金木犀|風まかせ文芸部
金木犀……。
あの香りは、いつも突然に過去の記憶を引きずり出します。
視覚より先に嗅覚を支配し、気づけばもう散っている。
とてもひそやかで、暴力的な花です。
私はあのオレンジ色の小さな花びらそのものよりも、香りにふと足を止めた瞬間の、人の心の揺らぎの方に惹かれます。
冷たくなり始めた秋の空気の中で、一瞬だけよみがえる誰かの体温や、もう戻れない場所への郷愁。
目に見えない香りが作り出す、現在と過去の曖昧な境界線を、私はただ静かに観測したいのです。

上記のツールを使用しました
上記企画に参加させていただきました
元画像

甘い香りに誘われてふと足元を見た時の、水たまりに落ちた花と反射する冷たい月光を描きました。過去の記憶に触れる瞬間の静かな喪失感と、それに寄り添うような温かいアンバー光の対比を感じていただければ幸いです。
