記号学
記号学(きごうがく、英: semiotics、独: semiotik、仏: sémiotique)は、記号の学問である。セミオロジー(semiologie)、セモロジー(semologie)など複数の名称が与えられてきたが、1962年のジョージ・ハーバート・ミードの提唱により、セミオティクス(semiotics)の語が定着した[1]。名誉革命期のイングランドを代表する哲学者ジョン・ロックでは、記号学[2](希: σημειωτική)である。
歴史
[編集]前史
[編集]論理学の祖であったアリストテレスでは、『政治学』では「言葉を持つ動物」として述語付けられた人間についての、近代言語学としての研究はほぼ見受けられない。近代的言語学に対する事前の本格的かつ批判的な研究は、フンボルトに始まる。論理学創唱の端緒は、プラトンの主著『国家』にある[3]。哲学における、現行の研究・教育体制、及び、哲学の通史での、論理学並びに言語学との連帯の序列は、ウィトゲンシュタインが『哲学探求』で解説した通り、アウグスティヌスが主張した序列である。
哲学とプラグマティズム
[編集]全ての記号学の、端緒とポテンシャルにおける到達点は、名誉革命期の哲学である。その中枢は、ジョン・ロックと将来的に『統治二論』を精神的な支柱に歴史的・地理的に活動を飛躍的に拡大する人々であった。その意味での哲学はロギケー(希: λογική)である[4]。今日のアメリカ合衆国に根差す記号学・哲学的実践者の最終的な段階とその挑戦を、大槻春彦は、医学用語に精通した人の見解に依拠して解説した[5]。
今日の細目
[編集]記号学はソシュールのセミオロジー(sémiologie)を指し、記号論はパースのセミオティクス(semiotics)を指しており、日本語ではそれぞれ記号学と記号論と名付けた[6]。
記号学(セミオロジー)は、フェルディナン・ド・ソシュールによる、記号表現 - 記号内容(シニフィアン - シニフィエ)の二項に基づく記号学である [7]。
記号論(セミオティクス)は、チャールズ・サンダース・パースによる、「表現、内容、指示対象」の三項に基づく記号学である[8]。
- パース記号論
- ソシュール記号学
- →「シニフィアンとシニフィエ」も参照
- ジュネーブ大学で前任者の退職で休止していた講義を、1907年からフェルディナン・ド・ソシュールが「一般言語学」[注釈 1]、彼の死後の1916年に彼の弟子たち、言語学的文体論を開拓したシャルル・バイイと統辞論に関心を向けたアルベール・セシュエ[13]、によってまとめられ『一般言語学講義』の題で刊行された。20世紀には、チャールズ・W・モリスが記号学を引き継いだ[14]。
フランスの構造主義哲学者・文学者ロラン・バルトは、『エクリチュールの零度』『モードの体系』でソシュール記号学を援用し、中世ヨーロッパ文化史研究者で文学者のウンベルト・エーコは『記号論Ⅰ・Ⅱ』を著した。日本では、浅田彰『構造と力 記号論を超えて』の異例の大ヒットと共に、ニュー・アカデミズムと呼ばれる思潮が起こり、「記号論」もにわかに注目を集めた。日本人による著作としては、池上嘉彦の『記号論への招待』や『詩学と文化記号論』、文化人類学者・山口昌男(東京外国語大学)の『文化と両義性』などがある。
主な記号学者
[編集]- チャールズ・サンダース・パース - アメリカ合衆国。プラグマティズム。セミオティクスの創始者。
- フェルディナン・ド・ソシュール - スイス。ジュネーヴ学派。「現代言語学の父」、セミオロジーの創始者。記号の恣意性。
- ウンベルト・エーコ - イタリア。文化記号論。
- ロラン・バルト - フランス。フランス構造主義。
- クリスチャン・メッツ - フランス。映画記号学。
- アルジルダス・ジュリアン・グレマス - リトアニア、フランス。生成記号学(generative semiotics)
- ヤーコプ・フォン・ユクスキュル - ドイツ。生物記号学の創始者
- ルイ・イェルムスレウ - デンマーク。コペンハーゲン学派。言理学。
- チャールズ・W・モリス - アメリカ合衆国。行動主義者。
- マイケル・シルヴァスティン - アメリカ合衆国。
- ジュリア・クリステヴァ - ブルガリア、フランス。
- ユーリ・ロトマン - ソビエト・ロシア。タルトゥ=モスクワ記号学派。
日本
[編集]脚注
[編集]注釈
[編集]- ↑ として再開するにあたって、講義のために準備できた時間は短期間だった。
- フェルディナン・ド・ソシュール 著、前田 英樹(訳・注) 編『ソシュール講義録注解』法政大学出版局〈叢書・ウニベルシタス〉、1991年。 p.vii
出典
[編集]- ↑ 『記号学小辞典』同学社、1992年11月1日、34頁。
- ↑ 『哲学 原典資料集』東京大学出版会、1993年2月25日、126頁。
- ↑ プラトン『国家』四巻十二章 (436b)
- ↑ 『人間知性論 四』岩波書店、1977年8月16日、445頁。
- ↑ 『人間知性論 四』岩波書店、1977年8月16日、443頁。
- ↑ 記号学 artscape.jp 2024年3月1日閲覧
- ↑ Semiologie papers.ssrn.com 2024年3月4日閲覧
- ↑ C.S. Peirces semiotics medium.com 2024年3月4日閲覧
- ↑ Peirce, Charles Sanders. 1998 [1902]. "Logic, Regarded As Semeiotic," [manuscript L75] Arisbe: The Peirce Gateway, edited by J. Ransdell.
- ↑ Peirce, Charles Sanders. 1998 [1902]. "On the Definition of Logic." [memoir 12]. Arisbe: The Peirce Gateway, edited by J. Ransdell.
- ↑ “È morto lo scrittore Umberto Eco” [The writer Umberto Eco is dead] (italian). Corriere Della Sera Online. 2024年6月5日閲覧。
- ↑ “Umberto Eco, Italian author of 'The Name of the Rose,' dies at 84”. ロイター (2015年2月20日). 2024年6月5日閲覧。
- ↑ H. A. スリュサレーヴァ 著、谷口 勇(訳) 編『現代言語学とソシュール理論』而立書房、1979年。 p.35
- ↑ Charles Morris www3.nd.edu 2024年3月4日閲覧