AI時代に消えるITベンダーのビジネスモデル― SESとSIerヒエラルキーは2030年までにどう変わるのか ―
日本のIT業界は、長年にわたり独特の構造で成り立ってきました。
それは「ITベンダー」「SIer」と呼ばれる企業を中心とした多重構造です。
この構造は日本のIT産業を支えてきた一方で、近年急速に変化し始めています。
特にその変化を加速させているのが AIの普及 です。
本記事では、日本のIT業界の構造を整理しながら、AI時代にどのように変化していくのか、そして今後求められるIT人材像について考えてみたいと思います。
日本のIT業界は「ヒエラルキー構造」で成り立っていた
日本のIT業界は長年、次のようなヒエラルキー構造で成り立ってきました。

① 大手ITベンダー・大手SIer
・自社ソフトウェア
・自社クラウド
・ソリューションサービス
を提供しながら、顧客企業のDXやIT戦略の企画を支援します。
近年では外資系コンサル会社と同様に、
・IT戦略
・DX戦略
・システム企画
などの 上流工程のコンサルティング を行うケースが増えています。
② 中堅SIer
中堅ITベンダーやSIerは主に
・システム設計
・システム上流設計
・プロジェクトマネジメント
を担当します。
つまり、大手が描いた構想を システムとして具体化する役割 を担っています。
③ 中小ITベンダー
中小ITベンダーは
・プログラム開発
・テスト
・保守
など、実際の 開発工程 を担当します。
SESというビジネスモデル
この構造の中で、日本独自のビジネスモデルとして広く使われてきたのが
SES(システムエンジニアリングサービス)
です。
SESとは簡単に言えば
エンジニアの時間を提供するビジネス
です。
例えば
・プログラマー
・SE
・テスター
などを客先に常駐させ、稼働時間に応じて料金を受け取る仕組みです。
このモデルの特徴は
収益が安定する
という点です。
そのため多くのIT企業が
・SES
・受託開発
を中心にビジネスを構築してきました。
日本で叫ばれてきた「IT人材不足」
日本では長年
IT人材不足
が叫ばれてきました。
経済産業省も
2030年には最大79万人不足
と予測しています。
しかし、この議論には一つ大きな問題があります。
それは
本当にIT人材が不足しているのか?
という点です。
実際には
「高度な人材が不足している」
のであり、
単なる開発要員はむしろ
供給過多になりつつある
と言われています。
そしてこの状況を大きく変える可能性があるのが
AIです。
AIが変えるソフトウェア開発
現在、AIは急速にソフトウェア開発の現場に入り込んでいます。

例えば
・コード生成
・テスト自動化
・仕様書作成
・設計支援
などです。
特に大きな影響を与えているのが
AIコーディングツール
です。
代表的な例として
・GitHub Copilot
・Cursor
・ChatGPT
・Claude
などがあります。
これらのツールによって
プログラム開発の効率は数倍〜10倍
になると言われています。
つまり、
同じ開発をするのに必要な人数が大幅に減る
可能性があるのです。
マイクロソフトですらAIで効率化している
興味深いことに、この変化は赤字企業だけで起きているわけではありません。
世界最大のIT企業の一つである
Microsoft
ですら、AIによる効率化を進めています。
同社は
・AIによるコード生成
・テスト自動化
・開発効率の改善
を積極的に導入しています。
つまり、
世界トップ企業ですらAIで開発効率を上げている
のです。
これは何を意味するのでしょうか。
それは
ソフトウェア開発の人員構造が大きく変わる
ということです。
日本はアメリカより3〜5年遅れて変化する
IT業界ではよく言われることがあります。
それは
日本はアメリカより3〜5年遅れて変化する
というものです。
つまり、アメリカで起きていることは
ほぼ確実に日本でも起きます。
現在アメリカでは
・AIによる開発効率化
・開発者の再配置
・企業内エンジニアの強化
が進んでいます。
これが日本でも進めば、
SIer中心の構造は大きく変化する
可能性があります。
2030年前にIT業界構造は変わる
AIの普及を考えると、
2030年前にはIT業界構造が大きく変化する
可能性が高いと私は考えています。
その変化とは
次のようなものです。
① SES需要の減少
AIによって
・プログラム開発
・テスト
・ドキュメント作成
が自動化されれば
SESの需要は減少
します。
② 企業内エンジニアの増加
AIを活用できる優秀なエンジニアは
企業内部で働く
ようになります。
つまり
・ユーザー企業
・メーカー
・サービス企業
が直接エンジニアを抱える時代になります。
③ コンサル型人材の増加
これから必要になるのは
単なる開発者ではなく
ビジネスを理解した技術者
です。
つまり
・AI
・IoT
・ロボティクス
・データ
を組み合わせて
企業変革を実現できる人材
です。
IT資格も大きく変わる
このような時代になると、
IT資格の価値も変わります。
これまでのIT資格は主に
・プログラミング
・ネットワーク
・データベース
などの
スキル資格
でした。
しかしAI時代では
スキルはAIが補完します。
つまり重要なのは
実務でDXを推進できる能力
になります。
AI時代に必要なのは実務資格
そこで重要になるのが

AIPA・RAPAが提供する
・AI・IoTコンサルタント
・ロボティクスオートメーションディレクター
・デジタル経営士
などの
実務資格
です。
これらの資格は単なる知識ではなく
・DX実行計画
・AI導入
・IoT活用
・自動化
など
企業変革を実際に推進する能力
を重視しています。
これからのIT人材は二極化する
AI時代のIT人材は
大きく二つに分かれます。
① AIを使う人材
・DX推進
・AI導入
・経営支援
を行う人材
② AIに代替される人材
・単純開発
・単純テスト
・単純設計
を行う人材
この差は今後
非常に大きくなる
でしょう。
AI時代は「IT人材」ではなく「DX人材」
これからの時代は
IT人材
という言葉自体が古くなるかもしれません。
重要なのは
DXを実行できる人材
です。
AI
IoT
ロボティクス
を組み合わせ
企業を変革できる人材です。
まとめ
日本のIT業界は長年
・SIer
・SES
・多重構造
で成り立ってきました。
しかしAIの登場により
この構造は大きく変わろうとしています。
2030年までに
・SESの減少
・企業内エンジニアの増加
・DX人材の需要増
が起きる可能性があります。
その時に必要になるのは
単なるITスキルではなく
企業変革を実行できる実務能力
です。
AI時代のIT人材とは
DXを実行できるプロフェッショナル
なのです。

