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『最高殊勲夫人』増村保造~人々の口々から発せられる台詞の洪水とテンポの良さ~

写真引用©KADOKAWA1959

『若尾文子映画祭』より、4Kレストア版で劇場鑑賞。やはり増村保造演出は、面白い。もの凄い勢いで展開される台詞のリズム。主要な登場人物だけではなく、オフィスガールたち端役の台詞など、次から次へと淀みなくいろんな人の口々から台詞が飛び出して来る。そしてロカビリー音楽の喧噪の中で、離れた位置にいる二人の聞こえづらい愛の告白の叫び、さらにフラれた男の熱唱で盛り上げていく。結婚披露宴で始まり、最後も同じ披露宴で終わる。増村演出の特徴であるグルーヴ感に満ちた台詞の音楽性とテンポの良さが、『青空娘』(1957)や『曽根崎心中』(1978)同様に、このロマンチック・コメディでも発揮されている。

結婚をめぐる男と女の恋の鞘当て。恋愛コメディだ。タイトルからして笑える。週刊明星に連載中だった源氏鶏太の同名小説が原作であり、「最高殊勲選手」ならぬ「最高殊勲夫人」とは、世界を自分の意のままに操る最上位に君臨する夫人のことである。女のしたたかさと強さの前で、男たちはコソコソしながら、精一杯の反抗として浮気を企むが、それもうまくいかずオロオロするしかない。

映画は結婚披露宴の場面から始まる。新郎は三原二郎(北原義郎)、新婦は野々宮梨子(近藤美恵子)。二人は、三原一郎(船越英二)・野々宮桃子(丹阿弥谷津子)に続いて同じ家の同じ兄妹同士の結婚なのだ。三原商事の営業部長と秘書の恋愛結婚が二度繰り返されたのだ。社長の妻となった桃子(丹阿弥谷津子)は、野々宮家の三女・杏子(若尾文子)を三原家の三男・三郎(川口浩)と結婚させて、トリプルプレーを完成させようと企む。社長である夫・船越英二は、すでに尻の下に敷いており、丹阿弥谷津子の思いのままである。そんな姉の思惑に反抗しようと、若尾文子と川口浩はお互いが結婚しないように手を組むのだったが、次第に互いに惹かれ合っていくというお話。かくしてトリプルプレーは完成し、長女・桃子(丹阿弥谷津子)が「最高殊勲夫人」となるのだが、三女の杏子(若尾文子)は秘かに世代交代を狙っている・・・。

川口浩と結婚しないために若尾文子は、三原商事の社長秘書となり、結婚相手を探す。そして三原商事の男性社員から次々とアプローチされる。さらに川口浩の友人でテレビプロデューサー、大島商事の子息の武久(柳沢真一)も参戦。川口浩は自分が勤める大島商事の社長令嬢の富士子(金田一敦子)と結婚予定だったが、お互いの情報交換をしていくうちに、若尾文子に惹かれていく。若尾文子の父親の宮口精二は、大会社の息子ではなく、気軽に話が出来る庶民的な相手を望んでいたのだが…。

会社での女性の地位がまだ「結婚相手を選ぶための腰かけ」と考えられており、オフィスガールたちも目の色を変えて、出世しそうな優秀な男性社員に競い合ってアプローチする様子が描かれる。歴然とした男性優位社会であり、男女格差がまかり通っている時代だ。社長は妻に内緒でクラブの女と浮気をしようと企み、社長室でイチャつき、秘書は見て見ぬふりをする。そんな時代の会社とサラリーマン、オフィスガールたちが描かれる。金持ちの男と結婚することが、庶民の生活から抜け出すための成功の道であり、そんな価値観が前提となっている。しかし、そんな男性優位社会でも、裏では女性がしっかり手綱を握っているというコメディだ。多くの登場人物が次々と出てきても、飽きずにテンポ良く楽しく観ることが出来る増村保造演出が冴え渡っている。


1959年製作/95分/日本
原題または英題:The Most Valuable Madam

監督:増村保造
脚色:白坂依志夫
原作:源氏鶏太
企画:藤井浩明
製作:武田一義
撮影:村井博
美術:下河原友雄
音楽:塚原晢夫
録音:渡辺利一
照明:米山勇
キャスト:若尾文子、川口浩、船越英二、丹阿弥谷津子、宮口精二、柳沢真一、東山千栄子、北原義郎、近藤美恵子、渡辺久雄、井上信彦、村上文二、八潮悠子、滝花久子、亀山精博


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