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宿題の山|風まかせ文芸部

あの人に振り向いてもらう。

それが、ボクの、宿題だ。

ノートに、書く。攻略の、計画を。

一、まず、話しかける。
二、趣味を調べる。
三、さりげなく、隣の席を確保する。

書いているうちに、楽しくなってきた。

四、好きな音楽を予習する。
五、面白い話を三つ用意する。
六、笑顔の練習。

書き出してみたら、宿題は増える一方だ。

とにかく、実践あるのみ。

今朝、「おはよう」と声をかけた。「おはよう」と返ってきた。
それだけで、心臓は、100m走の後みたいになった。

七、心臓を鍛える。

あの人の趣味は、天体観測だと、わかった。
本屋に走って、星座の本を、買った。

八、オリオン座以外も覚える。

ノートのページは、どんどん、埋まっていく。

気づけば、一冊が、あの人のことで、いっぱいに。

何を好きで、何に笑って、どんなときに、少し困った顔をするか。
全部、書いてある。

——あれ?

これって、何だっけ?

攻略計画のはずだった。振り向いてもらうための、やることリスト。

でも、書いてあるのは、そればかりじゃ、ない。

昨日、あの人が、くしゃみをした。二回。
今日、あの人が消しゴムを落とした。拾ってあげたら、笑ってくれた。

——攻略に、つながらないことまで。
ただ、忘れるのが怖くて書いている。

忘れるはずなど、ないのに。

ボクは気づいた。

宿題の山は、いつのまにか。
好き、を確認する、その、記録に、変わっていた。

やることリストは、まだ、増えるばかり。

早く書きたい「告白」なんて、いつになったら、かけるだろう。

でも、いいのだ。

やってもやっても、終わらない。
この宿題を、ずっと、ずっと、続けたい。





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