神的であるとを問わず、事実上の影響力を及ぼして児童が淫行することに原因を与えあるいはこれを助長する行為をも包含するものと解される。…

淫行をする行為に包摂される程度を超え、児童に対し、事実上の影響力を及ぼして淫行をするように働きかけ、その結果児童をして淫行をするに至らせることが必要であるものと解される。…」1996年(平成8年)10月30日東京高裁

つまりその自治体の淫行条例が限定的である場合、その自治体の淫行条例では検挙されない行為もこの規定で検挙されることがある。

この規定は後述する「長野県児童福祉法違反事件」で判例の解釈が大幅に変わって上記のように解されることが多くなった。それ以前は、「自分以外の第三者と児童を淫行をさせる行為」のみが基本的に対象であった。

また、児童福祉法の淫行罪は、少年法第37条の削除により地方裁判所の管轄となったが、加害者が少年(20歳未満)であった場合は家庭裁判所に係属することで定着している[15]。また、条例違反か児童福祉法違反かを問わず、児童淫行の加害少年(20歳未満)に関しては、少年法第61条の規定により実名報道は制限される。

事例

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  • 福岡県(福岡県青少年健全育成条例)では、青少年に対する「いん行又はわいせつな行為」が規制対象である他、「前項の行為(いん行又はわいせつな行為)を教え、又は見せてはならない」とされており、条文上、幅広い解釈の余地を残している。
福岡県青少年健全育成条例(旧称:福岡県青少年保護育成条例)
(いん行又はわいせつな行為の禁止)
第三十一条 何人も、青少年に対し、いん行又はわいせつな行為をしてはならない。
2 何人も、青少年に対し、前項の行為を教え、又は見せてはならない。
東京都青少年の健全な育成に関する条例
(青少年に対する反倫理的な性交等の禁止)
第十八条の六 何人も、青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行つてはならない。
なお警視庁は、東京都条例にいう「みだらな性交又は性交類似行為」について上述の福岡県事件の最高裁判例を参考にしたと思われる限定を行い、「青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいい、婚約中の青少年又はこれに準ずる真摯な交際関係にある場合は除かれる」としている[16]
  • 威迫・欺罔などによる淫行や金銭目的の売買春援助交際での性行為)のみを対象とする自治体もある[要出典]
  • 条例は基本的に属地主義を採用し、地方公共団体は「地域における事務(及びその他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるもの)を処理する」権能しか有しないため(地方自治法第2条第2項)、自らが住民票を置く自治体以外で「淫行」をし、その自治体においてそれが処罰されない場合、自らが住民票を置く自治体の条例で罰せられるという説もあるが、その適法性を安易に認めることについては地方自治法上の疑念がある[要出典]

制定の経緯・歴史

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  • 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(児童買春法)施行(1999年)以前には児童買春もこの淫行条例違反として検挙されていた。
    • 売春防止法第3条で単純売春(例:愛人や妾などが複数の者と同様の関係を結び対価を受け取る)や買春自体を禁止してはいるが罰則は規定されておらず、また同法第5条規定の罰則では出会い系テレクラ・街頭での勧誘等公衆の目に触れる形での勧誘などが処罰対象である。
    • すなわち、この児童買春法施行以前、唯一の売買春関連法令てある売春防止法には買春する側の男性に対する罰則がなかった。当時、児童福祉法においての「児童をして自分自身と淫行をさせる行為」は広く曖昧で運用上基本的に適用された例があまりなく、淫行条例のない自治体で児童買春をしても罰するのが難しい状況であった。そのため児童買春法以前の淫行条例に関する議論や、援助交際(買春)に対する罰則をより明確に規定した法律の導入を求める署名活動・陳情などは児童買春の問題が中心になりやすかった。
  • 淫行処罰規定は和歌山県1951年に青少年条例に導入したものが最初であるとされる[17]
  • 東京都(東京都青少年の健全な育成に関する条例)では、諮問機関である青少年問題協議会において淫行条例の導入が1988年と1997年の2度にわたり否定されており、また東京都の担当部局も1985年当時、朝日新聞の取材に対して「合意の上の性行為は処罰にはなじまず、取り締まりは現行の法規で十分である」としていた。そのため自発的な性行為や売買春ではない性行為を規制する条項がなかったが、2005年2月、「何人も、青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行ってはならない」とする改正案が都議会に提案され、自民・公明などの賛成多数で可決・成立した。
  • 千葉県(千葉県青少年健全育成条例)では、「売買春、威迫・欺き・困惑による性行為、周旋を受けての性行為」のみが規制されており、自発的な性行為を規制する条項がなかったが、2005年、「何人も、青少年に対し、威迫し、欺き、又は困惑させる等青少年の心身の未成熟に乗じた不当な手段によるほか単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められない性行為又はわいせつな行為をしてはならない」とする改正が行われた。
  • 東京都渋谷区は、当時児童買春禁止法がなく東京都青少年条例にも児童買春処罰規定がなかった1996年2月、淫行処罰規定を含む独自の青少年保護条例を導入する必要があるとしたが、結局導入されなかった[要出典]

反対意見

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福岡県青少年保護育成条例事件の最高裁判決においては、3名の裁判官(伊藤正己判事・谷口正孝判事・島谷六郎判事)が「福岡県の淫行処罰規定は違憲であり、被告人は無罪である」という趣旨の反対意見(少数意見)を述べている。

たとえば谷口正孝判事(当時)は、「青少年の中でもたとえば16歳以上である年長者(民法で女子は16歳以上で婚姻が認められている)について両者の自由意思に基づく性的行為の一切を罰則を以て禁止することは、公権力を以てこれらの者の性的自由に対し不当な干渉を加えるものであって、とうてい適正な規定とはいえない」としている。また女子の場合、婚姻可能年齢との矛盾も抱えている(ただし、2022年(令和4年)4月1日以降は、男女とも18歳以上で婚姻適齢となる(改正民法)。

学説上では、「淫行」という用語は意味が曖昧であり、恣意的な解釈が可能であるため、罪刑法定主義に反するとの批判がある。また、警察や司法が個人的な交際関係にまで立ち入ることで、個人のプライバシーを侵害する恐れも指摘されている。加えて、政府および国会が本来果たすべき立法責任を果たさず、地方自治体に判断を委ねた結果、条例ごとに法定刑構成要件が不均衡となっているほか、地方自治法第14条第2項に基づく罰則が限定的であるため、近年の厳罰化の要請にも十分に対応できないとされる。こうした制度的な限界を背景に、国(政府)による包括的な法整備を求める声も存在する[要出典]

なお、日本弁護士連合会は「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律案」及び「刑法の一部を改定する法律案に対する意見書」(1998年5月1日)において、「親・教師などによる対償を伴わない性的虐待」を処罰するための法整備をすみやかに行い、淫行処罰規定は全面的に廃止する必要があるとしている[18]

  • 2006年3月24日に18歳未満の少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれのある性行為を補導の対象とする、「奈良県少年補導に関する条例(平成18年奈良県条例57号)」が奈良県議会で自民・公明などの賛成多数で可決・成立した。本条例には、性的自由を著しく制限するものであるとの意見もあり、日本弁護士連合会にも反対の立場をとっている。

諸外国との比較

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一方、マサチューセッツ州を含む多くの国・地域では、16歳未満との性行為を制限する法律が存在している。もちろん、性行為に関する年齢制限、すなわち性的同意年齢(合意年齢・承諾年齢)は広く設けられており、この同意年齢は、本人が性行為の意味や結果を実質的に理解できるかどうかを基準として設定されている。

これに対し、日本の多くの淫行条例は、たとえ本人が性行為に関する一定の理解能力を有していたとしても、それが「みだら」なものである限り違法とする立場に立っており、その判断基準はより主観的・価値判断的であるとされる。

この条例に違反した者が16歳未満だった場合に対象となるのか、あるいは違反者が16歳以上だった場合に処罰の対象となるのかは条例によって異なり、必ずしも明確ではない。

加えて、日本ではこうした規制の多くが地方自治体による条例の形で制定されている一方、他の中華圏においては国家法レベルで一貫した規制が設けられている点が特徴的である。

たとえば中国大陸では、性交同意年齢は14歳とされているが、2013年の《性侵害未成年人犯罪に関する四部委意見》第27条において、14歳以上16歳未満の者が、14歳未満の幼女と性的関係を持った場合であっても、両者が年齢の近い関係にあり、情状が軽微かつ重大な結果をもたらさなかった場合には、犯罪とは見なさないとする、いわゆる两小无猜条款が設けられている[19]。 この規定は、幼女との性行為が一律に強姦罪に該当するとされる中国刑法第236条第3項に対する例外措置として位置づけられる。

中国香港では性交同意年齢は16歳であるが、加えて刑事罪行条例第127条により、18歳未満の未婚女子を親の意思に反して連れ出し、性交を意図する行為も犯罪とされており、違反者には最大7年の懲役が科される[20]

中国マカオでは性交同意年齢は14歳であるが、14歳以上16歳未満の未成年者の性的未熟性につけ込み性行為を行った場合、最大4年の懲役、重要な性的行為をした場合でも最大3年の懲役が科される可能性がある[21][22]

台湾中華民国)では性交同意年齢は16歳であり、未成年者同士による性行為については親告罪とされ、また刑罰の軽減や免除の規定もある(中華民国刑法第227条・第229条之1)[23]

このように、日本のように地方条例に委ねるのではなく、国が責任を持って包括的に性犯罪規制を行っている例が多い。その意味で、規制の体系性・全国的統一性という点では、海外諸国や地域に比べて日本の制度的課題が浮き彫りになっている。

実際、中国大陸や香港・マカオ・台湾、また米国の多くの州においては、性同意年齢や性犯罪の構成要件が国(または州)レベルで明確に法定化されており、「みだらさ」などの曖昧な価値判断によって処罰が左右されることは少ない。これに対し、淫行条例においては「みだらな性行為」の定義が曖昧なまま条例ごとに裁量的に運用されており、結果としてプライバシー性的自己決定権への過剰な介入につながる懸念が指摘されている。実証研究においても、青少年保護条例の施行が強制わいせつなどの中程度の性犯罪の発生率を有意に増加させたことが示されており、こうした規制が期待される抑止効果を持たないばかりか、逆効果をもたらす可能性があることが示唆されている[24]

関連する判例

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  • 福岡県青少年保護育成条例事件
    成人男性が交際中の当時16歳の女性と性的関係を持ったことが、「淫行」にあたるとされた。また「淫行」の定義について、上述の限定的解釈を行って有罪となった[25]。(1985年10月23日、最高裁)
  • 長野県児童福祉法違反事件
    中学校教師が自ら勤務する学校の女子中学生に対し、1995年3月25日被告の自宅において、同年4月30日飯田市内のモーテル(ちなみに当不動産物件は風適法に基づいて届け出た正規のモーテルではなく、営業禁止区域に立地する偽装モーテルである。)において、被告自らが予め購入しておいたバイブレーターを示し、操作方法を教示した上で、自慰行為をさせたことが、児童福祉法の「児童に淫行をさせる行為」にあたるとされた。(1998年11月2日、最高裁)
  • 愛知県青少年保護育成条例違反に問われた事例
    2007年5月23日、名古屋簡裁で飲食店副店長で妻子を持つ既婚男性が、アルバイト店員の女子高校生(当時17歳)と性的関係を持ったことで条例違反を問われたが、互いに恋愛感情を抱いていたことから「『淫行』に相当するというには相当な疑問が残る」として無罪判決が言い渡された。検察が控訴しなかったため確定。その後男性は賠償訴訟を国と愛知県相手に起こし、2010年2月5日に名古屋地裁は「2人は真剣に交際しており、被害届は男性側から金をもらえなかった親が主導して出していた。逮捕、起訴するだけの理由はなかった」として、被告双方に計200万円の支払いを命じた[26]。被告は控訴し、2011年4月14日に名古屋高裁は「真剣度の乏しい交際だった」「無罪判決が確定しただけでは違法にならない」と指摘し、原告の請求を棄却した[27]。原告の男性は上告したが、2012年3月28日に最高裁判所第2小法廷は2審判決を支持し、男性の敗訴が確定した[28]

各都道府県の淫行処罰規定

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各条例の名称や制定年月日は青少年保護育成条例参照。

各都道府県の淫行処罰規定
都道府県児童淫行に対する罰則児童に淫行を教示し、
またはそれを見せることに対する罰則
北海道2年以下の懲役または100万円以下の罰金1年以下の懲役または50万円以下の罰金
青森県2年以下の懲役または100万円以下の罰金6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金
岩手県1年以下の懲役または50万円以下の罰金30万円以下の罰金
宮城県2年以下の懲役または50万円以下の罰金30万円以下の罰金
秋田県1年以下の懲役または50万円以下の罰金20万円以下の罰金
山形県1年以下の懲役または50万円以下の罰金30万円以下の罰金
福島県6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金30万円以下の罰金
茨城県1年以下の懲役または50万円以下の罰金30万円以下の罰金または科料
栃木県1年以下の懲役または50万円以下の罰金同左
群馬県2年以下の懲役または100万円以下の罰金同左
埼玉県1年以下の懲役または50万円以下の罰金30万円以下の罰金
千葉県2年以下の懲役または100万円以下の罰金規定なし
東京都2年以下の懲役または100万円以下の罰金規定なし
神奈川県2年以下の懲役または100万円以下の罰金1年以下の懲役または50万円以下の罰金
新潟県2年以下の懲役または100万円以下の罰金6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金
富山県2年以下の懲役または100万円以下の罰金1年以下の懲役または50万円以下の罰金
石川県1年以下の懲役または50万円以下の罰金30万円以下の罰金
福井県2年以下の懲役または100万円以下の罰金1年以下の懲役または50万円以下の罰金
山梨県2年以下の懲役または100万円以下の罰金50万円以下の罰金
長野県2年以下の懲役または100万円以下の罰金規定あり・罰則なし
岐阜県2年以下の懲役または100万円以下の罰金同左
静岡県2年以下の懲役または50万円以下の罰金30万円以下の罰金
愛知県1年以下の懲役または50万円以下の罰金30万円以下の罰金
三重県2年以下の懲役または100万円以下の罰金10万円以下の罰金または科料
滋賀県6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金同左
京都府1年以下の懲役または50万円以下の罰金同左
大阪府6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金規定なし
兵庫県1年以下の懲役または50万円以下の罰金30万円以下の罰金または科料
奈良県2年以下の懲役または100万円以下の罰金30万円以下の罰金
和歌山県2年以下の懲役または100万円以下の罰金6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金
鳥取県1年以下の懲役または50万円以下の罰金20万円以下の罰金
島根県1年以下の懲役または50万円以下の罰金30万円以下の罰金
岡山県1年以下の懲役または50万円以下の罰金30万円以下の罰金
広島県1年以下の懲役または50万円以下の罰金50万円以下の罰金
山口県2年以下の懲役または100万円以下の罰金規定あり・罰則なし
徳島県1年以下の懲役または50万円以下の罰金30万円以下の罰金
香川県2年以下の懲役または100万円以下の罰金同左
愛媛県2年以下の懲役または100万円以下の罰金同左
高知県2年以下の懲役または100万円以下の罰金1年以下の懲役または50万円以下の罰金
福岡県2年以下の懲役または100万円以下の罰金1年以下の懲役または50万円以下の罰金
佐賀県2年以下の懲役または50万円以下の罰金1年以下の懲役または30万円以下の罰金
長崎県2年以下の懲役または50万円以下の罰金同左
熊本県2年以下の懲役または100万円以下の罰金1年以下の懲役または50万円以下の罰金
大分県2年以下の懲役または100万円以下の罰金1年以下の懲役または50万円以下の罰金
宮崎県2年以下の懲役または50万円以下の罰金1年以下の懲役または30万円以下の罰金
鹿児島県2年以下の懲役または100万円以下の罰金1年以下の懲役または50万円以下の罰金
沖縄県2年以下の懲役または50万円以下の罰金同左

大阪府における条例改正へ

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大阪府における青少年健全育成条例によると、相手(被害者となり得る青少年)を「威迫し、欺き、または困惑させて」(脅したり、だましたりしていた状況)という条件が付いていなければ、処罰対象外であった。立証への高いハードルが足かせとなり、淫行処罰規定による検挙数は極端に少なかったのである[29]。府は2019年(令和元年)12月に「大阪府青少年健全育成審議会の提言について」と題した発表を行い[30]、府民からの意見を募り[31]検討の上で、条例改正に至る事となった[29]

脚注

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出典

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  1. 三枝, (2017). “淫行条例と特別刑法 : 長野県淫行条例を契機として”. The Japanese Journal of Law and Political Science 53 (2): 33. doi:10.20816/jalps.53.2_33. ISSN 0386-5266.
  2. 1 2 最高裁判所大法廷判決 昭和57年(あ)第621号 福岡県青少年保護育成条例違反被告事件”. 最高裁判所 (1985年10月23日). 2026年5月21日閲覧。
  3. 三枝, (2019-03). “淫行条例の刑事法的検討”. 信州大学経法論集 6: 171–209. ISSN 2432-5376.
  4. 小坂, (2023-03). “罪刑法定主義とリスト理論 ―青少年保護育成条例における「淫行」概念をめぐって―”. 東洋法学 66 (3): 55–113. doi:10.34428/00014251. ISSN 0564-0245.
  5. 高橋省吾 著「福岡県青少年保護育成条例違反被告事件(最高裁判所大法廷昭和60年10月23日判決、昭和57年(あ)第621号)」、最高裁判所調査官室 編『最高裁判所判例解説 刑事篇 昭和60年度』法曹会、1989年、201頁。
  6. 杉本啓二 (1986). “青少年条例における淫行処罰規定と少年事件:最高裁昭和60年10月23日大法廷判決を契機として”. 判例タイムズ (586).
  7. 「淫行」処罰規定”. 警視庁 (2020年6月9日). 2026年5月21日閲覧。
  8. 若尾岳志「2023年の性刑法改正といわゆる「淫行」処罰規定」『獨協法学』第124号、2024年、145–180頁、2026年8月1日閲覧
  9. 小棚木, 公貴 (2024-03-25). 性犯罪の横断的研究 : 若年者を被害者とする性犯罪の研究を中心に.
  10. 三枝, (2019-03). “淫行条例の刑事法的検討”. 信州大学経法論集 6: 171–209. ISSN 2432-5376.
  11. 東京都青少年の健全な育成に関する条例”. www.reiki.metro.tokyo.lg.jp. 2026年8月12日閲覧。
  12. 三枝, (2019-03). “淫行条例の刑事法的検討”. 信州大学経法論集 6: 171–209. ISSN 2432-5376.
  13. 若尾, 岳志 (2024-08). “2023年の性刑法改正といわゆる「淫行」処罰規定”. 獨協法学 (124): 145–180. ISSN 0389-9942.
  14. 少年非行及び子供の性被害|警察庁Webサイト”. 警察庁. 2026年8月3日閲覧。
  15. 札幌家裁 昭和39年8月4日、神戸家裁 昭和53年5月26日
  16. 警視庁 (2016年3月31日). 「淫行」処罰規定”. 2016年7月18日閲覧。
  17. 守山正・後藤弘子『ビギナーズ少年法 第2版』成文堂 2008年
  18. 児童買春・ポルノ等禁止法日弁連意見書-エクパットジャパン関西のホームページ
  19. 四部门关于依法惩治性侵害未成年人犯罪的意见”. 2020年7月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年10月17日閲覧。
  20. 第200章 《刑事罪行条例》”. 2025年4月17日閲覧。
  21. “華僑報── 澳門法律絮論 有關對未成年人進行性侵犯的犯罪(下)”. 華僑報. 2005年7月22日. 2018年3月6日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2018年3月5日閲覧.
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関連書籍

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関連項目

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外部リンク

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