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【弊TRPG次元】第1部・シナリオ4「ザ・マン・フー・メイド・ア・ポルターガイスト」 #2

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これはクバラさんのTRPG次元における物語です。公式やおまえたちの次元とかとは一切関係ありません。
非常に注意:当テキストはカップリング重点脳のやつが書いています。ユルセネーゼ!とかゆうやつは、そのまま苦しんでください。

元となったシナリオ


【シーン4】

ぞっとするほど冷たい廃墟の空気を全身で味わいながら、ブルーハンドはIRCの怪談話を思い出していた。

曰く、毎夜窓際に立つ人影。曰く、奇怪なラップ音。曰く、勝手に動く……「アイエッ!?」彼女は短い悲鳴を上げた。床の間に飾られた古い武者鎧と目が合ったからだ。目が。合った。「アア?」キツネビはブルーハンドの視線の先、武者鎧を睨む。

「ただのボロだろ。ビビりやがッて」ズカズカとキツネビは床の間に歩み寄り、武者鎧を覗き込んだ。それは古い甲冑を着込んだ、骸骨めいて抽象的に人の形を模したマネキンだった。マネキンは膝を開いて正座しており、まるでイクサに備えてザゼンを行っているか、或いはセプクを行わんとしているかのようだ。

問題なく武者鎧を調べたおすキツネビを見て、ブルーハンドはカラテ警戒を行いながら少しずつ近寄る。甲冑はカタナを携えており、鞘には読めない何らかの銘が刻まれている。「……デッドローニン=サンなら、何か分かるかな……」

キツネビは刀剣知識に長けたサイバネ剣客の同僚を思い出しながら、軽くカタナを弄び、すぐ戻した。「あのカタナオタクでも興味が無さそうなボロだぜ」グローブについたホコリとサビを払う。持ち歩くだけで崩壊しそうな程に錆び果てたカタナだった。

「鎧もカタナも何の価値も無さそうだぜ。シケてんな」「その言い方、本当にコソ泥だよ……」ブルーハンドは隣に立ったキツネビを見た。違う。武者鎧だ。骸骨マネキン甲冑が歯を鳴らして笑う。「カッ!カカカッ!」「アイエエエーッ!?」

武者鎧がジョルリめいてバラバラに関節を曲げ、襲いかかってきた!鞘ごとカタナが振り下ろされる!「イヤーッ!?」ブルーハンドは転ぶように緊急回避!物置の重箱を漁っていたキツネビがようやく反応!「テメッコラー!?」カトンを構える!

しかし直後、武者鎧はその場にガチャガチャと崩れ落ち、物言わぬガラクタと成り果てた。「エッ……?」ブルーハンドは慌てて体勢を整え身構え、キツネビは訝しみながら鎧に近寄る。「……」スニーカーの先端で甲冑をつつき、「ケッ」苛立たしげに蹴り飛ばした。ガチャン。

「マジで燃やすぞ、テメー」「だ、ダメ……」今日何度目かもわからぬブルーハンドの制止はようやく間に合った。キツネビは握り潰すようにして手の中の待機カトンを消し、ポケットの中の収穫物をジャラジャラと弄んだ。「気に食わねェ」

「何か見つけた?」未だにビビっているブルーハンドは無理やり笑って聞いた。「シケてんぜ」キツネビは戦利品めいてポケットの中身を畳にぶちまけた。大量のオマモリ・タリスマン。意味不明な呪文マントラのオフダ。そして使用期限を何年も過ぎた精神増強剤ZBRのアンプル。戦利品にしてはシケている。

「こんだけだ。全部スカ」「……これ、全部押し入れに?」ブルーハンドはしゃがみ込み、オフダを一枚摘み上げた。ブッダ、オバケ、悪霊、邪視、悪運、ニンジャ。効能も宗派もバラバラな護符が、節操なく掻き集められている。「何でもいいから、何かに縋ろうとしているような……」「それは今のお前だろ」「ウェー……」ブルーハンドは無理やり笑った。

ZBRアンプルを拾い上げる。ラベルは変色し、消費期限の日付も遠い過去だ。ブルーハンドはそれらをオフダの山へ戻し、かろうじて価値のありそうなタリスマンを幾つか拾った。屋敷の主人は晩年に精神を病み、最後にはダイニングキッチンでセプクしたという……IRCの怪談が少しだけ現実の輪郭を帯びた。

「で?次はキッチンだろ」「ウン……」キツネビは既に収穫物に興味を無くし、入ってきたフスマへ向かっていた。ブルーハンドはもう一度、畳に散らばった護符を見た。そのどれにも、持ち主を守った形跡はなかった。

【シーン5】

キッチン付きリビングダイニングは電子戦争以前の日本で流行した建築様式だ。直射日光を避けるため日の当たらない位置に孤立していた土間や台所から、家族の顔が見える明るい洋式キッチンへ移り変わったのだ。この屋敷もまたその時代に造られた名作であるという。

だが、かつてこの部屋にあったはずの家族の温もりは既に失われていた。板が打たれ閉ざされた窓は光を差さず、明滅するボンボリLEDが広いリビングを照らす。ソファもダイニングテーブルも当時のままだが、座る者はなく、薄く積もった埃だけが年月の経過を伝えていた。

二人は手分けして室内を調べ始めた。壁には色褪せた家族写真。額装された「家族安全」「明るく年」のショドー。棚には大小のダルマや古い旅行土産が並ぶ。長く放置されてはいるが、不思議なほど荒らされていない。確認した資料通りだ。

「家族、いたんだね」「居るだろ。家なんだし」ブルーハンドは写真立ての埃を指で払った。写っているのは壮年の男とその家族。誰もがカメラに向かって笑っている。少なくとも、この写真が撮られた時には、この屋敷はまだ幽霊屋敷ではなかった。

キツネビはダルマを持ち上げて底面を確かめ、舌打ちしてすぐ棚へ戻した。ダルマといえばハンコやカードの隠し場所として鉄板だが、めぼしい物は無い。冷蔵庫も食器棚もとうに空で、腐敗臭すら残っていない。あるのは埃と古い家具、そして先ほどから二人を追い回している、姿の見えぬ何かだけだ。──ガチ。ガチガチ。

二人は同時に振り返った。音はキッチンからだ。先ほどまで閉じていた戸棚の扉が、ひとりでに小刻みに震えている。ガチガチガチガチ……ガタン!戸棚が勢いよく開いた!「ヒッ!」「アァ!?」

次の瞬間!ヒュン!二人の間を銀色の何かが猛スピードで通過した!スリケン?否!背後で硬い衝突音!「イヤーッ!」二人は左右へ跳び退き、即座にカラテを構える。壁に深々と突き刺さっていたのは──ナムアミダブツ!金属製のフォーク!

キッチンで金属音が連鎖した。カチャ……カチャカチャ……!フォーク。ナイフ。オタマ。包丁。無人のキッチンから金属製の食器や調理器具が次々と宙へ浮かび、切先や刃を二人へ向ける!「やっぱり居たァ!」「ようやく来やがったな!」

刃物が飛来!「イヤーッ!」ブルーハンドは身を捻り、フォークを回避!続く包丁を流れるように回避!「イヤーッ!」キツネビも横薙ぎのナイフをスウェーで躱す!食器と調理器具は壁や家具に突き刺さり、あるいは床を跳ね、再び浮上!怪異はもはや脅かすだけではない。明確に二人を攻撃している!

ブルーハンドは角度の甘いフォークを見切った。掴める!青いカラテを纏った手を伸ばす──その瞬間、ニンジャ第六感のビジョンがニューロンを過る。己の手。銀色の刃。腹へ向かう切先。赤い血。「……ヒッ!?」理由を考えるより早く手を引き、頭を下げる!フォークは髪を掠めて背後へ飛んだ。

「ザッケ……」一方キツネビは両手にカトンを滾らせた!浮遊する刃物をまとめて焼き払う構え!「ダメだってば!」「チッ!」即座に消火!代わって飛来する包丁をテックグローブで叩き落とす!王道ストリートブランド『六六六馬力』のテックグローブはイタマエ包丁すら通さぬ高耐久力だ!

カトンの気配に気を取られたブルーハンドは続くナイフへの反応が遅れる!ギリギリで躱し、「ンアーッ!?」ダイニングテーブルの下へ滑り込んだ。ダメージは髪が数本と血の出ない掠り傷で済んだ。「……?」その視線が床の一点で止まる。フローリングに残された、幾筋もの深い引っ掻き傷。経年劣化ではない。誰かが爪を立て、必死に何かを書き残そうとした痕跡だ。

「エ……」ブルーハンドはニンジャ視力を凝らした。傷の周囲には拭き取られた古い血痕が黒ずんで残っている。一本ずつ傷を辿る。文字だ。震える指で刻まれた、たった四文字のダイイングメッセージ。──「ニンジャ」。

「イヤーッ!」ブルーハンドが息を呑む音は相棒のカラテシャウトに埋もれて消えた。キツネビは180度全方向から殺到した刃物を旋回蹴りでまとめて撃墜!「アイエッ!?」フォーク、ナイフ、包丁がテーブルの上下へ不規則に散乱した。「ア?居たのかよ」呑気ですらある顔がテーブル下を覗き込んだ。

それきり金属音は止んだ。アウト・オブ・アモーめいて床に散乱した調理器具は、もはやピクリとも動かない。「傷付いちまった。とっておきなのによ」キツネビは切れたジャケットの袖を摘み、忌々しげに顔をしかめる。「ウェー……」ブルーハンドはのそのそとテーブル下から這い出した。

「……ニンジャ」ブルーハンドは床の文字を反芻した。幽霊屋敷。発狂してセプクした主人。そして、血と共に残されたメッセージ……彼女はもう一度、動かなくなった刃物類を見た。何者かに嘲笑われたかのような違和感が、静かに背筋を撫でて消えた。

【シーン6】

「マジでふざけんなよ!」キツネビの怒声が廊下に響いた。飛び交う刃物を退けた二人はダイニングキッチンを一通り調べたが、めぼしい収穫は床に刻まれた「ニンジャ」の四文字だけ。残る一階の部屋もあらかた漁り終え、二人は玄関前のエントランスまで戻ってきていた。

「どうせジツかなんかで邪魔してきやがるニンジャだろ、絶対! コソコソ隠れて、くだらねェ真似ばっかしやがって!」姿を見せぬ敵を怒鳴りつけるようにキツネビは吐き捨てた。「……ニンジャ」ブルーハンドは先ほど見つけたダイイングメッセージを思い出す。

「ニンジャなら、まあ……モータルより、いいかな……」「だろ!? だから言ったろ、ユーレイなんか居ねェって!」「どっちでもいい」モータルでなければ、血肉の通った人間でなければ別にどっちでもいい。どちらにせよ次に調べる場所は同じだった。

二人は二階へ続く階段を上り始めた。足を乗せるたび、古びた木製階段が大袈裟な悲鳴を上げる。緊張の糸を張り巡らさせたままのブルーハンドは、自然と前を行く相棒との距離を詰めた。(私今、体温何度あるのかな……)おそらく低い。

「掴むなよ」キツネビは振り向かず言った。「だってェ……勝手に行くじゃん」ブルーハンドは厚手のテックコートの裾を掴んだまま返した。「行かなきゃ終わんねェぞ」「そうじゃなくて……」裾は離さない。それ以上は何も言わず、階段を上り続けた。

二階の廊下は一階より広く、壁際には背の高い本棚や飾り棚が並んでいた。資料によれば、ここには寝室や書斎など、かつての住人が私的に使っていた部屋が集中しているようだ。ボンボリLEDは辛うじて生きており、薄暗い廊下を病的な白色点滅光で照らしていた。

物悲しい風の音が囁き声を立てながら吹き抜ける。西側の窓ガラスが大きく割れ、そこから冷たい外気が吹き込んでいるのだ。長年酸性雨に晒されて変色したカーテンが、風を孕んでゆっくりと持ち上がり、亡霊めいて揺れた。ブルーハンドは一瞬身を固くした。だが、それだけだった。

二人は廊下を進む。物音はしない。家具も動かない。武者鎧も襲ってこない。フォークも飛んでこない。相変わらず薄気味悪い廃屋には違いないが、一階で執拗に二人を追い回していた怪異だけが、二階へ上がった途端にぴたりと止んでいた。

割れた窓の前でキツネビが足を止め、ブルーハンドがぶつかりかけた。窓枠には泥がこびりつき、ガラス片の幾つかが廊下側へ落ちている。荒れ放題の庭から一本の木が二階近くまで枝を伸ばしていた。枝には不自然な擦り傷、幹にも靴を掛けたような傷がある。「誰か登ってきたのかな」「だろうな」少なくとも、この痕跡を残したのはユーレイではない。

二人は探索を続け、部屋のドアをキツネビが躊躇いなく開ける。「……ゲッ」そのまま一歩踏み込もうとした足が止まった。かつては夫婦の寝室だったらしい。だがベッドやタンスは壁際へ乱雑に押しやられ、部屋の中央だけが異様に広く空けられている。

その床一面に、真っ赤な何かで巨大な図形が描かれていた。血か?キツネビは反射的に半歩退き、すぐに誤魔化すように眉をしかめた。「何だよこれ」「逆さトリイだよ」「何だそれ」「エート……『カナガワ』の……」「知らねえ」「だよね……」

ブルーハンドはしゃがみ込み、床の図形を改めて見る。トリイを上下逆さに描いた、アンタイブディズムの邪悪なシンボルだ。反ブッダ思想を掲げるブラックメタルバンド『カナガワ』と、その熱狂的フォロワーが好んで用いる。「ペンキ……かな」指で触れる気にはならなかった。血でない保証もない。

壁には古いカケジクに混じって、場違いなほど大切そうに額装された子供のクレヨン画が何枚も残されている。その一枚には、拙い字で「トコダ・ユタンポ」。額の隅には「可愛い姪っ子の作品」と書き添えられていた。かつてこの部屋にあった生活の名残は、それくらいだった。

「……もしかして」ブルーハンドは逆さトリイの前から、割れた窓の方角を振り返った。誰かが外から侵入した。木に傷をつけるような格好で。そして、アンタイブディズムの魔方陣。だとしたら……誰かいるとしたら……隣の部屋には、「待って!」もう遅い!キツネビは既にドアノブを回していた。

「「アイエエエ!!」」

(シーン7につづく)

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