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AIを5人に役割分担させたら「疑う係」がいなかった。別のAIに検算させると指摘が6件出た

6拠点・スタッフ約70名の会社を経営しています。自分の会社の実務を、AIで実際に直した記録を書いています。

今回は、AIに役割分担をさせた話です。うまくいった部分と、穴が空いていた部分の両方を書きます。

何が起きたか

うちでは、AIを5つの役に分けて使っています。調査・戦略・記録・社内改善・集客の5人です。

新しい拠点を1つ出すかどうか、この体制で試算を作りました。結論は「条件付きで出す」。

1週間後、念のため別のAIを2体立てて、この試算をチェックさせました。

  • 計算と記述の検算:指摘6件

  • 前提の裏取り:7項目中4項目が実勢とズレ

  • 引き直した結果:年間の利益見込みが約4割下がった

一番まずかったのは、指摘の1つです。戦略役が「調査役の分析による」と書いた数字がありました。調査役が保存した資料のどこにも、その分析が無かったのです。

数字そのものは、妥当な範囲でした。でも、出典は宙に浮いていました。チェックを入れるまで、5人の誰もそれに気づいていませんでした。

5人の分け方

分けた理由は、1つの会話に全部を詰めないためです。大きな調査や分析を1つの会話でやると、途中の資料で会話が埋まってしまいます。

そこで重い作業は、それぞれの役に外出しします。各役には、仕事の中身のルールを持たせました。

  • 調査役:確認できないことは「不明」と書く。出典は事実の直後に置く

  • 戦略役:選択肢を3つ以上出す。推奨には「崩れる条件」を必ず添える

  • 記録役:まとめるだけ。自分の判断で内容を足さない

  • 社内改善役:提案はコスト・効果・リスクの3点セットで出す

  • 集客役:数字で語る。推測で埋めない

加えて、ファイルごとに「誰が書き換えてよいか」を表にしました。指示書と進行管理は、私の承認なしには書き換えられません。

この分け方自体は、今も続けています。問題は、分け方の外側にありました。

なぜ見落としたか

見返して分かったのは、5人全員が「作る係」だったことです。

各役のルールは、どれも「自分の出力をきちんとせよ」という中身です。戦略役には「前提を疑え」というルールもありました。ただしそれは、自分の分析の前提です。

記録役には、資料どうしの整合を取る仕事もありました。ただ、中身はリンク切れや用語の揺れを直すことです。書かれた数字の出典までは、たどっていません。

役と役の受け渡しを見るルールは、どこにもありませんでした。戦略役が調査役の分析を引用したとき、それが本当にあるかを確かめる人がいない。

人間の組織なら、会議で誰かが「その資料、どれ?」と聞きます。AIの5人体制には、その一言を言う係がいませんでした。

もう1つあります。同じAIに自分の答えを見直させても、効きが弱いことです。自分で置いた前提は、自分では疑いにくい。見直しを頼むなら、別のAIに頼む必要がありました。

別のAIに何をさせたか

チェックは2体に分けました。見る場所が違うからです。

  • 検算役(内側):計算の誤り、記述の矛盾、引用元が実在するか

  • 調査役(外側):前提の数字が、世の中の実勢と合っているか

見つかったものは、きれいに分かれました。

内側の6件は、計算と引用の誤りです。損益分岐点が楽観側に歪んでいる、という指摘もここで出ました。売上の構成比がそのまま縮む前提で計算していたためです。

外側の4件は、前提のズレです。1人が1日にこなせる件数を、業界の上限の4件で置いていました。標準は2〜3件です。参照していた統計は、10年前の値でした。

ズレは両方向にありました。控えめすぎた前提も2つありました。上下が打ち消し合い、「条件付きで出す」という結論は変わっていません。

ただ、利益の見込みは約4割下げました。投資の回収見込みも、4か月あまりから約7か月に延びました。結論が同じでも、判断に使う数字は大きく変わったわけです。

学び:役割分担とは別に「疑いの分担」を置く

正直に書くと、この検算はこの1回きりでした。3日後に「チェックは仕組みとして回っているか」を確かめたら、常設の仕組みは無かったのです。

そこで、段階を付けたルール案を作りました。

  1. いつも:計算は計算機で検算する。チェックリストで自己点検する

  2. 数字入りの提案:反対役を立てる。重要な事実だけ外部で裏を取る

  3. 大きな投資判断:別のAIに、内側と外側の両方からチェックさせる

ただ、仕組み化はいったん見送りました。今は「チェックして」と私が頼んだときだけ回しています。

他社でも使える形にすると、こうなります。

  • AIを役割で分けるなら、「作る係」とは別に「疑う係」を考える。 作る係のルールは、自分の出力しか守らない

  • 疑う場所は、役と役の受け渡し。 「その数字の出典はどこか」を確かめる

  • 見直しは、作ったAIとは別のAIにさせる

  • 検算は内側と外側に分ける。 計算の誤りと前提のズレは、見つかる場所が違う

役割分担は、作業を分けるための仕組みです。疑うことまでは、分けてくれません。うちの場合は、1回の検算でそれが見えました。

――

AIの間違いを誰が見つけるか、という話はほかにも書いています。

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