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あの頃、洋服を自由に買えていたら。

数日前に、高校時代の話をnoteに書いたせいで、ちょっとした記憶がありありとよみがえってきている。

あの頃、私は洋服に不自由していた。

1999年(平成11年)、札幌の高校2年生だった私は、クラスの女子7人グループの中に間借り・・・して、ボッチでもないけど馴染んでもいない、今思えば、そういう所在なげな時間を過ごしていた。

秋には関西地方への修学旅行を控えていて、その際に着る制服以外の私服を用意する必要があった。

グループで、私以外の子はPHSを持っていたが、私だけまだ持っていなかった。修学旅行前にほしいな、と思った気もするけど、たぶんそこまで交流を深めたいと思っていなかったからだろうか、親に強くねだった記憶はない。

彼女たちはファッションにも興味があって、雑誌「NON-NO」を休み時間に読みながら、

「チャイルドウーマン好きー」
「MILKFEDほしいなー」
「この広末が着てるATすごい可愛い」

と、私にはわからない暗号のような会話をしていた。
どうやらパルコに行けば、それらが買えるようだった。

当時、私はお小遣いをもらっていなくて、必要なときにもらう制度だったのだが、ただでさえ修学旅行の費用で家計に負担をかけていることもあり、なんとなく親に頼みづらい時期だった。何か買う場合はお年玉を切り崩して買おうと思った。

その頃、別のグループの女子から、
「チコ、あんたちゃんとメイクしたら、YUKIに似てない? ダメだよ、そのメガネ。ちゃんと化粧しなよー」
とツッコミを受け、すっかりその気になった私は、その後、YUKIが表紙を飾るNON-NOを買い、なんかそれっぽくなりそう、と思い、取り急ぎ、オレンジのチークを買った。800円。今もまだ持っている。笑

そして、雑誌の中にあったCOCUEコキュというアジアンテイストの服にも惹かれ、これなら母親が持っている服で、似たようなのがないか?と洋服ダンスを物色したりもした。
(COCUEは2015年にブランドをクローズした模様…知らなかった💦)

結局、修学旅行に着ていけそうな服を家の中で見つけられず、クラスメイトたちが週末にパルコへ行くというので、私も連れてってもらった。

驚いた。

みんな、7〜8,000円の服を普通に買っている。
私は勇気を出しても4,000円とかで、
「みんな、すごいお金持ちなんだなぁ」と思った。
バイトしている子は少なかったはず。

LOVE BOATというお店を見て、
「あ、あのギャルっぽい子が使ってる鏡のブランドだ。この店の袋をジャージ入れにしてる子もいるな」と思い出す。
すごいな、みんなパルコに来てるのか……

可愛いなと思った服はいちいち高い。それでも、胸がときめいて楽しかった。例のCOCUEもある。夢がある、パルコ。

散々回った挙句、七分袖の、ショッキングピンクの無地のTシャツを1枚買った。お店は忘れたが、確か3,600円だった。「あんたそれだけ?」保育園からずっと一緒のA子にそう言われたが、満足だった。大型スーパーのオリジナルブランド服とはもうおさらばだ。
私は「パルコ」で服を買えただけで、自分に素敵なプレゼントをした気になった。

修学旅行では、京都、奈良、岡山、広島など行ったが、
私以外の6人で、自由行動の日のコースを知らぬ間に決めてくれていた。
昼食は、「京都の餃子の王将一号店」で食べるということまで決まっていた。

「餃子の王将?へぇ、そんな店があるの。有名なの……?みんな一体どこで知るの……?」

まだインターネットもそこまで普及していなかった時代。
何につけても話題についていけず、流行もわからない。そんな自分のことをダサくて痛々しいと思っていたし、その自己像はまだ持っている。

あの頃、高価な服を着こなしていたクラスメイトたちは、自信があるように見えた。私は「そっち側」にはなれないな、という感覚がずっとあった。

青春時代に自己表現の一手段として「好きな服」を自由に選べていたかどうかは、人格形成に影響するとさえ思う。

この夏、友人と飲みに行く約束をしていた前日に、
「自分らしくてオシャレな服が欲しいな」と思い立ち、ビンテージを扱う古着屋を覗きに行った。

一目ぼれした服が2着あり、1着だけ買えればと思っていた私はなかなか決断できなかったのだが、

「思い切って、どっちもプレゼントしてあげたら?」

そう思い、その贅沢にうっすら罪悪感を感じつつ、2着とも買うことに決めた。
6,900円のブラウスと、1万円のツーピース。
私にとっては勇気の要る買い物だった。

手持ちの現金で足りずカードで支払ったのだが、もう嬉しくて嬉しくて、若い店員さんに、「好きな洋服を我慢せずに自分に買ってあげられるって、めちゃくちゃ幸せなことですね」と話しかけてしまった。

翌日会った友人に、前日に買った服なんだと焼鳥屋で明かすと、
「チコリン、ミステリー小説家って感じするよ」と言ってくれて、ものすごく、嬉しかった。

好きな服を着て、なりたいオーラを、自信を、まとえるだろうか。
40過ぎて、やっと、その理想は自分でつかめるのかもしれないと思い始めた。


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