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キャリア|AIツールが進んでも残る仕事——データを現場とつなぐ力

前回、ケミストのままデータのまとめ方に重心が移った、という話を書きました。あの延長で、いま自分のキャリアの次の目標として置いていることを整理します。

結論から言うと、渡された範囲で加工するだけでは足りず、前工程ごと現場と合意に載せ、案件として通すことです。すでにピンポイントではやってきました。足りないのは、まったく別のスキルというより、その射程を広げることだと思っています。生成AIや分析ツールが進化しても、小手先の導入だけでは現場は変わりにくい。だからこそ、ここを意図的に伸ばすのが大事だと考えています。

ここまで書いてきたことと、同じ場所を指している

ここ数本で書いてきた「耐えないデータを見抜く」「立て直す」「意味のある変数にする」「実行と普及は違う」は、ばらばらに見えて一本につながります。奥にあるのは、問いと数字が噛み合っていない状態です。つながないと横断できないし、つなぐ定義が揺れると、つないだあとの数字が割れます。つまり、すでに書いてきた話は、データをつなぐ仕事の入口でもあります。

AIツールが進化しても、ネックは残りやすい

化学側から「定義が曖昧だと数字が割れる」と説明すること自体は、いまもある程度できます。現場で困るのは、説明しても軽く扱われることです。手元のExcelやバラバラのファイルのままで進めたい、ツール側に合わせて直すコストを後回しにしたい——その空気のほうが強いことがあります。

調査や外の報告を見ても、同じところで詰まっています。アルゴリズムやエージェントの話は前に出るのに、定着で詰まるのはデータ品質や定義、現場の進め方、という報告が多い。だから「ツールが賢くなるほど、こっちは不要になる」とは思えません。むしろ、AIツールが進化しても、小手先の処方だけでは変わりきらない、という前提で次を取った方がよい、と考えています。

参考までに、BCG は AI から得られる価値のうち人・プロセス側が大部分を占める、という整理をしています(AI Transformation Is a Workforce Transformation)。Anthropic も、エージェントに生データを渡すだけでは指標の定義が揺れやすい、と書いています(self-service data analytics with Claude)。数字の結論を借りるというより、「ツールの前に、人とプロセスがいる」という向きの確認です。

基盤全体の主担当になる、という話ではありません。実装はエンジニアやIT寄りコンサルの専門があるし、提言だけならコンサルの専門がある。そこに今から全振りするのも、自分の軸とは違います。化学に携わりたい、ケミストの感覚で現場の立場から会話したい——そこが土台です。そのうえで、この先のAI時代でも、化学の現場で活躍していきたい、という向きです。

だから仕事の中心は、材料・実験の文脈が通る置き方と定義を設計し、現場と合意することだと思っています。それは変わりません。足りないのは、合意の場で具体になるための試作と、それを進め方として通す力です。渡されたきれいな範囲での加工は、すでにある程度できる。次に問われているのは、ファイルや形式が揃っていないままのお客さんデータでも、使う道具に載る形まで一度まとめきれるか。仮の小さな仕組みでもよいので、「こう揃えるとツールが使える/このままだと使えない」を見せ、前工程を軽く扱わせない会話に持ち込めているか。説明だけでは動かない場で、化学側の言葉のままそこまで持っていけるかが、いちばんの差だと感じます。

この流れでの次の目標

次に伸ばすのは、肩書きを変えることではありません。現場の感覚を保ちつつ、説得力の床を厚くすること。散らかった研究データをどう束ねてツール向きにするかの型を増やすこと。いろいろなファイルや形式でも、プロトタイプとして一度まとめきって見せること。そのうえで、「こうつなぐと条件が二重に数えられる」「収率の分母を変えると答えが変わる」といった短いデモで、壊れ方を練習しておくこと。このあたりです。SQL などの技術は、実装職になるためというより、会話と優先度を動かすための床、という位置づけです。

独習のチェックリストとして消化するより、調べて、擬似データで試し、記事に残す形で進めようと思っています。すでにやってきた「見抜く・立て直す・説明する」の延長に、揃えて載せて、前工程ごと通すを足す、という位置づけです。

キャリアとして残したいのは、化学を離れて別職種になることではありません。化学の土台のうえに、いまあるデータをツール向きに寄せる仕事を現場のまま担い、軽く扱われがちな前工程を、進め方の話として合意に載せ、案件として通せるようになること——そこが、ツールが変わっても残りやすい足場だと思っています。これが伸びると、AIツールの話の前に「いまのデータのままだと使えない」を現場の言葉で通せるようになり、提案が概念だけで終わらなくなります。


キャリアや働き方、日々の思考の整理については「キャリアと思考の整理」マガジンにまとめています。

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