未完成婚・セックスゼロで母になる!?#33 夫へ渡す、はじめての手紙②
だいぶ間があいてしまったが、「未完成・セックスゼロで母になる!?」の回顧録の続き、現在は2026年1月だが、これは約1年前の2025年2月のこと。
夫と一緒に暮らして10ヶ月の新婚だが、膣性交ゼロの未完成婚
好きという感情はあっても性欲はない、ロマンティック・アセクシュアル気味な夫と、成田離婚寸前からの再構築中
性欲ゼロの男性不妊の夫と、性欲多めの当時39歳の私が、挿入セックスなしのまま、妊活を始める!
⬇️前回からの続き
膣性交ゼロのまま、はじめての採卵を経験し、その後の体調不良のときも夫から「大丈夫?」のひと言もかけてもらえず、私は心身ともに限界を越えた。
「一度も性行為が成立していないまま体外受精をはじめて、とても辛い」と義母へカミングアウト、病院でのカウンセリングも受けて、夫へはじめて手紙を書いた。
夫からの返事は、「回答は冷静に考えて文章でまとめますので、しばらくお時間ください」とのこと……
嫌な予感しかしない……
夫から抱きしめてくれたのは、あれが何回目だったろう……4回目くらいだったろうか………
性欲のない夫は、セックスは当然ながら、キスも抱きしめることも、自らしてくることがなかった。私がどんなに頼んでも………
そんな夫が泣き腫らした目で、自ら私を抱きしめてくれた。とてもうれしかった。
でも……思いの丈を込めた渾身の手紙を渡しても、それを読んだ夫が自ら私を抱きしめてくれても、不安が沸々と沸いてくる。
『夫が冷静に考えてまとめた回答』の中身に、なんとなく予想がつく。
『夫婦のコミュニケーションとしてのセックスは必要ない』
『自分は、セックスしたいと思わない』
『セックスなしで子供を作ることに、違和感も疑問もない』
『離婚が悪いこととは思わない』
今まで、何度も言われてきたセリフ………
頑固な夫は、自分の意見を決して曲げない。
成田離婚寸前から再構築し、何度も何度も話し合い、挿入ナシでもセックスのようなことがどうにかできて、不妊治療をやっとスタートさせて………
それでも、夫の意見はあれからまったく変わっていないだろう。
また、あのセリフを聞かないといけないのか?
夫の意見を、また受け止めないといけないのか?
それでは、夫とまったく違う考えである、私の意見や思いは、いったいどこへ向ければいいのだろう……一生、我慢し続けるしかないのだろうか……
絶望がまた広がっていく……
手紙を渡して迎えた休日、心の中は不安でいっぱいだったが、表面上は穏やかに過ぎていった。久しぶりに外食もし、おいしい料理に満足し楽しい時間も過ごした。
帰宅してしばらく経った頃だろうか、夫が言った。
「回答は、冷静にまとめて書くから待っててね。できれば今度から、溜め込む前に言ってほしい。」
溜め込む前に言ってほしい、だと!?
……ここで、私の中の何かが弾けた。
「言ってどうなるの?私が自分の意見を言っても、跳ね返されるだけじゃない。」
「え…?」
「私は、ずっとずっと、自分の思いも希望も伝え続けてるよ!
『新婚旅行の前に、ちゃんと夫婦になりたい』って言った。叶わなかった。
『一度のセックスもないままに、人工的に妊娠するのは本当は嫌だ。辛い。体外受精の前に、ちゃんとセックスしたい。』って言った。叶わなかった。
私は、最初から自分の思いをずっと伝え続けているけど、何一つ叶わなかった。
私の願望が、尊大で特殊なものだとも思わない。ごく当たり前の、普通の願いだと思う。
私の希望を叶えようとするために、あなたが努力してくれてるのもわかってるけど、その努力が本当の最大限の100%の努力であったとも感じない。」
夫が、目からウロコが落ちたような顔をした。
「……希望を叶えられなくて、そこは申し訳ないと思っている。」
夫が、謝ったーーー!!!!
録音してぇーーーー!!!
もう言う!!言いたかったことを言う!!!
もう止められない!!
「私が、どんなに自分の気持ちや希望を伝えても、あなたからは私が想像もしていないような答えが返ってくるの。
あなたのその答えを、私は受け止めるだけでいっぱいいっぱいで、そして私の希望は叶わない。
私は自分の本意ではまったくない結果を受け入れて、我慢し続けてる。
私は、結婚してからずーーーーーーっと我慢してるの。
私の気持ちも意見も、斜め上から降ってくるあなたの意見に跳ね返されるの。
言う意味あるの?言っても、私の願望は叶わないのに。」
夫が愕然として、頭をかかえた。そして、遠くを見ながら言った。
「それで、未来を明るく感じるの?」
!?!?!?
息が詰まった。
あぁ……
こうして、突然理解して、鋭いことを言ってくるのだ、この人は……
明るい未来を想像できない……
一度のセックスもないままに、子供ができた未来、子供ができない未来………
どちらを想像しても、真っ暗だ……
私のそんな気持ちを、夫にわかってもらいたい。
そう心から思っていたのに………
「んあ〜〜〜、いや、まぁ、そこまでは〜〜……」
なんとも歯切れの悪いセリフが、口をついて出てくる。
夫からいざ、「未来を明るく感じるの?」と言われたときに、「いいえ」という言葉がすぐに出てこなかった……我ながら、なんてお人好しなんだろう!?
「いや、未来を明るく感じてないよね!?」
夫が畳みかける。
あぁ、もう誤魔化せない……。
「うん。明るい未来を想像できない、ずっと」
夫がフリーズした。
そこに浮かんでる表情は、まさに『絶望』
結婚してからずっと、私が感じているもの……
夫にわかってもらいたいと、ずっと思っていた、私の感情。
それなのに、今、私に広がるのは言いようもない罪悪感……なんでこうなるのだ!?
重苦しい空気が流れる。
何かを言わなければっ…!!
「もう、わかってるよ。あなたがアセクシュアル気味で、性欲がなくて、好きという感情はあってもセックスをしたいと自らまったく思っていないこと…
わかってる、だから聞きたいのはそんな言葉じゃない。」
「え………?」
夫が、絶望に加えて混乱した顔をしている。
「私はあなたとは違うの。あなたと全然違う、考えと感情を持ってるの。
私は夫婦間のコミュニケーションとしてセックスは必要だと思っているし、体外受精でしか子供を授かれないとしても、子供が2人が愛し合った結果のものだと感じたいから、セックスが必要なの。
私のその気持ちや意見を否定しないで、『わかった』って受け止めて欲しい。」
夫が混乱している。
私は言葉を続けた。
「あなたが自分の意見をまとめて伝えようとしてくれてて、ありがとうと思ってる。その意見も聞かなきゃいけないと思ってる。
でも……あなたの意見を聞くと、私はまた傷ついてしまう。すごく恐い……。
『セックスが必要ない』って言われることは、『あなたを抱く必要がない』って、言われてるのと同じだから、自分を拒否された気持ちになる。すごく辛いの………もう聞きたくない。
わかってるから………あなたのその考えは何も変わってないこと、わかってるから。もうその言葉は言わないで……申し訳ないけど。」
「でも……!!私にはセックスは必要ないけど、フラミンゴさんとしたくないとは思ってない。拒否はしないよ。」
「それって、私が頼むから『仕方なく対応してる』っていう風に聞こえる。」
「えぇ!?そんな……」
「あのね、もう結婚しちゃったからには、私のセックスの相手は、原則あなたしかいないのよ。
夫婦になったからには、セックスの相手は夫婦同士しかないのよ。日本の法律がそうなってんのよ。だから、不倫したら裁判になって慰謝料が発生するんでしょ?
そのもはや唯一のセックスできる相手から、『セックスは必要ない』なんて言われたら、『妻であるあなたとセックスする必要はない』と言ってるのと変わらないでしょう?『拒否された』としか思えないのよ。」
夫が愕然している。
夫は、今まで自分が言った言葉で私が傷ついてるなんて、思ってもいなかったんだろう。
「自分が無意識に発言した言葉で、人を傷つけていたなんて知らなかった……もう、恐ろしいな……」
私たちは、違うのだ。
本当に違うのだ。
こんなに違う私たちが、本当に夫婦としてやっていけるのだろうか………
この問いの答えは、いまだにわからない。
「これってね……『男脳』と『女脳』の違いでもあるよ。基本的に、男脳は論理、女脳は感情って言われてんのよ。
私はね、申し訳ないけど、あなたの論理的な意見や考えを、今求めてないの。
『セックスが一度もないままに体外受精をしている』この現状が、とても辛くて悲しくてしんどくてたまらない!
この私の気持ちをわかってほしい。」
「そういうこと!?!?私は、ともかく誠実に対応しなきゃ、と思って!誠実に対応するってことは、自分の意見をきちんと考えて答えることだと思うから!
だから誠実に、誠実にって………!!」
あぁ…………なるほど、だからか………
私がどんなに思いを伝えても、自分の意見を繰り返す夫………
それは、夫がより誠実に応えようとしていたからにすぎなかったのだ。でも、私はその夫の意見を聞くたびに傷ついていた。
誠実に誠実に、と夫が考え抜いて出した言葉に、私がさらに傷つく、そしてまた我慢と悲しみを重ねる…なんというすれ違いと負のループ!!
「そっか………誠実に、って思ってくれた結果だったんだね、ありがとう。」
誠実に誠実に、そう思って行動してくれていた、夫のそういう真面目なところは、とても好きだ。だから、こうしてまだ一緒にいるんだろう。
「でもね、今回はちょっともういいかな……あなたの意見はわかってるから。それを聞けるほど、私には余裕がない。
本当に辛くて悲しくてしんどくて、どうしようもない。この私の気持ちを受け止めてほしい。」
「……わかった。
あぁ〜〜〜〜!!本当に難しいな!
どうしても、意見と解決策を言ってしまう!」
「まぁ、それが必要なときもあるんだけど……
今回は、もうすでにわかってるから、改めて聞くのもしんどい状態だし…
感情を受け止めてもらいたいときは、前もって言うね。『これから、私の感情を話します。ただ聞いてください』って。これならいい?笑」
「うん、そうしてほしい!!!」
絶望していた夫の顔が、和んでいった。『女心がわからない、難しい!』と言う夫と笑った。
最後に、夫が心底言った。
「危なかった…!本当に危なかった!!メールを送らなくてよかった!!」
私の予想通りの内容を書いていたのだろう…
「でも、あなたの意見を聞くことも大事だから、送ってもらってもいいよ?」
一応、しんどいことを覚悟の上で聞いてみた。
「いや、もういい。読まなくていいよ。」
相手の意見を聞くことが大事なことはわかっている。でも、こんな話合いもせずに、夫の意見をもろに受け取っていたら………もう本当にダメになっていたかもしれない。
そのくらい、私の心身は崩壊寸前だったのだ。そして、私がどれだけ崩壊寸前になっているかが、やっと夫に伝わった、と感じた。
夫が『危なかった』と、心底言った……
夫もまだ、終わりにしたくなかったらしい。
夫婦が終わりになる、何度も何度もその寸前になりながら、ギリギリで繋ぎ直している。
あれから、ほぼ1年たった今振り返ると、この話し合いはとても重要だったと感じている。 夫は、これ以降の採卵の付き添いを自ら申し出るようになり、ホルモン剤による私の体調不良を前よりも気遣ってくれるようにもなった。
もし、また何か、本当にヤバい状態になったときは、手書きの手紙を送ることにしようと思う。
そして、自分がされてうれしかったこと、あなたのどんなところが好きかという感謝の手紙も、年一回は送ろうと思う。
ヤバいことだけでなく、いいことも……
このデジタルの時代だからこそ、夫婦という最も近い関係だからこそ、手書きの手紙が思いを伝える手助けをしてくれる気がする。
