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未完成婚・セックスゼロで母になる!?#18 怒涛の人工授精!!

↓前回の婦人科受診からの続き

診察室に立ち込めていた気まずい雰囲気は、歯に衣着せぬ物言いの毒舌婦人科医師によって消し飛ばされていた。

私は、もやが晴れつつある気持ちで内診室に向かった。そして、内診中に驚くことを言われたのだ。


先生「あ……まさに今日か明日が、排卵日ですよ。」

私「えええええ!?」

私は、素っ頓狂な声をあげた。私は生理周期が乱れないので排卵日の予測もつきやすいタイプなのだが、今回は子宮内膜ポリープ手術のホルモン剤のために、生理周期が乱れていて分からなくなっていたのだ。

先生「人工授精するなら、明日がベストタイミングですね。どうします?人工授精やりますか?」

私「はい、やりたいです!無駄にしたくないんで!」

即答した。夫の意見は聞いてないが。一緒に暮らして9ヶ月目、すでに8個の卵子を何もせずに見送っている。それが、どれだけ悲しく辛かったことか……

もうこれ以上、1個たりとも卵子を無駄にしたくはない。子供を望む39歳の私の、率直な強い願望だった。

先生「そうですよね。では、人工授精の詳しい説明を診察室でしますね。」

私は内診室を出るなり、外で待っていた夫に報告した。

私「たまたま排卵日だった!明日、人工授精できるって!マジですごい!めちゃくちゃラッキーだ!」

夫「え!?」

まだ状況の飲み込めない、びっくりした夫と再び診察室に入った。エコー写真を見せながら、医師は再び言った。

先生「幸運でしたね、まさに排卵日ですよ。これが卵胞、大きくなってます。もう、今日か明日にでも排卵するくらいの大きさです。明日、人工授精するという流れでいいですか?」

私は、夫を見て言った。

私「人工授精したいんだけど、いいかな?」

夫「うん、いいよ。」

私「先生、お願いします!」

先生「それでは、人工授精の説明をしていきますね。」

今から、確実に排卵させるための注射を打つ。明日の朝、夫は採精し、私は採精カップを持って8:30までに病院に行く。人工授精をする他の患者さんと行程をそろえるために、時間は厳守!

採精された精子は精製するため、1時間〜1時間半くらい待ち時間がある。その後、細い管のようなもので、精製された精子を子宮の中に入れる。痛みはほとんどない。

処置の後は、感染を防ぐためお風呂なしでシャワーのみ、2日間抗生剤を飲む。あとは、普通に生活を送っていい。排卵後に調べたい検査項目があるため、血液検査の予約日も決めた。

すごい、すごい、すごい!!!
あれよあれよと、決まっていく。
進んでいる、確実に進んでいる!!!!

夫は、明日の早朝に精子を出さないといけないことを知り、不安そうな顔をしていた。夫は、完全なる夜型人間だ。寝るのはいつも、3:00か4:00。

私が8:30までに病院に着くには、7:30には家を出ないといけない。となると、夫が採精を開始するのは7:00ちょっと前くらいか……

ハードスケジュールである。その日は寝不足にもなるだろう。プレッシャーもかかるだろうが……
頑張ってーー!!としか言いようがない…

先生「人工授精の説明は以上となりますが、他に何か聞きたいことはありませんか?このあとは、もう一度、旦那さん側の泌尿器科の診察と、奥さんの注射の処置です。」

私たちのたくさんの質問にも、丁寧に答えてくださった。時間を急かされることも、一度もない。
そして何よりも、私が夫に伝えたかったことも言ってくださった。ありがたいこと、この上なかった。

待合室で少し待ってから、泌尿器科の診察室へと案内された。


先ほどの、ぽっちゃりとした漫画のキャラみたいな泌尿器科の先生が、早速おっしゃった。

先生「明日、人工授精になったんですね。よかったですね!明日に精液検査の結果もわかるので、今日は精液検査はいらないですよ。男性ホルモン値を調べる、血液検査だけやりましょう。あの…」

先生が一瞬、間を置いてから言った。

先生「申し訳ないけど、はっきり言いますね。精子の状態は良くないです。精子無力症です。

精子運動率13%という結果を最初に聞いたとき、ネットで検索した。それに当てはまることは、すでにうすうすわかっていた。

精子無力症……子供を望む人間にとっては、なかなかのパワーワードである。私から夫へは、伝えづらい言葉だった。医師という第三者が発言してくれたことを、ありがたく思った。

精子がゼロなんじゃない。希望はまだある。 

先生「精索静脈瘤の手術をすれば良くなるかもしれませんが…手術をすれば、絶対に良くなるとも限りません。明日の精子検査の結果を見てからにもなりますが、旦那さんの精索静脈瘤の手術をするかどうか、夫婦で話し合ってみてください。

それと、EDについてですが、不妊治療目的でしたら1年間だけ薬が保険適用になります。奥さんが不妊治療を開始したタイミングから処方すれば、そこから1年は保険が効きます。

夫婦にとって、とても大事なことですから、これも今後どうしていくのか、2人で話し合ってください。」

!!!!!!!!

先生が、夫婦にとって、とても大事なことって言った!!!!!


あの毒舌婦人科医が、泌尿器科の先生に伝えてくれていた。婦人科医は、「性行為がなくても子供はできるんです。夫婦で気持ちよくなりたいとか、仲を深めるために性行為をしたいなら、それは私たちの仕事ではなく心療内科です。」ときっぱりおっしゃっていたが…

ちゃんと伝えてくださっていた…
そして、泌尿器科の先生が大事なことって言ってくださった………

私は、泣きそうになるのを必死にこらえた。今まで何度も、私にとってセックスが大切であり必要なことを夫に伝えてきても、それが夫に理解されたと思えたことがなかった。

ここにきて第三者の、そして医師という立場からの言葉……強い味方を得たような気持ちになった。私はずっと、孤独を感じていたから……

夫「その薬は、今日いただけるんですか?」

病院嫌いの薬嫌いの夫……「薬を飲んでまで、セックスをする必要はない」そう言われそうで、私からはもう何も言えなくなっていた。

それが今、夫が薬を試そうとしている……

先生「薬を処方することはできるんですが、初診である今月は処方することができないんです。早くても来月からになります。

そして、保険適用になるのは最初に処方した日から1年間になります。毎月処方できるので、1年分の薬は保険適用です。なので、保険適用での処方を始めて1年経たないタイミングで、途中でやめるのはもったいないです。薬には使用期限もありますから。」

なるほど、不妊治療目的に限ってED薬を保険適用にするためのルールだろう。まったく知らなかった。

夫「わかりました。それから、何か普段の生活の中で精子運動率を上げるために、した方がいいことはありますか?」

一見、不健康そうに見える夫だが、栄養を気にして食事をしているからか、意外と身体は丈夫だ。夫らしい質問だった。

先生「基本的なことなんですけど、規則正しい生活、三食ちゃんと食べる、定期的に運動する、ストレスを溜めないってことですね。」

ランニングはしているものの、朝食は食べない、出社すると昼食は食べているかわらからない、常に締切に追われている完全夜型な夫が苦笑いした。

先生「それから…週に3回くらいはマスターベーションしてください。古い精子をずっと貯めておくと、精子によくありません。精子を出して、新しい精子を作る機能を活性化させてください。

ありがとうーーーー!!!!先生ーーーーー!!
それも、私が前に言ったやつーーーーー!!!!!


妊活アドバイザーの方が書かれた妊活の本を読んだら、「古い精子をため込んだままにしておくと、活性酸素が発生して精子がダメになる。2~3日に一回は精子を出して、精子工場を活発化させること。」と書いてあったので、それを夫に伝えたのだが…

「精子を出しすぎるとバカになるってネットで読んだ。出すと疲れて頭が働かなくなるから、あながち間違っちゃいないと思う」と言って、私のアドバイスは聞き入れられなかったのだ。

私が伝えた妊活アドバイザーの方の言葉よりも、誰が発したのかもよくわからない2ちゃんの言葉を、なんで信じるんだよ!?そんなに私の言葉が信じられない!?私のことバカだと思ってんのか!?コノヤロウ!

と、ぶちまけたい言葉を飲み込んで、心の中で吠えまくったことを、私は覚えている…

夫「あの…私、出すとものすごく疲れるんです。その日1日、頭がぼーっとして、仕事がしにくくなるくらいに…だから、ネットで『精子を出しすぎると、脳によくない』って読んで、そうなんだと思っていました。それは違うんですか?」

先生「それは、都市伝説ですね。むしろ、精子を出して、新しい精子を作るほうがいいとされています。」

ほらね!!!!お医者さんも言ってるだろうーーー!!!!ありがとう、先生ーーーー!!!心の中で再び吠えた。

先生「ただ…ごく稀にですね、自分の精液にアレルギーを持っている方がいるんです。その場合は、自分の出した精液に対するアレルギー反応で、とても体調が悪くなります。そこまでのようには思えないのですが…もし、本当に辛くてたまらないのであれば、ゆくゆく検査しましょう。1週間にせめて2回は出すようにして、しばらくは様子を見てください。」

私が夫に伝えたかったのに、伝えてきたのに、はねのけられていた言葉たちをお医者さんが言ってくれている…

うれしかった。本当にうれしかった。
悲しいけれど、私1人の言葉では、受け入れてもらえなかったのだ。

既婚者の友人たちもよく言っていた。
「私の言葉じゃダメだけどね、専門家とかが言った言葉だと、夫はすんなり受け入れるんだよね。私と専門家、同じこと言ってるのにね。なんでだよ!?って思うけど…夫ってそんなもんよ!男のプライドってやつ?」

イラっとする気持ちもあるが、この男の習性を理解してうまく立ち回ることが、夫婦円満の秘訣かもしれない…と今でも思う。

先生が再度、念押しした。
先生「次の診察までに、お二人が話し合うことは2つです。1つは、精索静脈瘤の手術をどうするか。2つ目は、EDの治療をどうするか。お二人でよく話し合ってくださいね。」

私たちは、うなずいて診察室をあとにした。
私の心は、夫と暮らし始めてから、一番晴れやかだったかもしれない。お医者さんの言葉の数々が、自分の味方に思えて救われた。そして、やっと妊活が大きく前進したのだ!!!!


翌日、私は人工授精をした。

夫の精子運動率は4.8%、前回の13%という数字よりも、もっと低くなっていた。精子の検査結果票には「性交障害」「射精障害」と印字されていた。

「私たちの未完成婚という状態は、医学的にはそう表記されるのか…」

病院の待ち時間に、ぼんやりとその文字を見つめた。

WHOの定める精子運動率の正常値は42%、今回の夫の精子運動率は4.8%、人工授精が成功するとは、とても思えない数値だった。

でも、私はうれしかった。

「夫の精子が、自分の中に入っている」

そう思うだけで、本当に心からうれしかった。足取りも軽やか、スキップしちゃえるくらいだ。何度も何度も、自分のお腹をさすった。

「今、私の中に、夫の精子が入ってるんですよーーー!!!」
そこら中の人に言って回りたい気分だった(もちろん、そんなイカれたことはしていない笑)。

人工授精の2日前に、「夫と愛し合った」と思えることもあった。「子供ができるようなこと」はできていないけれど、ワンチャン、「あの愛し合ったときにできた子なのね」と思えなくもない…まぁ…ちょっと無理あるけど…笑

数カ月前まで離婚寸前、子供ができたらできたときで、妊娠を焦る私のペースには合わせられない、そんなに焦って子供を作りないのなら、あなたの相手は私じゃないかもしれない…夫にそう言われ、子供を作ることにすらチャレンジできないかもしれない、と絶望した。真っ暗な未来に押しつぶされ、後悔の波に襲われ、毎日離婚を意識して、あらゆる気力を失いかけていた。

それが今、こんなに前進した。こんなに良くなった。
この今に、心から「ありがとう!!!」と思った。

結果、1回目の人工授精はうまくいかなった。

でも、私はこの初診の日を、はじめて人工授精をしたあの喜びを忘れることはないだろう。



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