犬も喰わないんだから、さっさと終わらせてしまいなさい。
先日職場でのひとコマ。
他部署の男性社員が4月に夫婦喧嘩をしたまま9月現在も奥様と冷戦状態、会話もなしとのこと。
事務所内で先輩たちがどういう経緯でそうなったのか聞くと 本当にびっくりするくらい些細な言い争いが発端だったみたいで、家ではお子さん2人を介して連絡事項などを伝達しあっているそう。
いやこれ、めっちゃ経験あるわ!!!!!(子供サイドで)
子供のころ、父と母が喧嘩をする度に冷戦状態が続いていたので、しょっちゅう私と弟(おもに私が使われた)が伝書鳩役をさせられていた。
母「パパにいついつ授業参観があるって教えてあげて」
父「来週のこの日は職場の人と出かけるから夕飯要らないってママに言っといて」
みたいな感じで 夕飯の食卓を挟みながら私を介してお互いの伝えたいことを伝え合うシステム、今振り返ってみても意味がわからない。
夕飯を食べながら父と母のふたりに今日学校であった楽しかったことを伝えようにも、お互いに会話が無いから全然盛り上がらない。会話が楽しくない。
以前 その時のことを母が笑い話のテンションで「パパと喧嘩したとき半年ぐらい口利かなかったからね」と言っていたのだけれど、当時しんどかった子供の立場から言わせてもらうと全然笑えない。むしろ何わろとんねん、とちゃぶ台ひっくり返す勢い。
一度食事中にも関わらず父と母の言い争いがあまりにも酷くて、「いい加減にしてよ!ご飯が美味しくなくなる!」とキレて自室に戻ったことがあった。
普通なら(そもそも子供の前で喧嘩なんてするなよと思うけど)子供にそこまで言わせてしまったことを反省して「ごめんね」の一言もあると思うのだが、今度は私に怒りの矛先が向いたのか2階の子供部屋まで駆け上がってきた母に「ママが悪いって言うの!?なんであんたにそんな口の利き方されなきゃいけないの!?」と逆ギレされたことを 今でも鮮明に覚えてる。
そうか、お母さんヒス構文ってこの時代からあったんだなぁ。
そんなこんなで変な角度から昔を懐かしんでいると 言うに事欠いてその男性社員が「嫁が冷戦を続けるから家の空気が悪い、居心地が悪いから帰るのも嫌になる」なんてのたまうもんだから、ついお子さんの代弁者よろしく「じゃあ子供さんたちはもっと居心地悪いですね」とニコニコしながらつい不意打ちのパンチをお見舞いしてしまった。
「え?」とびっくりした表情の彼へ続けざまに「親の喧嘩に巻き込まれてる子供さんが気の毒なんで、さっさと喧嘩終わらせた方がいいですよ?」とトドメの一発。
普段“世を忍ぶ仮の姿”としてニコニコふわ〜っとしたほのぼのキャラを装っている人間から 唐突に辛辣な言葉を投げかけられて、さぞ驚いたのかキョトン顔からバツ悪そうな苦笑いに変化を遂げた彼は「うーん、とりあえず善処します」と言い残して そそくさと事務所から退散していった。
他人の夫婦喧嘩になんて口を出すほうが野暮だと分かりつつも、お子さんたちがあの日の自分と重なって 思わず口を挟んでしまった。犬も喰わないものをやすやすと拾ってしまうなんて やってもうたーと反省はしたけど、後悔はしていない。
早く仲直りして子供たちにとっても居心地のいい我が家をカムバックさせてください、といち後輩として願うばかり。
***
少し前に父について触れた記事があるのだけれど、ある日突然父を自死で亡くしてから 私の中で「当たり前に明日も一緒に居られる保証は無いんだ」ということを嫌というほどに思い知った。
「いってらっしゃい」「いってきます」
「おかえり」「ただいま」
この言葉のキャッチボールを当たり前にできることがどれだけ尊くて、どれだけ幸せなことなのか 人は失うまで気づかないし気づけない。
あの日「いってきます」は伝えられたのに、「ただいま」は言えなかった。
「いってらっしゃい」は言ってくれたのに、「おかえり」はもう聞くことも叶わない。
そういう経験があったから 夫と結婚するときに「もしも喧嘩をしてどれだけお互いに腹が立っても、眠るまでには仲直りして翌朝には持ち越さないようにしよう」と決めた。
たとえお互いにムッとしながら「おやすみ」を言い合ったとしても、「おはよう」はちゃんと通常運転で言うこと。いってらっしゃい」は笑顔で伝えること。
文章に起こすとわざわざ決めることでもないような些細なことではあるけれど、あえて決めることで意識的にも気を付けることができる。おもに私が発端なことが多いので、戒め戒め。
おかげさまで結婚してから今に至るまで 大きな喧嘩もなく、小さい喧嘩の後もおやすみ前にはお互いに笑顔で一日を終えることができている。
だって嫌じゃない、お互いにムッとしたまま一生会えなくなるなんて。
どれだけ大切に大切にしていても“その時”は突然やってきて、残された側にたくさんの後悔を置いていくんだから排除できる後悔の芽は最初から摘んでおくにかぎるのだ。
我が家の愛犬ときたら大好きな野菜や歯みがき用の噛み噛みガム以外の食べ物にとんと興味がない子、1日2回のごはんも食べさせるのに一苦労している。
そんな犬が絶対に食べない(むしろ鼻すら寄せない)であろう“夫婦喧嘩”なんて、サクッと切り上げて明後日の方向に放り投げてしまおう。
