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「『冷やしトマト480円(税込)』。(8月31日)」

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夏の野菜で、私が最初に思い浮べるのはトマトだ。この季節、知り合いの家庭菜園では、樹上でしっかりと熟れている。
それらの実りは、完熟の明るい赤の色味から、濃い色調の過熟に達しようとするものまで、じつに様々である。

枝からの捥(も)ぎ立てを、よく切れる包丁で
横一文字にスライスすれば、切った端から豊かな水分が溢れ出す。完熟ゆえの柔らかさは、何かの角に軽く当てただけで中身が飛び出してきそう。

夏祭りの露店でお馴染み、《ヨーヨー釣り》の中にお水を満たした水ヨーヨーの危うさである。
こう言っている端から、私の手にトマトの澄んだジュースがこぼれ出してきた。

思わず口を当てると、最初に感じる青っぽい酸味に続いて、口腔内で緩やかに広がる豊かな甘み。旨みは、昆布と源を同じくする《グルタミン酸》によるものだ。

(🇪🇸スペイン "Pan con tomate"(パン・コン・トマテ))
(🇮🇹イタリア "Bruschetta"(ブルスケッタ))

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切っただけのトマトの断面を軽くトーストしたバゲットに擦り付け、少しの塩、にんにく、オリーブオイルを付けただけの前菜。
スペインの"Pan con tomate"(パン・コン・トマテ)、イタリアは"Bruschetta"(ブルスケッタ)。

それら料理と言うには、あまりにシンプルであるにも関わらず、美味しさで万人から支持されている理由は、まさにトマトが旨味の塊であるからに他ならない。

それは、日本の居酒屋メニューにも当たる。
『お酒によく合うスピードメニュー』との謳い文句でお品書きの目立つ位置に配置された480円均一の『冷奴』に始まり、『やみつきキャベツ』と名付けられた、ザク切りと言うよりは、さらにワイルドに手で千切った感のあるキャベツ、そこに旨み増しに塩昆布を和えたもの。
枝豆、そして『冷やしトマト480円(税込)』がある。

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そのどれもが、家庭料理の範疇であるが故に、それらのお手軽メニューを居酒屋でオーダーする度に、スーパーで売られているお値段と比べてしまった覚えが、あなたにもあるかと思う。

冷奴は、そのサイズからしてパックのお豆腐の半丁どころが、そのさらに半分の一丁の1/4であることが分かるし、『やみつきキャベツ』も、素材が葉野菜で不作の時には、ひと球1,000円に驚かされるが、ふつうには、ひと球150円前後で落ち着いている。
その葉っぱの2、3枚と塩昆布が少々。大した原価ではなかろう。

そして、《冷やしトマト》。
スライスされたトマトと、脇に添えられたマヨネーズ。
分量から見て中玉(200g)のトマトが1個である。高リコピンを謳ったものでなければ、お値段は85円(税込み)程度だろう。

これらは家庭でも簡単に作ることができてしまうので、
いくら『お酒によく合うスピードメニュー』と訴えられ、お皿に綺麗に盛り付けられて、美味しそうであっても、

『果たして、こやつの原価はどのくらいであろうか?』
という見方に陥ると、途端に酔いも覚めるというものか。

(居酒屋さんのメニュー。
お酒によく合うスピードメニュー)

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しかし、いつの間に私たちは、飲食店の経営コンサルタントでもあるまいに、原価を探り、コストパフォーマンスを測るようになったのだろう。

私が思うに、"食べたいものを好きなだけ"楽しめる『ブッフェ形式のレストラン』や、
お友だちとお茶しながらお喋りする場にちょうど良い『ホテルのケーキ・バイキング(デザート・ブッフェ)』。

それらのお店で、コストパフォーマンス、
平たく言えば、
『入場料よりもお得に飲み食いして、お店を出し抜こう!』という、姑息なポイントに焦点を当てたテレビのバラエティー番組の影響が強いのではないかと、私は推測している。

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それまでは、お楽しみの対価として払うお金は、自分のお財布の事情として意識していたものの、そこには『飲食店の損益分岐点』や『飲食店の原価率は30%』という言葉を知らなかったし、そもそも意識することもなかった。

それが一変、出されたお料理の美しく盛り付けられた姿や、香りや味わいよりも、数字を追いかけている。
数字とは、それほどに美味しいものなのか?

確かに、お金がなければ、お食事に辿り着けないけれど、食べている間ぐらいは、
お金への執着から離れた方が、精神衛生にも良いし、食べる悦びに浸っていられる。
あなたも、そう思いませんか?

(🇪🇸タパス(前菜)盛り合わせ)

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スーパーで売られている一個85円(税込)のトマトを『冷やしトマト480円(税込)』で出せば、原価率の計算は85/480で、0.17。つまりは約17%と出る。原価30%を遥かに下回り、儲かるメニューである。
お口には美味しいけれど、お財布には美味しくないメニュー。

だが、あなたに忘れないで欲しいことがある。
それは、飲食店で、一度でもバイトなどで働いてみると簡単に分かる。

お客さんであるあなたに、お料理を出すまでに、お店は食べ物をすぐに提供できるように営業時間の遥か手前から仕込みを始め、飲み物のグラスやお皿の準備、店内のお掃除などを一通りこなして、あなたを迎えてくれていることを。

汗を流した分、儲かるように錯覚しやすい自営業では、ついついおざなりにされがちな
人件費。最低賃金の見直しで、全国平均1,180円である。
そこにお店の家賃などの固定費、光熱水費も掛かっている。
それだけではない。一人親方、個人営業の場合、経営が甘いと自分の人件費と混ざりがちだが、利益がZERO(0)ではやれない。

それらの経費が、少しずつお料理やドリンク代に按分(あんぶん)されているのである。

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テレビバラエティーで、もてはやされた『食べ放題のメニュー』や、普通に営業をしているお店で、原価やコスパ(コストパフォーマンス)、そしてタイパ(「タイムパフォーマンス(Time Performance、「時間対効果」)という謳い文句に踊らされた挙げ句、せっかくのお食事に雑念を入れて、純粋に食べる楽しみを遠ざけて欲しくはない。

『あなたが美味しい、これ好き!』
と思うものを楽しめば良いのである。

お金の高安に惑わされることなかれ。

今日も、良い一日になりますように。
(🎹MIYABI)


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Special thank you
皮肉屋ジョー
🎭世の中まぜるな危険 さま

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