未完成婚・セックスゼロで母になる!?#26 激しい怒りの向こう側|カミングアウト前③
「未完成婚、性の不一致、子供が作れるのか」
という大きな問題の上に起こった、新婚&家族旅行の部屋割り事件…
毎日、「離婚」というキーワードが頭の中を支配し、夫のことがますますわからなくなった私は、藁にも縋る思いで、セックスレスカウンセリングの扉を叩いた。
新婚旅行母子同室問題の根本は、「一度も性交渉のない夫婦、未完成婚」にあると思ったからだ。
⬇️前回からの続き
夫に2人で受けたい、と一度お願いしたセックスレスのカウンセリング、1人で受けることになるとは思っていなかったのだが…
もう、夫のことがまったくわからなくなっていた。専門家の客観的な意見が聞きたい、と思った。
セックスレスのカウンセリングなんて、もちろん初めての体験だ。
初対面で、いきなりセックスの相談をすることに躊躇いがない、と言ったら嘘になるが、もう躊躇う余裕がないところにまで追い詰められていた。
私は、これまでの経緯を一気に話し倒した。
「自分が理不尽な状況に置かれている」ことを、第三者に訴えたい気持ちもあったと思う。
夫に性欲がないなんて、夫婦のコミュニケーションとしてのセックスは必要ないなんて、最初にわかっていれば結婚はおろか、お見合いすらしなかった。
「そんなこと聞いてないよ!なんで、そんな大事なことを黙っていたの!?ウソつき!!」
この言葉は、一緒に暮らしてからずっと炎のようにたぎっていた。
私の訴えを、カウンセラーさんは黙って聞いてくださった。一通り、話し終えた後で、カウンセラーさんはこうおっしゃった。
「セックスできていれば、部屋の問題でここまでこじれなかったでしょうね。セックスできていないことで、余裕がなくなったんです。
あなたは親思いの優しい方です。そして、ご主人もそうです。」
あぁ………………そうか、そうなのか…………
すっと肩の力が抜けるような言葉だったが、同時に虚しさと惨めさがこみ上げた。
どうして、夫は私を抱きたいと思わないのだろう……
私は一度も、夫から抱かれない女……
詳細は差し控えるが、未完成婚の原因と解決、男脳と女脳の違いによるセックスの捉え方を、カウンセラーさんから聞いた。
目からウロコの見解の数々だった。
私は、女性経験の少ない男性の気持ちや思考回路を、本当にまったくわかっていなかった。
自分の経験のなさを隠したい、男のプライド…
それを踏みつけず、フォローする対応ができていなかった。
もし、それが最初からできていたら…?
ここまでこじれなかったかもしれないが、それでもセックスできていたとは、到底思えなかった。
カウンセラーさんの見解は、「夫はアセクシュアルではない」ということだった。当時は、このセリフに救われるような思いもしたが、あれから1年経った現在、「夫はアセクシュアルのグラデーションの中に位置する」と、私は感じている。
最後に、カウンセラーさんに意を決して伝えた。
夫と義母の近親相姦を疑ってしまったこと、一連の流れの中で夫を男として見れない気持ちや、気持ち悪いという感情も生まれてしまったこと…
カウンセラーさんは、「それは、そうでしょうね。理解できます。」と言った。
「でも、ご主人はまだ何も知らないんです。セックスも、ふたり2人で過ごす時間も…知らないことで、起こった出来事です。だから、仕方ないと思い、次に進むしかない。それができるかどうか?ということだと思います。」
この一件を水に流して、次へ進めるのか…?
新しく得た知識や見解と、モヤモヤの晴れない心で、長い一日が終わった。その日は、なかなか寝付けなかった。
セックスレスカウンセリングの翌日、突然すうっと別の視点からの気付きが舞い降りた。
私があんなに怒ったのは、私があんなに傷ついたのは…
夫が私のことを好きじゃないと、夫にとって私が必要な存在ではないと感じたから…
それが理由で傷ついたのなら、私は夫が好きってことか…
夫を嫌だと、気持ち悪いと思ったのは、私の「夫が好きだ」という思いを、ないがしろにされたと思ったから…
強い怒りを感じたのは、夫へ好意を寄せる、私のプライドが傷ついたから…
そうか、私は夫のことが好きなのか!
なんで好きなのか、まったくよくわからんけど!
「好き」の対極は「嫌い」ではない。
「好き」の対極は「無関心」だ。
昨日のセックスレスのカウンセリングは、アセクシュアルもしれない夫を理解するカウンセリングではなく、私が夫をどう思っているかを知るカウンセリングだったのだ、と気づかされた。
あれは、私のカウンセリングだった。
その瞬間、一気に違う視界が開けた。
夫のことが好きならば…もう一度、やり直してみよう。
セックスの問題も、子供の問題も、解決できるのか、わからなかった。行き着くところは、結局やっぱり離婚かもしれない。
でも、まだ「やるだけやった」ところまでは行っていないことは、確かだった。
そう、まだ、やるだけやっていないのだ。
夫に、ありのままを伝えた。
セックスレスのカウンセリングを受けたこと。そこでわかったこと…
セックスレスの話し合いをした直後に、新婚旅行母子同室を提案され、「お前はいらない」と言われたようで心底腹が立ったし、深く深く傷付いた。
私が激しく怒り、深く傷ついたのは、あなたが好きだから。
性の不一致という大きな問題を抱えているけれど、なんだか理由はよくわからないけれど、私はあなたが好きらしい。
夫は、すぐさま「うれしい!!」と言った。
……この人は、私を抱きたいとも思っていないし、新婚旅行で夫婦二人きりの時間が完全にゼロでも何にも構わないけれど、私のことがどうやら好きらしい。
そんなことってある!?
なんなんだ、コイツは…??
こうなったら、言いたいことを全部言ってやろう!
そもそも、私はセックスのない結婚生活を望んだことは一度もないので、こんな生活は続けられない。
「あなたに性欲がないのなら、夫婦のコミュニケーションとしてのセックスは必要ないという考えなら、お見合いのときに言ってもらいたかった。そしたら私はあなたを選ばなかった。お互いに、こんな苦しみも生まれなかった。なんで、結婚前に言ってくれなかったの?」
「だって、わからなかったんだもん!!!」と夫は言った……
「なんでや!?そんなことわかっとけ!!思春期にゲームばっかしてたから、そうなるんだよ!あんたが自分のことをわかっていないせいで、結婚しちまったじゃねーか!どうしてくれんだよ!?」
言い返しつつ、呆れつつ、もう笑うしかなかった。
なんだよ、「わからなかったんだもん!!」ってその言い方!ちょっとかわいいとか思っちまったじゃねーかよ、コノヤロウ!!お子ちゃまかよ!!思春期迎えてない、幼稚園児かよ!!
本当に、なんなんだ、コイツは…!?
溜め込んでいた罵詈雑言を浴びせつつも、私たちの距離は、確実に縮まったと感じた。
出会って8ヶ月の遠距離お見合いスピード結婚。
まだまだお互いのことがわかっていない、言いたいことが言えない遠慮もあった。その遠慮という壁が、少し崩れ始めた。
この壁の向こうには、いったい何があるのだろう…
夫のことが、まだまだわからない。
「未完成婚、性の不一致、子供を作れるのか」
まだなにひとつ、解決していない。夫とどんなに話しても解決できるのか、まったくわからなかった。
セックスは必要ない、ずっとこれからもなくていい、と言う夫。
夫婦間のセックスは絶対に必要だ、ゼロなど考えられないと、と言う私。
話せば話すほど、お互いの違いが露わになる。相変わらず未来は見えず、真っ暗だった。「性の不一致」は、夫婦を続けていくには、あまりにも大きな問題だった。
それなのに、まだ、私たちは互いのことが好きなのだ。理由は、まったくわからない。
私は3週間の家出を経て、夫のもとへ帰った。
一緒に暮らして4カ月目を迎えた。
両家の母を交えての離婚寸前の家出騒動…当然、ふたりの間はぎくしゃくしていた。
それでも、日が落ちて日が昇り、毎日が続いていく。少しづつ会話が戻り、表面上は穏やかな日々がやってきた。
セックスレスのカウンセリングも、私の要望もあり二人で受けた。
セックスが夫婦にとって重要なことである、と考える人が多数派を占める。
このこと自体、私が夫に言っても伝わらなかったが、カウンセリングを受けセックスが夫婦間にとって重要だということ、「セックスレス=愛されていない」と女性が捉えることなど、夫にもある程度は伝わったらしい。
夫も、歩み寄りを見せ始めていた。
でも…私の中には、まだまだ怒りがくすぶっていた。
夫からも、義母からも、「新婚旅行母子同室」の提案に対する謝罪はなかった。
夫は、新婚旅行のときに私と2人きりの時間を欲しなかった。
母が希望したから、母が心配だから、という理由で、母子同室を了承した夫…
私よりも母を優先する夫、私よりも母が大事な夫、私よりも母が好きな夫…
夫と私のあいだを邪魔する義母…
当時の私は、そんな風にしか思えなかった。
夫とは、どうにかこうにかコミュニケーションをとっていても、離れて暮らす義母とは、あの一件以来、まったく連絡をとっていなかった。
新婚旅行母子同室を希望した、私と夫の時間を邪魔した義母への怒り、恨み、疑念…
「私たちは、いまだに一度もセックスできていません。私は、夫から『夫婦のコミュニケーションとしてのセックスはいらない』と、言われています。これから先、セックスできるのかもわかりません。
あなたがそんなんだから、息子はいい大人の男なのに、セックスもできないんですよ!子供が欲しいのにこの有り様、私は今39歳です。
私の人生、どうしてくれるんですか!?いったい、どうやって育てたんですか!?」
何もかも洗いざらい、ぶちまけてやりたい。
夫のことが好きだと自覚したがゆえに、ますます湧いてくる悲しみと苦しみ…
どんなに私が夫のことが好きでも、夫が自ら私を抱きたいと思うことはないのだ。
夫と義母への消化できない怒り、憎しみ、恨み、悲しみ、絶望は消えるどころか、またどんどん増していった。
