"加害者"と"被害者"

こちらのnote記事を読んだ。とても大切なことが書かれていると感じた。
いろいろな思いが去来したので、それを書かせてもらいたい。

この記事は、RYOJI氏が『なぜ男は暴力を選ぶのか』というブックレットをもとに、著者沼崎氏の「男性加害/女性加害を無化するスタンス」を批判する文章である。
とくに印象深かった箇所を引用する。

被害者男性の存在も、同性間DVの現実も、女性の被害を相殺しない。
 もちろんトランス女性の存在も、シス女性の被害を相殺しない。
 そんなの当たり前じゃないか。

新旧「なぜ男は暴力を選ぶのか」を読む|RYOJI

本当におっしゃるとおりだ。被害者は個別に存在していて、どんな形であれ尊厳が守られるべき一人の人間なのだ。至極当たり前のことで、疑いようがない。

当たり前のことなのに、残念ながら、コンセンサスが得られているとは思えない。そんなのは世界のほうが間違っていると思う。

本題とは少し離れてしまうが、記事中には"加害者側"とみなされた筆者が、被害支援者からいやがらせを受けてしまう描写が出てくる。
"男性性"を悪と決めつけて排除することはさぞや気持ちがよかっただろう。能動的に選択された加害、いじめによるコミュニティの団結だ。なんと愚かなことか。

ときに、"被害者/支援者"の属性を持つ者による加害行為が発生する。
RYOJI氏の指摘する通り、被害を認めることは別の被害を相殺しない、という点に加え、"加害属性を持つ人の被害"を認めることは、加害者の責任を希薄化しない、という点も言及が必要なのではないか。

すべての人は守られるべきである

すべての人は守られるべきである。この論を転用して、マイノリティの被害を無化する言説というのも、世界中に見られる。
例えば、Black Lives Matterを無化する形で展開される"ALL LIVES MATTER"。女性差別の問題を無化する形で展開される、"男性差別"。国籍による差別の問題を無化する形で展開される、"日本人ファースト"。
これらの言説は、字面的に否定しにくいものだが、被害を無化し加害行為を強化・保存する効果を有しており、社会を後退させる差別言動である。

DARVOの否定

DARVO、という略語がある。Deny, Attack, and Reverse Victim and Offenderの頭文字をとったもので、加害者によって行われがちな反応である。
大したことじゃない。被害を受ける方が悪い、そちらにも瑕疵はあった。加害者といわれるなんて傷ついた、こちらが被害者だ。

DARVOは二次加害にもつながる暴力的な言説である。
これらに対抗するためにも、被害を認めること・それは別の被害を相殺しないこと・加害責任を希薄化しないこと、は意識されるべきと考える。

私が避けたもの

ここまでで、私が答えを出せておらず、避けた論点がある。
それは、加害者の被害者性による免責、である。
他の選択肢をとることができなかった状態で起きた加害や、加害を企図していなかったとしても起きてしまった加害は、免責が検討される。
前回の記事で紹介した、受動態・中動態の行為は、罪刑の決定の文脈においては、情状酌量や過失といった要素で量刑が軽くなりうる。
簡単な言葉でいえば、「加害者の状況をどれだけ慮るべきか」ということについて、私は明確に回答を出せていない。

なお、感情を排していえば、加害者の免責と被害者の救済は全くの無関係なので、究極的には"論点"ではないと考えている。
加害者がどれだけ重い刑罰を受けたとしても、被害者が失ったものは全く帰ってこないということもあるし、加害者が全く刑罰を受けなかったとしても、被害者の受けた侵害が完全に回復されることもある。
加害の責任追及/減免と、被害の認容/救済は、完全に別論点として両立しうる。

"被害者"の加害行為

保護者から虐待を受けた少年が行う非行。宗教信仰と性指向が折り合わず、触法行為に至ってしまう性的マイノリティ。パワハラ被害者による家庭内DV。発達特性のある男性による性的嫌がらせ。愛着障害を起因とする加害行為。
ある程度フェイクは入れているものの、私が見聞きしたものだけでもこれだけ挙げられる。ここに出てこない、私の言及できていない数多の当事者も存在している。

列挙したような被害を目にした際の正しい行動は、専門家を頼ること、である。人類は愚かにも同じ間違いを何度も犯す存在だが、知見をため、様々な問題に対する対処法を増やしてもいる。当事者団体につながる方法も増えてきた。
また、この文章にここまでついてこれた読者なら心配ないとは思うが、先ほどの列挙をもとに、マイノリティ属性と加害行為を直線的に紐づけることは差別である、ということも念のため言及しておく。

終わりに

いまの私は、この記事はここで終わり。
すっきりするような回答も、問題の解決策も特に提示できないので。
ただ念のためもう一度言及しておく。

被害を認めること・それは別の被害を相殺しないこと・加害責任を希薄化しないことは、意識されるべき

もっと賢くなりたくて、もっと優しくなりたいと思っている自分にとって、こういったことを考えるのは向いているんだろうと思う。
ここまで書いてきたが特に絶望はしていないし、きっと世界は良い方向に向かっていく、と思えているので。

最近はまっている曲。

Won't you break the chain with me?

『Dynasty』 Rina Sawayama

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