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未完成婚・セックスゼロで母になる!?#32 夫へ渡す、はじめての手紙①

夫と一緒に暮らして10ヶ月の新婚だが、膣性交ゼロの未完成婚

好きという感情と性欲が結びつかないロマンティック・アセクシュアル気味な夫と、成田離婚寸前からの再構築中

男性不妊の夫と、当時39歳の私が、挿入&射精セックスゼロのまま、妊活を始める!

⬇️前回からの続き


皮膚科の受診が終わり、ファミレスへ。

ドリンクバーと、辛党の私にしては珍しくスイーツを注文した。お手拭きで軽くテーブルを拭いてから、100円ショップで買ってきた、レターセットを広げた。

オレンジ色から明るい青へのグラデーション、夜明けをイメージさせる、雲が浮かぶ空の写真のレターセットだ。

いったい何度、布団の中で1人で泣いた夜があっただろう……ここ最近も、夜は1人布団の中で泣いている。ずっと心は真っ暗だ。

どうか、どうか、この夜が明けますように……

レターセットの夜明けの空を見つめた。

ブラックコーヒーを飲んで気合を入れてから、昨夜義母との電話のあとに仕上げた、夫への手紙の下書きを開いた。

全部で2400字の長い手紙となった。

ホルモン剤を自己注射していたこの1月、肉体的にも精神的にも、とても辛かったです。

私の本当の願望は、夫婦生活(セックス)を持った上で、妊活に取り組むことでした。でもそれは、叶いませんでした。

この1回目の体外受精で成功してしまえば、私たちは一度のセックスもないままに子供ができてしまいます。統計的に見ても、妊娠中にも産後にも子育て中にも、セックスはない可能性が高いです。子供がいたとしても、結婚して3〜4年たっても1度もセックスがない結婚生活で、私は本当に幸せになれるのだろうか…

また逆に、子供を授かれずに諦めることになった場合、セックスが1度もないままに不妊治療に挑み続けた数年後に、本当に夫婦2人だけで楽しく生活していけるのだろうか…

子供ができた未来、子供ができなかった未来、その2つを想像しながら、不安と悲しみが増していき、涙があふれてくることが何度もありました。

加えて、全身麻酔の採卵の付き添いの申し出もなかったこと、採卵後の発熱にも労りの言葉がまったくなかったこと。不安と悲しみに耐えながら、一度のセックスもないままに不妊治療に挑んでいた私にとっては、さらに深く傷付く出来事の数々でした。


不妊治療をしながら、夫婦生活の改善に取り組みたいのが、今の私の望みです。

もはや、セックスにより妊娠できる可能性は限りなくゼロの中で、ED薬を処方してもらったのは、夫婦生活を改善しようという、あなたの前向きな気持ちの表れだと思っています。ありがとう。

私は、子供ができてもできなくても、あなたとずっと仲良く暮らしていくことを、心から望んでいます。あなたのことが大好きです。

2人でずっと仲良く暮らしていくために、この手紙を書きました。私とあなたが、いつか心から幸せだと思い合える夫婦になれるよう、精一杯の努力をしていきたいと思っています。どうかこれからも、よろしくお願い致します。

辛くてたまらない気持ちや、溜め込んでいた自分の要望を伝えながらも、感情的にならないように努めた。

そして、夫への感謝と「好きです」という言葉を書いた。

頑張って、書いた。


内心、腸が煮えくり返るほど、腹が立っていたけれど!!!!

◯ね!!◯◯◯ヤロウ!!と叫びながら、枕を殴っていたけれど!!


この激しい怒りの向こう側には、夫から好かれていると思えなくて辛い、すなわち、私が夫のことを好きである、という感情があることは、学習済みだ。

好意はストレートに伝えなければ伝わらない…
これ以上のすれ違いは、もうごめんだ。


何度も読み返した下書き、言葉を選びながらも、自分が今、夫に伝えたいことのほぼすべてを手紙に込めた。

最初は少し震えていたボールペンを持つ手も、手紙を書き終わる頃はしっかりしていた。


夫の帰りは相変わらず、今夜も遅い。

リビングにある夫の仕事机の上に手紙を置いた。
黒い机に、オレンジからブルーのグラデーションの空の色が映えた。

夫がいくら目が悪くても、この手紙に気づくだろう。

2階に上がって、自分の寝室の布団へ潜り込んだ。ずっしりとした重みと不安……すぐにでも眠れそうな疲労感なのに、まったく寝付けなかった。


深夜1時頃だったろうか、玄関の鍵が開く音がして、夫が帰ってきた。

思わず、耳をすます。

リビングの扉を開ける音、荷物を床に置く音、クローゼットの扉を開けて着替える音……そして、生活音が止まり、無音な時間が続いた。

あぁ………きっと今、手紙を読んでいる……
たまらずに、手で顔を覆った。

半泣きで布団の中で何度も寝返りを打っていたら、スマホが震えた。夫からのメッセージだ。

『お手紙で伝えてくれてありがとうございます。こちらも冷静に落ち着いて文章にまとめてメールで回答したいと思いますので、1 〜2日お時間ください』

………………おい、業務報告かよ
………………私は同僚かよ?(笑)

相変わらず夫らしいな、とふっと笑いながらも、どんな回答が戻ってくるのかと考えると、さらに心が真っ暗になった。

夫の回答は、私の求めている言葉ではないだろう。いつも予想外の言葉が返ってきて、衝撃を受ける。私は、またぐちゃぐちゃになった心で、予想外の夫の言葉を受け入れるハメになるのだ。

これまでも、ずっとそうだった。
きっと、私はもっと苦しむことになるだろう。

私が欲しいのは、夫からの冷静な回答なのだろうか………

モヤモヤしてるうちに、気がついたら眠りに落ちていた。



眠りが浅かったのだろう、寝たのは遅かったのに6時前に目覚めてしまった。

ぼんやりした頭で、昨夜の夫からのメッセージを見つめた。

私が求めているものは、なんなのか………
意を決して、夫への返信を打った。

『わかりました。メールでの回答も待ちます。
あなたも私とずっと仲良く暮らしていきたいと思ってくれているのなら、メールよりもまず先に、あなたから抱きしめてもらえたらうれしいです。

あの黒い椅子から立ち上がり、あなたから私に近寄り抱きしめてもらえたら…私は、ただそれだけでもうれしくなれるんです。』

涙がまた、ぽたっと流れ落ちた。

夫がアセクシュアル気味なことは、もうわかっている。今までもこれからも、夫から私を求めることはないとわかっている。

性行為が成り立つ前に、人工的に子供を作ることに、夫がまったく違和感も不安も持っていないこともわかっている。

でも、私は夫と真逆の考え方と感情を持っている。

もうこれ以上、私たちの違いを露わにしたいわけじゃない……


私のこの悲しくて不安で辛い気持ちに気づいてもらいたい

あなたから私を抱きしめてもらいたい


それが、私の願いだった。


鬱々とした気持ちを晴らすように、激しめロックを流しながら、キッチンで晩ごはんの仕込みをしていた11時頃、夜型の夫が起きてきた。

「おはよう」

「…おはよう」
夫の顔を見ず、フライパンを見つめながら挨拶を返した。

夫が私の背後に回った。
後ろから、夫が私を抱きしめた。

涙がにじんで、フライパンがボヤける…

「あぁ〜〜……なんで…………一緒にいるのに……」
夫が言った。夫も泣いていたのだろう、泣いた後とわかる赤い目をしていた。

好きだから一緒にいる、好きじゃなければ一緒にいない、夫の考えはとてもシンプルだ。

わかるけど……でも、それだけじゃダメなんだよ…
恋愛は、結婚は、そういうわけにはいかない……。

「でも、私は友達じゃないよ…今の生活は、私は夫婦だとは思えない。セックスが一度もなくて一緒にいて、友達と夫婦の違いって一体なんなの?私は、あなたの友達じゃない……」

「私も友達だと思っていないよ…」

じゃあ、なんなのだ?友達と夫婦の違いは、なんなのだ?

その問いには、夫は答えなかった。
私の好きなバンドの激しめロックが流れている。

「……グーパンで殴られるかと思った。」


はははっ!わかってるじゃないか!
採卵のあとに高熱出したのに、あなたから『大丈夫?』すら言われなかった夜は、ひたすら悪態をつきながら枕を殴ったわ!!!!

そしたら、すっげースッキリしたの!!こんなに気持ちいいなら、ボクササイズジムにでも通おうかと検索までしたわ!!サンドバッグをあなたに見立てて、思いっきり打ち込むの!!最高のストレス解消だわ!!!

(妊活中のため諦めた、残念!!!)


「殴ってやろうか?お望み通りに、グーパンで?」
笑いながら、私は言った。予行練習はバッチリだぞ?

「いや、やめとく……本気で殴られそうだから」
夫は笑った。

当たり前だ。やるときは本気だ。

「この曲が終わるまで、このままでいるね。」
夫が私をしっかりと抱きしめた。

「…………うん、ありがとう。」

抱きしめ合うのにまったくふさわしくない、激しいラウドロックが流れている。イケメンのボーカルが、シャウトしている。

どうやら私の気持ちは、少しは夫に伝わったようだ。


和やかに昼食の時間が過ぎていった。夫は、私がすこぶる不機嫌で、ブチギレて張り倒されると恐れていたのだろう。

いや、マジでそうしたかったけど!!!!
できれば、枕ではなくあなたの腹にパンチを打ち込みたかった!!!


しかし、新婚旅行母子同室事件でめちゃくちゃにキレて離婚1秒前までいった経験から、私は学んでいた。こういうときは、キレたらいけない。

キレる源泉となる「悲しみ」を表現するのだ。


その方が、この男には効く!!!
伝えたい言葉も伝わる!!

これは私のしたたかな戦略なのだ!!
自分の欲しい未来をつかみ取るための手段だ!!

私が怒鳴らなかったことで、夫は心底ホッとしていた。何もかも顔に出ている。わかりやすい。

「回答は冷静に考えて、メールで書くから、待っててね。時間ください。」
夫は、また私に言った。


…………はぁ〜〜〜〜ん?

『回答』ねぇ……

そんなん、とっくに出てるやろ!

私と結婚生活を続ける意思があるならば


ED薬飲んで、セックスする!!

愛撫する!!勃たせて挿れる!!中に出す!!

お互いに気持ち良くなる努力をする!!


回答はとっくに出てるやろ!?簡単な答えだろ!

妊活しながらも、夫婦生活の改善に取り組みたいって書いたやろがーーー!!

やっぱりまだ伝わってないのか………??
セックスが一度もないままの結婚生活も妊活も、苦しくて悲しくて辛くて真っ暗なことが、まだ伝わってないのか…?

セックスは必要ないという夫の独自理論を、また私は受け入れないといけないのか…?


そんなに考えること!?
回答に悩むってことは、やっぱりできないってこと?したくないってこと……??

やっぱり…………

私たちは……………

どんなに頑張っても、お互いが好きでも


ダメなのかな………



夫から抱きしめてくれた、その貴重なぬくもりが、すっと冷えていった。







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