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【弊TRPG次元】第1部・シナリオ4「ザ・マン・フー・メイド・ア・ポルターガイスト」 #1


これはクバラさんのTRPG次元における物語です。公式やおまえたちの次元とかとは一切関係ありません。

非常に注意:当テキストはカップリング重点脳のやつが書いています。ユルセネーゼ!とかゆうやつは、そのまま苦しんでください。

必要な前提知識:記事ヘッダーの二人が主役

ニンジャ名鑑

◆殺◆
【ブルーハンド】
カチグミ専用ヒキャク「貴方の伝書鳩」のアルバイト女学生モトコにニンジャソウルが憑依。青いカラテを両手に纏うテブクロ・ジツの使い手だが、それ以上でも以下でもない。ワザマエも性格もブルーでパッとしないニンジャ。
◆伐◆


元となったシナリオ



【シーン1】

ネオサイタマの空は今日も鉛色で、午前から重金属酸性雨が振り続けていた。

無機質な色の空から絶え間なく落ちる雨粒は、無数のビルと電線と広告塔を濡らし、ネオン看板の光を路面いっぱいに引き延ばしていた。高速道路ではタイヤが黒い水煙を巻き上げ、遥か遠くでは巨大モニタが「健康」「市民のアンシンです」「豊かな生活」と広告文句を明滅させている。その直下ではビニール傘のサラリマン、PVCレインコートの学生、朝まで飲んでいた連中、ヒキャク。誰もが互いを気に留めることなく濁流めいて歩道を行き交っていた。

ツチノコ・ストリートに軒を連ねる雑居ビルの壁面には、「実際安い」「フロッピーあります」「賞金が出る」の色褪せた看板。汚染排気と酸性雨が路地裏に灰色のもやを作っている。排水溝は既に容量を超え、虹色の油膜を浮かべた雨水を道路へ逆流させていた。ゴミ集積所ではずぶ濡れのバイオカラスがスシ残飯を啄む。その雑踏を見下ろすように、一棟の古びた雑居ビルが建っていた。

外壁には重金属酸性雨による黒い筋が幾重にも刻まれ、窓ガラスには朝の薄暗い空と無数のネオン文字が歪んで映り込んでいる。かつてこの一角を仕切っていたヤクザクランの威光を示す看板は既に撤去され、入口にもそれとわかる表札はない。だが、その十三階だけは未だ一般人が近寄ることを本能的にためらう、剣呑なアトモスフィアを漂わせていた。

ビル十三階に位置するブラッドカタナ・ヤクザクランの元事務所は今や六人のソウカイヤニンジャの所有物であり……応接テーブルを囲む三人の少年少女もまた、無慈悲なるソウカイヤの一員であり、ニンジャであった。

事前調査データの束をキツネビに渡すなり、マインドシーカーはぼそりと付け足した。「ぼくは行かないよ」「いいって。どっかでテキトーに楽してりゃ」「分前は?」「報酬は二人分出る。一人分はお前にやっから、残った分はオレ達で山分けな」「また勝手に……」呆れ口調で割り込んだブルーハンドはヤクザガラステーブルにイナリ・スシのタッパーを置いた。

ソウカイヤクザにとって、自分の他に適任がいると判断した仕事をまた下位のヤクザに斡旋する事は当たり前の行いだ。だが火組の二人には使い走りのヤクザもクローンヤクザもいない。マインドシーカーに助力を求めたのはそういった適材適所の判断もあったが、彼ら三人はついこの前、与えられた仕事でやらかしたのだ。

アーチ級ニンジャソウルの持ち主、ヤモト・コキの捕獲命令を受けた三人のティーンエイジャーニンジャはミッションに挑んだものの、目標を取り逃し結果としては失敗。重要データの持ち帰りで何とかケジメを免れ、一人分の報酬を三人で山分けする形で幕を下ろした。

前線担当だったブルーハンド達は後方支援のマインドシーカーを自分達の判断に巻き込んで連帯責任となったことに負い目を感じており、今回のミッションの情報収集を個人的に斡旋……共有……したのであった。スシはその報酬だ。

ネオサイタマの市販イナリ・スシは巾着型油揚げの中にコメを詰め込んだ四角いものが一般的だ。三角形のイナリはスライスしたトーフを揚げてからカットしてスシにしたものであり、キツネの耳を象ってよりシンボリックな供物要素が高められる。ボーナスが入った時、モトコ(ブルーハンドのモータルネームだ)はこれをたまに作る。相棒の好物だからだ。実際、取引相手に渡す為のスシだと言うのに、キツネビは好物を前にして落ち着かない様子でいる。

「いいよ、皆で食べよう。ぼく一人には多いし」マインドシーカーは自分の前に置かれたタッパーをテーブル中央に押し出してシェアの意を示し、イナリ・スシをひとつつまんで咀嚼した。「甘いね。オハギみたい」「うん……うん?」頷きかけて、ブルーハンドは薬物マニアの顔を二度見した。マインドシーカーはひとつのスシを二口かけて食べた。「何でもない、糖分はニューロンに素早く届くから好きだよ」

キツネビは資料を捲り、ニンジャ動体視力で中身を確かめる。幽霊屋敷の噂話。IRCを飛び交う真偽不明の心霊体験談。カネモチ・ディストリクト郊外のページは読み飛ばした。彼の相棒の方が土地勘があり、詳しい。タッパーに手が伸び、既に三個目のスシを取ろうとしていた。「……燃やさないでよね、建物」ブルーハンドはキツネビが手を伸ばしていたイナリを横取りした。「ンだよ」キツネビは軽く舌打ちして、資料をテーブルに放り出した。開かれたページには「郊外でのヤクザ活動及び建物への破壊活動禁止」と書かれていた。

【シーン2】

『テメエら、使い走りも雇えねえくらい金欠らしいじゃねえか。今日は俺様がいい小遣い稼ぎの仕事を持ってきてやったぜ……』今朝方IRCメッセージを受け取った二人のニューロンは、威圧的なリーゼントヤクザの姿を自動再生した。ソニックブーム。ソウカイヤのスカウト部門所属ニンジャであり、二人の直属の上司にあたる。

『なに、身構える必要はねえ。1日で終わるくだらねえビジネスさ。ヤクザには付き合いってモンがあるんだ』……ブルーハンドはIRCメッセージログを閉じた。説明可能な心霊現象の原因を突き止め、二度と発生しないようにすることが今回の二人に与えられた(いささか理不尽な)ミッションだ。

「ユーレイだったらいいなって、思ってる……」「ア?ナンデ?」上司ソニックブームは幽霊など全く信じていない。キツネビも同じく幽霊を信じておらず、さっさと諸悪の根源をぶっとばしたがっている。ブルーハンドもまた幽霊を信じていないが、彼女は諸悪の根源が人間ではなく幽霊等であることを望んでいた。「だって……ユーレイだったら、殺さなくて済むから」

カチコミ、脅迫、取立、殺人、殺ニンジャ、超常現象インシデント対応……上から下へと厄介事のフォールダウンめいて流される理不尽なミッションは、ソウカイヤにとってはチャメシ・インシデントだ。「居る訳ねェだろ、ユーレイなんて」家紋タクシーの後部座席でキツネビは欠伸をした。

ワイパーが家紋タクシーのフロントガラスを往復するたび、水滴は外へ押し出されて、ネオン看板の色彩が複雑に混じり合う。ニンジャ二人を後ろへ乗せてなお、モータルのタクシー運転手は奥ゆかしく無言。ソウカイヤ専属の運転手である。

キツネビは運転席と助手席の間から身を乗り出した。「な、カメジ=サンもそう思うだろ?」「そうですねぇ」ドライバーは穏やかに当たり障りのない返事をした。専属とはいえ、ヤクザのビジネス詳細には踏み込まない。奥ゆかしく仕事熱心、悪く言えば事勿れ主義の、典型的日本人男性だ。

ブルーハンドは端末に表示された資料を指で送った。屋敷の怪談はIRCを中心に十年以上も流布している。古いログには、誰もいない部屋から聞こえる足音、勝手に動く家具、夜中に窓辺へ立つ人影。もっとも、その手の話を知る世代は既に減っていた。今では何も知らない若者が偶然古いログを掘り当て、肝試しに訪れることもあるという。

そのため不動産屋は庭へ非道合法トラップを増設していた。トリイ・ギロチン。侵入者自動認識型重火器。竹林に偽装したタケヤリ発射装置。おかげで家財の略奪被害はほとんど無いらしい。「アホくさ。トコロザワ・ピラーのセキュリティみたいなのを、庭に?」

資料を覗き見していたキツネビは車窓へ頬杖をついた。極彩色のネオンビル街が後方へ流れてゆく。タクシーは雑然とした市街地を抜け、閑静なカネモチ・ディストリクト方面へ。「昔さ。似たようなことやった連中いたぜ」「似た……?除霊?」「違ェよ。コソ泥」

「ハッカー気取りの奴がIRCであの家のログ見つけてきてさ。カネモチの屋敷なら何か残ってんじゃねえかって。何人か集めて、ハック&スラッシュだっつって」キツネビは何でもない話をするように答えた。窓を流れるネオンが、その横顔を極彩色に染めては消した。「知り合い?」返事はなかった。二人の会話はそこで終わった。

【シーン3】

家紋タクシーはネオサイタマ郊外の閑静な住宅地で停車した。

古い庭付きの一軒家は不気味なアトモスフィアを漂わせている。にわかに風が強くなり、重金属酸性雨が降り始める。空には稲妻が走り、不吉な警告を発しているかのようだ。今回ソニックブームから二人に与えられた任務は、この幽霊屋敷の除霊である……

屋敷の敷地は、ニンジャとて足場無しには容易に乗り越えられぬ高さのブロック塀でぐるりと囲われていた。道路側の壁面は無数の呪文マントラ殴り書きや不吉なオフダで汚れ、長年放置された廃墟めいたアトモスフィアを醸している。

だが塀の内側に落書きはほとんど無く、屋敷の外壁も奇妙なほど荒らされていない。IRCで幽霊屋敷の悪評が広まって久しく、度胸試しを好むヨタモノやストリートギャングでさえ、わざわざ塀を越えて中へ入ろうとはしないのだ。

ブルーハンドが制止する隙もなく、キツネビは我が家のように堂々と正門の鍵を開けて庭に足を踏み入れる。庭には木がまばらに立ち、雑草が生い茂っている。二人は膝から腰の高さまである雑草をかき分けながら進んだ。

庭の片隅には草に埋もれ赤錆に覆われた旧式セダン。傍らには朽ちた犬小屋の残骸。割れた車窓の暗がり、あるいは犬小屋の奥から、何かがこちらを窺っているような気配がほんの僅かにあった。ブルーハンドがニンジャ第六感でそちらへ気を向けた時には、雨が錆びた車体を叩く音だけが残っていた。

◇◇◇◇

二人は玄関ポーチに辿り着いた。鍵束から一本を選び、錆びた鍵穴に差し込んで扉を押し開ける。悲鳴めいた甲高い軋み音を立て、屋敷は来訪者を迎え入れる……湿った黴と古い木材の臭いが鼻を突いた。

「電気、生きてんのか?」「アッ……勝手に、」制止も聞かずキツネビが壁のスイッチを押した。バツッ……頭上の老朽ボンボリLEDが火花を散らした。一拍遅れて廊下の奥、そのまた奥へ、誘うように明かりが順に灯り、最後の一灯だけが不規則に明滅していた。

ブルーハンドは廊下の先を見遣る。「一番出るのは、あっちの……キッチンの方」「出る?何が?」「エッ……ユーレイ」「まだ言ってんのかよ」「アッ」キツネビは間取り図を奪って広げた。一階で調べるべき場所は二つ。和室、そして問題のダイニングキッチン。「先にどっち──」──物音!二人は同時に顔を上げた。

音は廊下のトイレからだった。「 アッコラー!?」キツネビが扉を蹴り開けた!身構えるブルーハンド!だが中には誰もいない。黄ばんだ便器。錆びた手洗い。壊れかけの換気扇が低く唸っているだけだ。「……何だよ」「だから待ってって……」物音!

二人は同時に隣のバスルームを見た。「ダッテメー!?」キツネビが扉を蹴り開けた!身構えるブルーハンド!だが中には誰もいない。乾いた浴槽。曇った鏡。壁にこびりついた黒い黴。「かかって来やがれや!」怒号は虚しくバスルームに反響した。

「ザッケンナコラー……」キツネビは燻る火めいてぼやき、踵を返してバスルームを後にした。ブルーハンドは何度も辺りを見回しながら慌てて後を追う。「やっぱり、いるって……!」「分かってンだよ!」廊下の壁を殴りつける。「いるのに、いねェんだよ……ナメやがって」

──物音!二人は振り返った。惑わし嘲笑うように音のありかは移動を続けている。しかし廊下には誰もいない。老朽ボンボリLEDが、ジジ、と明滅した。ブルーハンドはしばらく暗い廊下の奥を睨んでいた。「今の、どこから?」「キリねえよ。いちいち追っかけてたら一日じゃ済まねェぞ」

「つまんねぇ鬼ごっこはヤメだ。和室にカチコミかけて、それからキッチンだ」「……逆じゃない?一番出るの、キッチンでしょ」「だから後に取っとくんだよ」「ナンデ?」「じっくり追い詰めてやらァ。ナメやがって」「なにそれ……」

二人は廊下を戻り、西側の襖の前で立ち止まる。キツネビが取手に指をかけた。ブルーハンドも黙って腰を落とし、カラテを構える。ターン!フスマが勢いよく開かれる!

→#2


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